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手伝普請

―――――――――――1586年6月30日 大坂城―――――――――――――

「ある程度は目処が立ったみたいだな」

貞康から渡された報告書を読んでため息が出た。目処が立ったと言っても被害の把握と仮の家が建て終えたぐらいだ。大変なのはこれからだろう。

「はい。農村部は郡代の指示のもとかなり復興が進んでいますが、もっとも被害の大きかった地域はまだ人が入っていないところも」

「城が潰れたところもあるそうだな」

「飛騨の帰雲城が城下町もろとも土砂崩れで。大垣城も全壊したとのことです」

かなりひどい。当面は復興にかかりきりになるだろうな。

「お前も大変だな。せっかく亀が身籠ったというのに」

「天下人として仕方のないことかと。亀もわかってくれましょう」

「そうだな。まずは復興だな。まずは湊を復興させねば。物資を運ぶには海路の方が楽だ」

今回の地震で桑名など伊勢や尾張の有力な湊が被害を受けた。そこを復興させて内陸部に物資を送る。陸路も街道の整備が粗方終わっているところに物資を送ろう。そうなると当然街道の整備をのらりくらりかわしてきた大名領は復興が遅れるだろう。それを咎めて一気に大名領の街道を整備する。公家たちも今回の地震で被害を受けた。貞康が進める朝廷の支配もこれで一気に進むだろう。よくないことも利用するぐらいの気持ちでやらないとやってられないな。

「それから農村部の復興だな。今年は被害が出た村の年貢は諦めた方がよかろう」

「はい。いつも通り集めていては百姓たちも苦しみましょう。今年は全て免除、来年は半額免除としようと考えています」

「それが妥当だろう。百姓たちは食糧にも困っているはずだ。年貢どころではない」

「あまりにひどいところは幕府が食糧を提供しようかとも考えています」

腹が減っては戦はできぬというが、腹が減ってできないのは戦だけではない。復興も畑仕事も空腹では効率が悪いだろう。

「そういえばあれはどうなった。木曽川の」

「木曽川の氾濫ですか。地震の対応もあってなかなか対応できていません。いちおう担当の者に確認をさせています。なかなかの被害のようでこちらにも復興には多額の銭が必要でしょう。それから堤を作らないと」

悪いことは重なるものだな。さすがに幕府の金庫が埋まっていてもかなりの痛手になるだろう。

「どうするつもりだ」

「堤は手伝普請という形で諸大名に命じようと考えています。これ以上幕府の銭を使っていながら諸大名が使わないのは少しばかり危険です。惟宗の銭がなくなったところで何らかの動きをしようと考えている馬鹿者がいるかもしれません。そんな輩が出ないよう費用は諸大名に出させます」

「それがいいだろう。高山国攻めにも諸大名にはそこまで負担を求めなかったからな。ここらで銭を一度出させた方がいい。日ノ本のためにもなる」

いま諸大名の政治は二つに分かれている。これまでとあまり変わらず幕府の方に従いながらこれまでと変わらず領内を治める大名。三好や佐竹・筒井などだな。それとこれまでと違って領内の街道を整備したり殖産興業に励む大名。毛利や島津・伊達などがそうだ。どちらが為政者として優秀なのかは明白だな。後者の大名を増やすには銭を稼ぐ必要性を作らないといけない。史実の江戸時代では借金まみれから逃れるために大名たちは藩内の産業振興に力を入れた。日ノ本の発展は幕府の力だけではまず無理だ。大名たちの必要に追い込まれて行われる産業振興もあって日ノ本全体の発展になるんだ。

「分かりました。すぐに財務奉行所に諸大名の去年の収支をもとに負担する額を決めさせます」

「頼んだぞ」

ここでしっかりと対応できれば幕府を支持する者たちが増えるだろう。武士の支持が大半だった幕府は天下の支持を得た幕府になることができる。貞康は公武の幕府となろうとしているみたいだが、それだけでは足りない。それに気づくことができればいいんだけど。ま、貞康の代でようやく公武の幕府になることができるはずだ。天下に支持される幕府になるには熊太郎の代までかかるだろう。あまり後世まで続けたくはないが信用というものはそう簡単に得られるものではない。こうしたところで少しずつ日ノ本の民から支持を得ていかないと幕府は盤石とはいえないだろう。果たしていつになったらそんな世になるかな。熊太郎の代か、そのまた孫の代か。何らかの形で戒める文を残しておくべきかな。俺もこの時代では年寄りの部類に入るだろう。そうでなくとも人はいつ死んでもおかしくはない。

はぁ、歳なんて取りたくないな。死んだ後の事を考えないといけなくなる。まったく嫌になるよ。

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