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決裂

―――――――――1593年2月15日 大坂城 惟宗長康―――――――――

「皆、面をあげよ」

「「「はっ」」」

父上に促されて皆が顔をあげる。これが評定なのか。父上も皆もいつもとは違った表情でこの場に臨んでいる。今年の正月の朝廷への挨拶を俺が無難にこなしたのを見て、発言こそ認められていないが評定に参加することは認められた。ようやく政に少しずつ参加できるようになってきたんだな。いずれは俺が父上や祖父様のようにあそこに座って政の中心となるのか。楽しみだな。


「まずはこの間来た朝鮮の使者だな。外務奉行所」

「はっ。前回我らが朝鮮に求めた和睦の条件は賠償金・済州島の割譲・無制限の交易でした。しかし朝鮮からの回答は賠償金については到底支払える額ではない、交易をしたいのであれば年10隻の歳遣船を認める、済州島の割譲は認めると」

「つまり3つの要求のうち2つは認められないということだな」

「はい。到底受け入れられるものではなかったので受け入れられないのであれば和睦はあり得ないと伝えました」


「はぁ、舐められたものだな。水軍奉行所、朝鮮に上陸して沿岸沿いを奪うことは出来そうか」

不満そうな表情をしながら水軍奉行の貞範に尋ねる。沿岸沿いを奪うことで日ノ本の力を見せつけようということかな。


「何とも言えません。朝鮮が九十九をどう認識しているかによるでしょう。九十九を倭寇の類と見て上陸しても略奪だけで土地を奪うことはないと考えているようであれば十分可能性はあります。しかし九十九を日ノ本からの兵で上陸して土地を奪う機会をうかがっているとみられていれば抵抗は大きく、それなりの損害は覚悟せねばならないかと」

「逆に言えばそれなりの損害を出せば土地を奪うことができるんだな。あとはそれだけの費用を割いて何をえることができるか。頼久」

「はっ」

「朝鮮の価値を知りたい」

「朝鮮は日ノ本に比べて豊かとはいえません。また商売が卑しいものであるという考えがあるためこの国のように発展させるのも難しいでしょう。なにより部下の報告では日ノ本の民を見下している輩も少なからずいるとのことです」

「ふむ、陸軍奉行所。朝鮮を攻め取ったとしてどうなる」

「国防の観点から見ればいつ反乱を起こすか分からない民を後ろに抱えながら、北の女真族を相手するのは難しいかと。それに言葉が通じないのは厄介です」

そうか、土地を奪えばそこを守るための費用もかかる。陸続きの土地を奪うのは長期的に費用が掛かるということなのか。祖父様が最後に奪った高山国との大きな違いだな。あそこは多くの陸軍を必要としていない。水軍を強化すればある程度の侵略には耐えられる。船は高いが人は少なくてもいい水軍の方が安上がりだ。


「文部奉行所、占領した土地の民に日ノ本の言葉を教えるのにはどれほど必要か」

「時間でいえば10年や20年では足りないくらいとしか。費用の面でも膨大なものとなりましょう。それだけの費用を朝鮮に使うぐらいであれば武士以外の学校を日ノ本に作った方がよろしいでしょう」

「済州島はどうだ」

「あそこであれば人口もそこまで多くありません。また日ノ本の民を移民させる計画があるため、現地人にとっても日ノ本の言葉は必要なものになります。友好的に接し、高山国の現地人と同じように日ノ本の民と同じ扱いにすれば問題ないかと」

「ふむ、聞けば聞くほど朝鮮を占領する価値はないな。よし、とりあえずこれまで通り九十九に朝鮮を襲わせよう。それから水陸軍は済州島攻めの計画を」

「「はっ」」

「外務奉行所は、明に朝鮮が和睦を受け入れるよう圧力をかけてほしいと伝えてくれ。それから多聞衆は女真族に接触せよ。朝鮮に北から圧力をかけることができるか調べてほしい」

「「はっ」」

これが鎮守府大将軍、天下人か。俺もいつか、皆をこんな風に指揮しながら幕府や日ノ本を成長させていくのか。


「それから次は内務奉行所だな」

「はい。今回は新しい無人の島を3島、発見したことをご報告させていただきます」

新しい島?

「場所は横浜より南。詳細な距離は分かりませんがかなり遠くのようです。大きさは琉球の本島以外と大差ないものと思われます」

「そうか。しかし詳細な距離が分からないとだめだな」

「はい。そのため調査団を派遣したいと考えております」

調査団か。何か珍しいものが取れるのであれば売れるだろうな。何もなくても土地があるなら何かしらできるだろう。

「ふむ、調査団を派遣するにしても島の名前はあったの方がいいな。3島なら諸島か。発見したものの名前は?」

「小笠原というものですが」

「よし、その諸島の名前を小笠原諸島としよう。長康」

「えっ、はい」

急に話しかけられてちょっと変な声が出てしまった。だけど今日は発言してはいけないという話だったはずなんだけど。

「調査団の責任者になれ」

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