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後藤氏

――――――――――――1540年5月20日 岸岳城――――――――――――

「熊太郎様、皆が揃いました」

「わかった、すぐに行く」

鎧を着た小姓が俺を呼びに来た。確かあいつは今年で15歳だったはず。元服は明日だ。これからもしっかり働いてほしいものだな。


今回の戦は以前から言っていた後藤攻めだ。名目上は渋江公親の遺児、公師きみまろを日鼓城に戻し渋江氏の旧領を回復するのが目的だが実際は後藤氏を滅ぼすことだ。後藤氏が支配している武雄は有馬氏だけでなく千葉氏も狙っているから早めに抑えておきたい。宗が武雄をとることができれば千葉氏は少弐氏の被官に近い立場だから狙ってくることはないだろう。あとは有馬との対決になるが有馬は少し無理をして勢力を広げているところがあるから十分勝てるだろう。これで西肥前を勢力下におくことができるな。


少弐氏とは同盟を結ぶことにした。頼周が大友と頑張って交渉して宗・少弐・大友の同盟を認めさせたらしい。お互いを侵さず侵されず、大内が攻めてきたら三家が協力してことにあたる。細かいところは今、康広が少弐や大友と交渉している。少弐は馬場頼周が大友は臼杵鑑続が交渉役に出てきているようだ。

本当は肥前統一をするうえで邪魔だから同盟なんて結びたくなかったけど正面だって断ると有馬との争いの中で後ろをつかれかねないからあんなこと言ったんだけどな。まぁ、大友と同盟を結べたからいいか。史実の大友は一昨年の和睦以降大内との争いはなかったけどこの歴史ではどうなるかな。


評定の間に行くと皆そろっていたのでさっそく作戦の最終確認に入ることにした。

「今回の戦は隊を二つに分けて行動する。まず俺が率いる本隊2000は住吉城を攻める。その後白木の砦を攻略し後藤の本拠地である塚崎城を攻略する。小田盛長・井手智正・佐須盛廉が率いる別働隊1500はまず日鼓城を攻める。その後西にある川古城・陣ノ平城を攻略する。その時点で本隊が白木の砦を攻略できていれば多久氏に圧力をかけるためそこにとどまるよう。攻略できていなければ猪隈城とその周辺を攻略せよ」

「「「はっ」」」

「公師は別動隊と行動を共にするように」

「はっ」

まだ少年と言えるくらいの子供が頭を下げる。まだ16歳だ。戦国時代とはいえこんな子供まで戦に出ないといけないとはね。まぁ、俺もまだまだ子供だけど。


―――――――――――1540年5月26日 黒髪山――――――――――

住吉城を包囲して5日が経った。最初の2・3日は強引に落とそうとしたがなかなか落とせなかったので今は城の水を断ち水攻めにしているところだ。出来るだけ短期決戦で終わらせたかったが思ったより堅城だな。

「熊太郎様、そろそろ軍議の時間です」

この間まで小姓だった佐須景満さすかげみつが俺を呼びに来た。景満は出陣前に元服をすませた。まぁ、役目は元服前とほとんど変わらないけどね。


「今夜、夜襲を仕掛ける」

「えっ?」

軍議の最初にさっそく作戦を伝えるとなぜか驚かれた。昨日まで水攻めにしていたからだろうか。

「今、敵は水攻めにされているから夜襲の可能性は低いと見ているはずだ。夜襲で二の丸まで落とす。そして敵が撤退しているときに多聞衆を紛れ込ませる。あとは明後日の夜中に兵糧を管理している倉を焼き裏切り者が出たと叫ばせ、そこに全軍総攻撃を仕掛ける。それで落ちるだろうし落ちなくても兵糧がないからあと10日も包囲していれば勝てると思うのだが皆はどう思う」

皆、顔を見合わせているがざわざわするだけで誰も意見を言おうとしない。賛成ということでいいのだろうか。

「頼氏、今回の作戦は可能か」

「恐らく城に入るまでは問題ないと思われます。問題は兵糧を管理している倉をすぐに見つけることができたとして少数で蔵を焼くことができるかですが火薬をいただければ問題ないかと」

火薬?何に使うのだろうか。

「火薬を別の場所で爆発させてその隙に蔵を焼くのです」

「よし、ではそのようにしてくれ。ほかに意見があるものはいないか。いないのであれば今夜の夜襲に備えよ」

「「「はっ」」」

うまくいけばいいな。


――――――――――1540年6月1日 猪隈城 佐須盛廉――――――――――

「では、今は塚崎城を包囲しているのだな」

「はっ、詳しくはこちらをご覧ください」

熊太郎様の使者が懐から手紙を取り出す。家臣がそれを受け取り儂に渡す。どれどれ。

「盛廉殿、熊太郎様はなんと」

「別働隊はそのまま待機し、多久氏を攻撃する準備をしているフリをしろと」

「準備をしているフリ?それはどういうことで?」

「今、多聞衆を使って次は多久氏を攻めようとしていると噂を流しているようです。ご存知のように多久氏には前から服属するよう言っていたのですがなかなか従いませんでした。それで今回の後藤攻めを利用して脅そうと考えているのではないでしょうか」

「なるほど」

盛長殿が感心したように頷かれている。

「おそらく多久氏が単独で動くことはないでしょうが念のため備えを怠らないようにしましょう」

ここで軍議を終えようとすると智正殿が皆を呼び止められた。

「皆様、準備の振りではなく実際に攻める準備をしませんか」

「何故ですか。熊太郎様はフリだけで良いと言っていますが」

「それがばれては舐められてしまいます。それに我らが攻める準備をしていると知れば慌てて城の守りを固めようとするはず。こちらが背後を突かれる可能性が格段に下がるかと」

「たしかに。盛長殿はどうお考えですかな」

「我らをここに留めたのは他の城が塚崎城の援軍に行かないようにするため。それさえできればどちらでも良いかと」

おそらくふたりは本隊に比べて手柄が少ないことを気にしているのだろうの。ここで反対するのは楽だが変なしこりを残したくはない。

「では、我らは攻める準備をしていつでも熊太郎様から多久氏攻略を命じられても良い状態にしておきましょう」

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