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北条征伐4

――――――――1579年7月20日 石垣山城 惟宗貞康―――――――――

「ふぅ」

諸将が自分の陣に帰ったところで思わず溜息が出た。今回の戦は奥羽の諸大名が来ているからどうもつかれるな。彼らは俺が父上の跡を継ぐことができる人物か見極めようとしていた。もし俺がそれに値しない人物だと思われたら父上が亡くなられた後に反旗を翻そうとするだろう。父上が生涯をかけて為そうとした国家安康を俺の手で壊すわけにはいかない。そう思うと余計に疲れてしまう。この間のこの城のお披露目の時には奥羽の諸大名の陣からは見えないように作っていたため、木々を倒した時には一夜にして城ができたように見えたはずだ。これだけで奥羽の諸大名を手なずけることができたとは思わないが、少なくとも以前よりは評価が上がっただろう。それでいい。そこから少しずつ上げて俺が天下人になることを認めさせればいいのだ。


「御屋形様、お疲れかと思いますが書状や仕事がございます」

そう言って三成と吉継が大量の書類を持って入ってきた。この二人は最近俺の配下となった父上のお気に入りだ。同時期に俺の配下になった正信と正家と高虎はいないらしい。

「三成はここに残って俺の補佐をしてくれ。吉継は兵糧などの物資の確認と兵たちの様子を見てきてくれ。特に奥羽の諸大名は兵糧が足りていないかもしれないからよく確認しておくように」

「かしこまりました」

そう言って吉継は一礼すると部屋から出ていった。三成は少し不満そうだ。いつも俺の補佐ばかり命じられているから諸将とあまり仲が良くない。この機会に仕事に支障が出ない程度に仲を深めておきたかったのだろう。しかし吉継に命じたような仕事を三成に任せると必ずと言っていいほど何らかの問題が起きる。どうもこいつは人付き合いが苦手らしい。父上が取り扱いに注意せよと言っていたのには納得だな。

「それから御隠居様より書状が届いておりまする」

「そうか。ではまずそれから見よう」

「かしこまりました」

そういうと三成は書類の山から父上の書状を探し出してこちらに差し出した。受け取るとさっと書状を広げる。


「御隠居様は何と」

「父上が1万の兵を率いてこちらに向かっているそうだ。おそらくそろそろこちらに着くだろう」

「そうでしたか。御隠居様はこの戦には参加なさらないと思っていましたが」

「おそらくこちらに来て奥羽の様子をこちらでじかに見ようと考えられたのだろうな。父上は何でも自分でなそうとなさるような方だ。それに情報というものを重視しておられる。こちらに来て見聞きした方がこれからの動きを考えるのに役立つと御考えなのだろう」

今のところは関東の北条方の城を落とすまで奥羽には手を出さないつもりだ。父上もそのことを了承している。おそらくそれからの事を考えるためにもこちらに来た方がいいと思われたのだろう。

「父上が来られたら奥羽の諸大名だけでなく皆が父上に会おうとするだろう。謁見の順番を決めておいてくれ」

「かしこまりました」

三成はそういうと側に置いていた紙に書き込む。おそらくこの後にしなければならないことを紙に書いているのだろう。

「次は関東の北条方の城を攻めている鑑連殿からの報告です。関東の北条方の城は成田氏の忍城や那須氏など一部を除いて制圧したとのことです。現在はほかの城に押さえの兵を置きながら那須氏領を攻めているとのことです」

さすが爺様だな。北条方の城は小田原城での籠城のために多くの兵を小田原城に送ったとはいえこれほど短期間でほとんどを制圧するとは。しかしこれから爺様の兵はどうするかな。那須氏がそこまで抵抗できるとは思えない。おそらく小田原城が落ちる前に那須氏は降伏か滅亡するだろう。そうなると爺様が率いる7万の兵は暇になる。こちらに戻してもいいが、すでにこの城は18万の兵に囲まれている。今更7万の兵が増えたところでという感じだ。それなら奥羽に攻め入らせるか。しかしそれでは兵糧などの運搬に不安がある。いきなり奥羽侵攻を計画して問題ないだろうか。しかしこちらに戻すのはもったいない気がする。どうしたものかな。

「三成、別動隊が奥羽に攻め入ったとして兵糧などを送れるようになるにはどれほど時間がかかる」

「攻め入る場所によるかと。南部や小野寺を攻めるとなれば少なくない時間をいただくことになりますが、二階堂や蘆名など那須領周辺であれば問題ありません」

那須領周辺であれば問題ないのか。ならば少しでもいつかあるであろう奥羽侵攻のために攻めておいた方がいいかもしれないな。

「よし、那須領制圧後は二階堂・蘆名・田村を攻めるよう伝えよ。それから兵站衆には別働隊に送る兵糧などの物資を増やすよう伝えよ」

「かしこまりました」

これでよかっただろうか。うん、大丈夫だろう。もし問題があったとしても爺様なら何らかの策を考えてくれるはずだ。俺はまず小田原城を落とすことに専念しないと。

「御屋形様、次はこちらです。それからこのままでは今日しなければならないことが終わりませんのでもう少し早く作業をしてください」

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