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傅役と暦

―――――――――――1580年10月30日 大坂城―――――――――――

ようやく奉行職の読み上げが終わったか。たぶんこれだけじゃ足りないんだろうけどなぁ。いちおう前世の省庁制を参考にして作ったのだが、どこかに穴はありそうだ。まぁ、その時は随時改良していけばいいだけだ。大まかな形はできているはずだ。ある程度合議制にしながら鎮守府大将軍の許可なしには大きな動きができないようにしてある。イメージというか理想としては大統領あるいは首相と閣僚のような関係だな。

俺としては陸軍・水軍をもう少し何とかしたいんだよな。今回奥羽平定に向かった譜代・親族衆が率いた惟宗の軍を幕府軍として陸軍・水軍に分けているだけだ。大名が抱えている兵はその幕府軍に入っていない。最終的には大名が私兵を持つことを禁じて軍隊を持つのは幕府の特権という形にしたい。まぁ、そもそも家臣団が私兵みたいなものだから無理だろうけど。

それから大名はあくまで地方行政機関にして土地の所有権は農民や町民に属するというようにしたい。イメージとしてはアメリカの州政府のようなものだ。武士は大地主ではなく前世でいうところの公務員と政治家にする。だがそれは無理だろうな。旗本の公務員化は何とかうまくいっているが大名は難しい。少なくとも今すぐにはできない。日本人は土地に対しての執着心が強いからな。ま、この辺りの事は後世に託すとしよう。この間貞康に何でも一人でなそうとしないでくれと言われたからな。いやぁ、貞康がそんなことを言うようになったとは。子供の成長は嬉しいが少し寂しいな。


「次は熊太郎の傅役を発表する。傅役は柚谷康広・倉野茂通・黒田孝高」

「「「はっ」」」

康広・茂通はすでに隠居して子や孫に家督を譲っているが優秀なのには変わりない。康広には外交について、茂通には財政について、孝高には軍事面について教えてもらう予定だ。そのほかの部分は俺や貞康が教えていくことになるだろう。熊太郎に関してはあとは嫁だな。今のうちに考えておこう。内貞と貞親・貞勝の嫁は決まった。内貞は徳大寺公維の娘だ。確か名前は桃だったか。徳大寺家の家格は清華家だからちょうどいいのかな。貞親は吉弘鎮信の娘だ。名前は雪。吉弘家は大友の分家だからちょうどいいだろう。貞勝の嫁には東国の備えになってもらう必要があるから関東・奥羽の大名からにすることは決めていたので政宗の妹に決まった。名前は千子姫。まだ8歳だが問題ないよな。

子供や甥の嫁も決まったことだし俺としては完全に隠居したいところだが当分は幕政に関わっていくつもりだ。俺がこの幕府の仕組みを考えたんだからな。ある程度軌道に乗るまでは口出ししないといけないことも出てくるだろう。

「次に新しい暦についてだな。彌七郎」

貞康が側にいた彌七郎、史実では立花宗茂に声をかけた。彌七郎は一礼すると他の小姓たちと共に諸将に紙を配る。

「これは南蛮の暦だ。これから南蛮との交易など様々な場で暦を使うことが出てくるであろう。そうなったときに暦が違えばいろいろと不都合が出てくるやもしれん。そこで南蛮の暦を日ノ本に取り入れることにした」

皆に配ったのはグレゴリオ暦だ。と言っても正しいかどうかは分からない。家督を継いだころからずっとこっちの暦と南蛮から取り寄せた暦、それから俺の動きが全く関係ないところで起きた出来事の日付などを考えて作ったものだ。そもそもグレゴリオ暦が使われるようになるのはまだ先だ。だから正確に言えばこれはグレゴリオ暦とは言えないな。さて、数百年後の歴史家たちはこの暦をどう見るかな。南蛮の暦に合わせると言って改暦したのにユリウス暦ではなく、その頃まだ使われていなかったグレゴリオ暦を採用した。悩むだろうな。それともただの偶然として片付けるのかな。いやぁ、楽しみだな。ただでさえこの時代にはない技術を俺の指示で開発しているんだ。そこに今回の改暦。後世の反応が見れないのが残念だな。そうだ、この時代では発見されていない物理法則とかいろんなものを紙に残したり、模型にしておこうかな。うん、後世への挑戦というか嫌がらせだ。よし、明日にでも指示しておこう。最初は太陽系の模型かな。紙にまとめたものは本にしよう。そして惟宗が図書館を作ってその中に紛れ込ませよう。見つかった時は大騒ぎになるだろうな。


「これを新しい帝が即位される11月16日を1月1日として改暦する。すでに朝廷とは話を付けている。そしてこれまで使われてきた暦はすべて廃止する」

これには多少の反発はあったみたいだけどな。伝統を重んじる朝廷の反応はたかが南蛮の暦になぜ合わせなければならないのだ、これまで行ってきた行事はどうするのだ、700年以上使われてきた暦を変えるとは何事だなどなど。もっとも700年以上使われてきたと言ってもちょくちょく改暦しているんだけどな。それに帝の即位に合わせるという点においては高評価だった。問題なく進められるだろう。それと改暦に合わせて改元も行う。次の元号は時期は違うが史実通り文禄だ。しかし改元のたびに銭がかかるのは嫌だな。この際、一世一元の制を取り入れるかな。

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