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評定3

―――――――――1582年3月31日 大坂城 惟宗貞康―――――――――

「次は総務奉行所」

「はっ。総務奉行所からは城下で火災が発生した時の延焼を防ぐための火除地と火消の設置、幕府が管理する山林の設定を提案さていただきます」

智正がそういうと吉継・長盛が皆に資料を配る。城下での火災の対策か。城下は大名屋敷や多くの商人・町人が住んでいる。そこで大火になれば多くの犠牲を生むことになるな。こう言うことはできるだけ早めにやっておかないと。

「まず火除地から説明させていただきます。現在の計画ではまず、この大坂城の周囲を中心に5箇所設置します。そこから少しずつ増やしていき、最終的には20箇所以上にする予定です。また、火除地の機能を損なわない範囲での薬園・馬場を設置する予定です。設置場所については二枚目をご覧ください」

「ふむ、康興。直轄地の街の整備は内務奉行所の仕事だがこれで問題ないか」

俺の言葉に康興は後ろに座っている次官たちと少し話をし始める。細かいところは次官たちの方が詳しいからな。

「多少整備計画を変更しないといけないところは出てきますが問題ないでしょう。火事になれば厄介ですのでこちらを優先して計画を立て直します」

「そうか、では次の火消しの説明を頼む」

「はっ。火消は文字通り城下で火事が発生した際に火を消すための組織です。これは大きく分けて二つ作ろうと考えております。一つは大名たちが費用と人を出すもの。これは主に大名屋敷や城内での火事に対応させます。もう一つは町人たちに費用と人を出させるもの。こちらは大名屋敷や城内以外で火事が起きた際に対応させます。前者を大名火消、後者を町人火消と呼ぶこととします。大名火消は各大名が10人ほどを常に城下の屋敷に待機させて火事があった際にほかの大名と協力して鎮火を行います。町人火消は町人たちから費用を徴収して、その銭で火消のための町人を雇います。この仕組みであれば幕府の銭を使うことなく城下の火事の被害を抑えることができます。人数などについては四枚目をご覧ください」

ふむ、城下での火事の被害を抑えることができて幕府の銭を使わずに済む。大名も城下の屋敷が燃えてなくなってしまうよりはましだろうし、町人たちも自らの身を守るために賛成するはずだ。それに最近は仕事の当てがないのに、何かしら仕事はあるだろうと大坂に移住してくる輩がいるからな。そ奴らには面倒事を起こす前に仕事を与えておいた方がいい。大名や町人は火事の際の備えができ、仕事が無い奴は仕事ができ、幕府の懐は痛まない。なかなか良い案ではないか。

「次に幕府が管理する山林の設定について説明させていただきます。これは木の切り過ぎによる土砂崩れ等を防ぐ、適切な管理による山林の保護、災害等で緊急に木材が必要なところに早急に木材を供給することを目的としたものです。この山林の管理は財務奉行所・産業奉行所・内務奉行所で行おうと考えております」

土砂崩れというのは九州での経験だな。山間部での開墾の後に土砂崩れが増加したという報告が昔あった。それを山を切ったことが原因だと父上が考えられて調査をされて、それが間違いないことが分かった。それ以来開墾では悉皆と計画を立てて行われるようになった。それを大名領で起きないようにするためだろうな。しかし切らなすぎるのも逆に問題だ。そのあたりの加減は幕府の方が経験がある。二つ目の山林の管理というのはそういうことだろう。三つ目の木材の供給というのは災害で城や町民たちの家が崩れた時に町としての機能を早急に元に戻すためだろう。管理に財務奉行所と産業奉行所を巻き込んだのはその山林で少しは儲けようと考えたからかな。

「良通、盛円。共同管理となるが問題ないか」

「財務奉行所は問題ございません」

「産業奉行所も問題ありません」

「ではこの計画を進めよ。火消については大阪だけでなく京などの大都市にも配備したい。総務奉行所はそっちの方も計画してくれ」

「「「はっ」」」

「次は法務奉行所」

「法務奉行所からは今回の提案で修正する箇所ができましたので次回とさせていただきます」

この会議ではいろいろ出たからな。特に大名に関しては追記しなければならないことが出てきたのだろう。しかし前から思っていたことだが、そう言ったことをこの場でするのは時間の無駄だな。どうにかならんのだろうか。次官たちだけで前日になにをこの場にあげるのか情報を交換する場を設けるというのはどうだろうか。悪くない気がするな。そこでまた修正が必要になれば翌日の評定に持ち込まないという選択肢もできる。だが将軍の目の無いところで何もかも決まってしまい、評定が意味をなさなくなるかもしれない。あくまで情報交換の場であって議論をするのは禁止しよう。これなら問題ないはずだ。しかし誰がその会議を主導する?どこかの奉行所の次官に任せればそれがそのまま奉行所の序列になりかねない。あくまで奉行所同士は対等でなければ。今回の評定の報告をする際に父上に相談しておこう。父上ならば何か良い案を出してくださるかもしれない。

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