表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
292/402

朝鮮侵略

―――――――――1591年3月10日 大坂城 惟宗貞康―――――――――

「は?朝鮮が戦の準備をしている?」

頼久の報告を聞いて思わず声をあげてしまった。ほかの奉行や次官たちも驚いている。

「なんでだ?朝鮮の使者が来た時にはしっかり説明しただろう」

「朝鮮の朝廷がいま二つに割れているのは以前説明させていただきましたが、その二つの勢力が同時に日ノ本攻めを提案したようです」

「敵対していた勢力が同じ提案をしただと。間違いないのか」

「朝鮮の使者が来た折に銭でこちらに情報を流す協力者を数名作りました。間違いないかと」

「対馬の水軍からの報告ですが、朝鮮の水軍の数が増えつつあるとの報告もありました。その情報に間違いはないでしょう」

頼久の言葉に貞範も同意の発言をする。水軍は一度朝鮮の船が妙な動きをして以来、監視を強化してきた。その水軍でも同様の動きが確認されているのであれば朝鮮が日ノ本を攻めるのは間違いないのだろうか。しかし何のために。

「東人は日ノ本が謀反に加担していたようだから即刻日ノ本を攻めるべしと主張し、西人は謀反には加担していなかったようだが侵略の可能性あるので即刻攻めるべしと主張したようです」

「東人と西人は敵対しているのであろう。なぜ同じような主張をするのだ」

「主導権争いで劣勢に立たされている東人は責任回避のため、謀反をなんとかして他の勢力によって唆されたものであるとしたいのです。そのため日ノ本が唆したと主張しています。しかし西人はこの機会に一気に東人を権力争いの座から落としたいと考えています。そのため謀反を唆したわけではないが日ノ本は朝鮮を侵略しようとしている、その前に西人が日ノ本を討伐してみせると主張しています」

西人は手柄を上げて権力を握るため、東人は自らの勢力の責任逃れのために図らずも双方とも日ノ本討伐をと言ったのか。こちらからすればなんと迷惑な話だ。


「御屋形様、いかがしますか。来月には使者を派遣することになっていますが」

「中止だ。戦の準備をしている国に使者を派遣するなど危険すぎる。それより明に使者を送ったほうがいいだろう。外務奉行、明に使者を送ることはできるか」

「できますがあまり有効ではないでしょう。御止めになられた方がよろしいかと」

俺の言葉に康繁が反対の意を示す。やめておいた方がいい?

「なぜだ。朝鮮は明のいうことには反抗できないだろう。明にやめるよう言ってもらう方がいいのではないか」


「まず日ノ本、及び幕府が舐められます。この程度のことも自力で解決できないのかと明や朝鮮、諸大名に知らしめるようなものです。それでは幕府の威信が損なわれます。明には交易の場でより強硬に出る口実を与え、朝鮮には明さえ味方に付ければ日ノ本はどうとでもなるという勘違いをさせ、諸大名には幕府は、御屋形様は大したことはないと思い込みかねません。そのすべては幕府にとって不利益です。この件は少なくとも日ノ本の力だけで対応せねばなりません。また明は国内の問題があります。万暦帝が自分の墓に多大な費用をかけるなど私的な浪費のせいで国内にかなりの不満を抱えた不穏分子が存在するようです。これは多聞衆に調べてもらったので間違いないでしょう」

「そうなると明に頼るのは得策でないうえに明が動けるか分かったものではないということか」

「はい」

たしかに朝鮮のことで幕府の威信を落とすのはよくないが・・・朝鮮が攻めてきたときに対応できるかだな。


「水軍・陸軍奉行。もし朝鮮が攻めてきたときに対応できるか」

「水軍としましては対馬の兵を増やせば問題ないでしょう。朝鮮が攻めてきたあかつきには朝鮮の水軍を壊滅させて見せまする」

「陸軍も問題ないと考えます。対馬はすでに要塞化されていますし、朝鮮では戦が長らくなかったため経験の面で圧倒的な差があります。さらに朝鮮の使者の話では火縄銃はなく、弓の射程も日ノ本の物より短いようです。また北の女真族に備える必要があるため、兵や武器の質や量でかなり有利です。少なくとも負けることはないでしょう」

俺の問いに貞範・康胤ともに自信ありげに答える。

「よし、これより水陸軍は朝鮮との戦を想定した計画を早急にたてよ。多聞衆は朝鮮だけで日ノ本と敵対するとは思えん。女真族・明・南蛮、それら朝鮮に味方する可能性のある勢力を徹底的に監視せよ。世鬼と伊賀はこの期に国内で不穏な動きをする輩がいないかの監視だ。日ノ本での対他国の戦は幕府にとって初めてだ。必ずや勝利を収めるのだ」

「「「はっ」」」

父上が亡くなられてすぐ日ノ本の土地を他国に奪われるようなことになれば、幕府の威信は地に落ちる。所詮は父上一代のものだと思われてはいけないのだ。そのためにも必ず勝ってみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ