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志佐純次

――――――――1539年10月1日 勝尾嶽城 松浦興信―――――――――

「あっさり滅んだな」

「ええ、まさかあれほどあっさり滅ぶとは思いませんでした」

「これは宗が強かったのか忠臣を遠ざけた松浦親が馬鹿だったのか分からんな」

「しいて言うのであれば両方かと」

籠手田安昌があっさり評した。まぁ、そうであろうな。

「我らが戦を挑んで勝てると思うか」

「さて、どうでしょうか」

「遠慮はせんでよい。その方の思うところを述べよ」

「無理でしょうな。向こうから攻めてくるのであればこちらに地の利があるので何回かは撃退できるでしょうが、いずれは数に押されて負けるかと」

さすが安昌だな、しっかりと周りが見えている。

「しかしそのことを自覚していないものもいます」

「志佐か」

「はい、特に殿の弟君の志佐純次しさすみつぐ殿が宗を侮っているようです」

「志佐は平戸と対等であると思っている節がある。少しは行動を共にしてほしいのだが・・・単独で宗と当たる可能性はあるか」

「それはないかと。さすがに志佐だけでは負けることはわかっているはずです」

だといいのだが。父上はわしを平戸に養子入りさせた後、弟たちをいろんな家に養子入りさせていた。そこと協力したら勝てるなどと思っていなければいいのだが。

「この際、志佐には勢力を減らしてもらうか」

「殿、それはどういうことで?」

「志佐に宗討伐を命じる。ついでに儂の子が平戸松浦を継ぐことを反対している者たちがいるようだからその者たちにも命じることにしよう」

うむ、我ながら良い案だな。

「まずは松園休也を攻めさせる。あの者は口先は達者だが戦は下手くそだったはず。すぐに落とす事ができるだろう。そこで調子に乗らせて宗に片付けてもらう」

「しかし、そんなに簡単にいくでしょうか?また、うまくいったとしてそれで宗を怒らせては我らは滅ぼされてしまいますぞ」

「その前に降伏する。領地を減らされるかもしれんが滅ぶよりはよかろう」

「領地を減らされるだけであれば良いのですが・・・。領地を変えられるかもしれませんぞ」

「それで家が残るのであれば受け入れるしかないな」

「その前に降伏することはできぬのですか」

「その方が皆を説得してくれるのであればすぐにでも降伏するが」

安昌が言葉に詰まる。皆を説得するなど無理であろうな。それに戦を一度もせずに降伏すれば他の家のものに侮られ無理難題を押し付けてくるかもしれん。

「では、誰が出陣するか決めておくとするか。総大将は志佐純次で決まっているとして副将は誰にするか」

「他の親族の方は平戸と同調しているのでそれ以外が良いかと」

「では、いつものように佐々衆にでも命じるか」

「佐世保周辺の者たちにも出陣を命じましょう。あの者たちは大村と我らを両天秤にかけているので」

「確かにこれから宗に付くことを考えるとそのような者たちは邪魔だな」

「あとは兵の数ですか。どれほどの規模にするおつもりで?」

「平戸からは400も出せば十分であろう、あとは志佐に任せる。宗の領地は切り取り次第勝手としておけば動員できるだけ連れて行くだろう」

「あとは宗の実力に期待ですな」

「あぁ、しっかり見極めさせてもらうとしよう」


――――――――――――1539年10月10日 岸岳城―――――――――――

「平戸が戦の準備をしている?」

頼氏の報告に俺だけでなく評定衆の皆も怪訝な顔をしている。平戸がうちを攻めても勝てるわけがないだろうに何で攻めようとするんだ。

「どちらかといえば志佐が主力で平戸は手伝い戦をするだけのようです」

「それでも平戸と志佐の当主は兄弟であろう。志佐が主力とはいえ平戸の意思が入っていないわけではなかろう」

「それがどうやらあまり兄弟仲は良くないようで」

「ほう、詳しく話せ」

頼氏の話によると宗の対応で揉めているらしい。また、純次は自分が平戸松浦に養子入りをするものだと思っていたらしく興信が平戸松浦に養子入りをするときにも一悶着あった。このことで純次はかなり不満を持ったらしい。興信が当主になってから志佐は平戸松浦と違う行動をとるようになったのも純次がそれを強く望んだかららしい。

「ではなぜ仲の悪い二人が協力して我らを攻めようとしている」

「分かりませぬ」

「そうか、そのまま情報を集めてくれ」

「はっ」

「さて、皆はどう思う」

「よろしいでしょうか」

相神松浦攻略後に評定衆に加えた東尚久がおずおずと発言しようとした。旧相神松浦家臣のまとめ役をしてもらうために領地も松浦親に奪われたところをそのまま返した。これで宗に対してしっかり働いてもらえるだろう。

「おそらく平戸は志佐が大きくなることを望んでいないと思います。なのでこれは宗に対する攻撃ではなく志佐に対する罠なのではないでしょうか」

「罠というと?」

「志佐が我らを攻撃すれば報復されるのは目に見えています。それを利用して志佐の勢力をそごうとしているのではないでしょか。それに平戸は後継者の事でもめているところもあります。息子に継がせたい興信としては対抗してくる可能性が最も高い志佐純次の力をそいでおきたいと思ってもおかしくはありません」

「だが、その報復が平戸に及ぶことは考えていないはずがない」

「その前に降伏しようとするのではないでしょうか」

なるほど、確かにその可能性はあるな。粛清のため外敵に攻撃をさせるのか。

「もし、それが事実だとしてまずはどこを攻めると思う」

「志佐だけですので大規模な行軍はできないと思われます。なので距離的に近い調川城あたりではないかと」

「あのあたりだと松園休也の領地だな」

休也かぁ、相神松浦攻めの時は役に立ったけど尚久を評定衆に加えてから不満がたまっているって報告を受けていたな。正直そこまで能力があるわけではないけど相神松浦攻めの功績も無視できない。邪魔だし向こうの粛清に乗っかってこちらも粛清させてもらうとするか。

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