表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/402

天領

―――――――――――1581年5月10日 大坂城――――――――――――

「御隠居様、智正殿と藤孝殿が参られました」

自室で仕事をしていると外から松寿丸が声をかけてきた。

「そうか、通せ」

そういえば松寿丸もそろそろ元服だよな。たしか14だったはずだ。だけど本人はそんなこと言っていなかったな。もしかしたら元服はまだ先でいいと思っているのかもしれない。うーん、元服の時期ってやっぱり固定した方がいいかな。それに合わせて酒やたばこの年齢も制限した方がいいかもしれない。やっぱり体に悪いものを幼いうちから摂取できないようにするのは必要だな。だけど酒は惟宗の財源の一つでもあるし、たばこはこの時代では薬として使われているからな。制限しにくいんだよな。どうしたものか。そもそも酒やたばこの年齢制限っていつから始まったんだ?

「失礼します」

「失礼します」

そう言って良通と藤孝が入ってきた。

「よく来たな。智正は検地の報告だな」

奉行を発表する前から智正には全国で検地を行うよう指示を出していた。この検地は惟宗直轄地だけでなく、親族衆・譜代・上洛戦前から仕える準譜代・外様関係なくすべての土地で行われた。もちろん寺や神社が所有する土地や公家・朝廷が所有する土地もだ。親族衆や譜代・準譜代はそこまでなかったが外様には石高を過少に報告していたところがあったらしい。

「はい。こちらがその報告書にございます」

そう言って大量の書類をこちらに差し出す。一番上には簡単にまとめられた表が載ってある。どれどれ、外様で一番大きいのは佐竹と伊達の72万石だな。その次が徳川の62万石だな。思ったより外様の石高はそこまで高くないな。まぁ、加賀百万石とかがいないからかな。準譜代で一番大きいのはやっぱり舅殿だな。加賀一国と越中半国で70万石。俺が最初に偏諱をした康胤・康繁・康興はだいたい同じくらいだな。康胤が肥前で43万石。康繁が甲斐と駿河で42万石。康興が備中・備後で40万石。他の準譜代はだいたい20万石から30万石。三成や高虎・伊勢など俺が拾ったものたちは10万石ぐらいだな。譜代はだいたい25万石前後だな。抜きんでて大きい奴はいないな。親族衆は康正が会津など蘆名旧領で70万石か。内貞が土佐・阿波二国で39万石。貞親が豊後一国で38万石だな。おっ、一番下には外様・準譜代・譜代・親族衆・天領別で石高が書かれてある。天領は・・・・400万石以上!?えっ、そんなに多かったのか。

「智正、この数字に間違いはないのだな」

「はい。大名が隠していた土地も暴き立てましたゆえ間違いございませぬ」

「多くもなく少なくもないのだな」

「はい」

だとしたら明治維新かその類のものは無理だろうな。確か史実の徳川の直轄地は江戸初期で250万石ぐらい。綱吉の頃の大名改易でようやく400万石、最盛期で460万石だったはず。これだとあっという間に徳川の全盛期を追い抜くんじゃないか。しかも国内の鉱山はすべて惟宗の物となっている。たぶん史実の徳川幕府より強い幕府になるんじゃないか。のちの世はどうなるんだろう。少なくとも鎖国はしないだろうし。うーん、分からんなぁ。

「よくやってくれた。奥羽の方など初めての検地だったから大変であったであろう。御苦労だった」

「有り難きお言葉にございまする」

「それから医者の方は集まっているか」

総務奉行所の仕事には病院の運営がある。初めは直轄地の主要な場所から始めようと思う。大坂・京・博多・津島だ。ここから少しずつ増やしていければいいと思うのだが。

「集まりつつはありますが、まだ足りていません。ですが何とか集めます」

「そうか、頼んだぞ」

「はっ」

たぶん無茶振りしているんだろうけどな。

「次は藤孝だな」

「はっ。御隠居様が御考えになられた博物館と図書館の件で」

いわゆる国立博物館と国会図書館のようなものだな。史実ではなくなってしまったが今はまだある名器や名刀・名画・書籍などがあるはず。それを集めて幕府が保管しようというものだ。今までそう言った方面のことは全くしてこなかったからかな。そろそろこういったこともしていいだろう。のちの歴史家に戦と政治だけで教養は田舎者なんて評価は受けたくないしな。ついでにこの博物館と図書館に俺の作らせたものを紛れ込ませる。すでに太陽系の模型の制作は始まっている。あとは周期表もこの間書き終わった。あれは一苦労だったな。

「書物の方は公家の方々からお借りして写本を進めているところです。博物館の方ですがなかなか手放さない者が少なくなく」

「そうか」

遺跡の発掘をすれば何かしら出てくるのだろうが、今は買い漁るしかないよな。あれ、これはこれであんまりよろしくないんじゃないか。ま、いいか。これはあくまで歴史的遺産の保護だ。決して買い漁っているわけじゃない。それに一般にも公開できるよう調整中だ。初めは少人数ずつの許可制になるだろうけど。

「それから正倉院ですが朝廷ではあまり好評ではないようです」

だろうな。いきなり正倉院の中身を別の場所に移して幕府が管理しますなんて言われても嫌だろう。

「名品を持っている者から買うときはできるだけ相手に不満が残らないようにしろ。それから買うことができなければ借りるという形にしてもかまわん。正倉院はまずは目録を作り直させてほしいというところから進めよ」

「はっ」

やっぱり遺跡発掘をするかな。うーん、だとしても金がかかるだろうしなぁ。この時代の人からしてみれば対して珍しくないものかもしれないし。この辺りは慎重に進めないとな。とりあえず遺跡がある場所を地図に書き記しておくか。あっ、しまった。それには正確な地図が必要だな。はぁ、まだまだ先は長そうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ