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王直

――――――――――――1540年8月5日 岸岳城――――――――――――

「お初に御意を得まする。江川城主宇久盛定うくもりさだにございます」

「宗熊太郎である。面を上げよ」

「はっ。このたびの後藤征伐が成功したことお喜び申し上げます」

「当主の後藤純明ごとうすみあきらは逃したがな」

宇久盛定が顔をあげる。宇久氏は五島列島の国人で水軍が有名だが盛定はどちらかといえば体の線が細い。聞けばまだ乳児だった時に反乱がおき幼少期を平戸で過ごしたらしい。道理であまり海の男って感じがしないわけだ。

「ところで盛定、今日は何をしに来たのだ。まさか戦勝祝いだけではあるまい」

「はっ、熊太郎様に命じられて倭寇をやめてしばらくして明の倭寇が五島にやってきまして。そのものを捕らえたところ自分は海賊ではない、明の商人であると言い張っており処分に困っているのです」

自称明の商人?まさかとは思うが。

「そのものの名は何という」

「王直と名乗っています」

「ふむ・・・興味がわいた。連れてまいれ」

やっぱり王直だったか。確かこのころに日本に来たと思っていたんだがやっと来たか。


しばらくして最近小姓になった尚久の次男が裕福そうな格好をした中国人と少し貧しい格好をした日本人を一人ずつ連れてきた。たぶん日本人は通訳だろう。

王直は評定の間のちょうど真ん中あたりに座るといきなり中国語で喚きだした。

「释放我。我是明代的商人」

「私を解放しろ。私は明の商人だ、と言っております」

「明は下海通蕃の禁で貿易する相手を制限して日本との交易は禁止されているはずだ。なのに何故明の商人がいる」

たぶん密貿易だろうけど。明との交易は儲かるだろうから密貿易をしたいと前から思っていたから出来るだけ王直は味方につけておきたい。

「为什么有明代商人」

「因为我来找一个新的商业伙伴」

「新しい商売相手を探しに来たと言っております」

「如果你和自己交易,你可以赚钱」

「もし自分と交易したら儲けることができる、と言っています」

「ふうむ」

問題は王直がいつ死ぬかだよな。前世では鉄砲輸入に王直が関わっていたぐらいしか知らないからいつ、どのように死ぬのかが分からないんだよ。たぶん明で死ぬんだろうけどそれがいつになるのか。少なくとも1543年までは生きているはずなんだけど。あまり早く死なれて密貿易をしたとして明に睨まれたらたまったもんじゃない。

「熊太郎様、ここは明との交易を優先するべきだと思います」

誰が賛成したかと思えば御倉奉行の倉野茂通だった。役職柄、銭に関することには敏感になってきたらしい。うん、いいことだ。

「明は下海通蕃の禁で交易を制限しています。つまり明の品は希少価値が高く他のものより高く売ることができます。これを逃す手はありません」

「うむ・・・よし、王直を釈放し交易を行う」

短い間でも儲かる方がいいな。

「我会释放你并决定交易」

「我明白。我应该带什么?」

「なにを持って来たら良いかと言っております」

「明銭と飼料用の甜菜てんさいを輸入したい。こちらからは銅や刀・石鹸を輸出する」

「我想输入明和数量。我会从我身上出口铜和剑」

「我懂了。我会在三个月内拿出来」

「3ヶ月後に持ってくる、と言っています」

「楽しみにしているよ」

飼料用の甜菜は1745年にドイツの化学者が砂糖を分離させることに成功している。前世で甘党だった俺は自分で作ったりしていたので甜菜糖の作り方は分かる。琉球との交易ができるようになればさとうきびの輸入ができるようになるが砂糖のような高く売ることができる商品を作らない手はない。3か月後が楽しみだな。


――――――――1540年10月1日 日野江城 後藤純明――――――――

「晴純殿、このたびはお世話になり申す」

「なあに、自分の城と思ってくつろいで下され」

何が自分の城だ、このタヌキ爺め。どうせ儂を旧領に戻すことができれば杵島郡のほとんどを支配下に置くことができるとでも思っているのだろう。だからそのために確実に支援してくる。宗に領地を奪われて真っ先にここに逃げようと思ったのもそれが理由だ。

「ところで純明殿はまだ子に恵まれておりませんでしたな」

「ええ、残念なことにまだです」

そうでもなければ40を過ぎても当主に留まっておるわけなかろう。それがどうしたというのだ。嫁の世話でもする気か。それとも養子か。

「実は大村純前殿に息子がいるのだが大村は養子にやった次男に継がせようと思っている。そうなるとその息子の立場がの。それで純明殿の養子とするのはどうだろうかと思っているのだが」

養子の方だったか。

「純前殿も自分の息子が将来継ぐことになる家ですから全力で復帰に向けて支援してくれることでしょう。幸いと言ってはなんですが先の戦でうるさい分家は軒並み討ち死したのです。養子入りの障害もない」

それはそうだが・・・できれば儂の跡は儂の息子に継いで欲しかったのだがこの歳では無理であろうな。それなら養子を迎え大村・有馬の後ろ盾を得た方が良い。今後、後藤が有馬の下につくことになるかも知らんが家が続くのであれば仕方ない。自立できそうであれば養子を焚き付ければ良いだけだ。大村を継げるはずだったのが杵島郡半分だけの家を継がないといけないのだから焚き付ければすぐに実家にも逆らうだろう。

まずは後藤家を再興することだ。

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