ユダヤ人
――――――――1600年10月14日 リスボン 浅井井頼――――――――
「あの、どうしても教会に行かないといけないんですか」
何度目かになる問いかけを長信殿がこぼす。
「何度も言わせないでください。ここはほとんどの人がキリスト教を信じています。それは国王も同じです。そのなかでキリスト教を敬わない者がいれば浮いてしまうでしょう。交渉においてそれは不利です」
「それは分かっていますが・・・興元殿と代表だけでいいのでは」
「いいじゃないですか。南蛮の珍しい絵を見ることができるかもしれませんよ」
「いまは見てきた絵を紙に書いてみたいんです。日ノ本の技法と南蛮の技法、どういった違いがあるか書いてみるのが一番わかりやすいですから」
この人はいつも絵のことばかりだな。この国の国王に会うにはまだ移動が必要らしいし、その道中で絵師に会えるよう掛け合ってみるか。
「しかし別に切支丹に偽装するためでしたらわざわざほかの皆さんと時間をずらす必要はないと思うんですけど」
「教会でしたらいろんな人がいるでしょう。時間が違えば会える人も違うはずです。伝手というのはそういう何気ないところからできるものです」
外務奉行所でもいろんな人に会っておけと出立する時に言われた。そしてその一覧を制作するようにと。おそらくその一覧を他国との外交をするうえで利用するつもりなのだろう。そういうことも考えると本当は安息日とやらに行きたかったのだがな。ま、熱心な切支丹であれば安息日でなくともいるだろう。
「ほら、つきましたよ。教会に入るんですからもう少しまともな顔をしてください」
「はいはい。わかりましたよ」
そういいながら顔を軽くたたく。まあ、長信殿はこの国の言葉を解さないから適当に言い繕えるだろう。最悪、言葉がわからないふりをしていればいいんだ。
「Estoy ofendido.」
最近なんとかして覚えたイスパニアの言葉でそういいながら教会の扉を開く。中には南蛮人が一人いるだけだった。
「一人だけでしたからお任せしますよ。私は適当に絵を探しておきますから」
「えっ、ちょっと」
引き留めようとしたがさっさとどこかに行ってしまった。
「Lo siento, Miamigo. Ruidoso en el tiempo precioso.」
「No, no importa.Pensé que estaba demasiado callado.」
「¿Estás preocupado por algo?」
見たところそこそこ裕福な家の少年だな。
「Eso es correcto.Por cierto, ¿quién eres?Nunca he visto una cara o color de piel.」
「Soy uno de los enviados de Japón.Escucharétus inquietudes si quieres.Cualquiera que vaya a algún lugar pronto podrá hablar con cuidado.」
「Gracias.En realidad, nací en la casa de Converso.」
Converso、たしかユダヤ教からキリスト教に改宗した者を指す言葉だな。
「Como mi padre sabía mucho sobre derecho canónico, también estaba estudiando derecho canónico en la iglesia」
熱心なことだな。日ノ本であればそれより算術を勉強しているだろう。どちらがいいかはわからないが。
「En él, llegué a pensar que su origenpodría estar en el judaísmo.Pero mi padre es un sacerdote católico.No puedo decir eso en absoluto.」
「No era la historia que harías en una iglesia.Pero si crees que sí, debes convertirte al judaísmo.」
「Si haces eso, no puedes vivir aquí.Romperé con mi padre.」
さて、どうするかな。最初は悩みを聞いて解決するなり、何らかの助言をすればいいと思っていたが簡単でないな。
「En resumen, quieres convertir pero no quieres pelear con tu padre.」
「Eso es correcto.」
「Entonces, ¿por qué no vienes a Japón? Te garantizo mi vida en Japón.」
「¿Eh?」
「En Japón, se reconoce la libertad de religión. Si lo desea, invite a personas que tengan problemas similares.」
ユダヤ人と言えば各地に離散した民族だったはず。一部は宮廷ユダヤ人として影響力を持っている。各国と外交を行う上では有力な窓口となるだろう。また、情報収集をするうえで各地にいるユダヤ人の伝手が仕えるのはありがたい。
「Pero」
「Por supuesto, no decimos de inmediato.Querrás hablar con tufamilia.Es posible que desee contarle a su padre sobre el cristianismo correcto.Estaré aquí de nuevo mañana.Por favor avísame en ese momento.」
「Gracias.」
「Hablando de eso, no escuchaste tu nombre.Cual es tu nombre.」
「Me llamo Uriel Acosta.」




