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琉球侵攻

―――――――――――1577年1月30日 大坂城――――――――――――

「そうか、ようやく主流派以外の者が琉球侵略について気が付いたか」

「そのようですな」

俺の言葉に頼久が歩を進めながら答えた。相掛かりか。ここ最近は振り飛車ばかり指していたから意表を突けるかと思ったけどそこまで意表を突けたわけではなさそうだな。さて、とりあえず定石通り指すか。

「誰が主流派以外で気が付いた」

「日ノ本のキリシタンが最初に気が付いたようです。日比屋了珪という商人です」

日比屋了珪。確か史実でもキリシタンだったな。教会が焼かれたときに自分の家を教会に提供したんだったけ。この歴史ではどうなんだろう。宣教師とか坊主とかキリシタンとか宗教関連の人名って頭に入りにくいんだよな。前世の感覚が残っているんだろうな。

「しかし最初に気がついたのは商人か。オルガンティノは身内を疑うということを知らんのか」

「そのようですな。それどころかまだ知らされていないようです。今頃は京で熱心に布教をしているようです。もっとも宣教師のよくない噂が広まっているためうまくいっていないようですな」

急な宣教師の配置変更なんかしたら気がつくと思うんだけどな。人がいいというか。いや、人を疑わないという意味では一番宣教師らしいのかな。しかしまだ知らされていない?

「まだ知らされていないとはどういうことだ。了珪は知らせなかったのか」

「まず了斎に知らせたようです。そして了斎は琉球侵攻を止めることはできない、そしてその後のカブラル達主流派の動き次第では宣教師たちに処刑が言い渡されかねない、それならせめてオルガンティノだけは助けようと考えたようです。オルガンティノには琉球侵攻の事は一切知らせずに琉球侵攻が始まってすぐ今回の釈明とオルガンティノの助命嘆願に来るつもりかと」

「ふん、確かに何も知らないと言っているオルガンティノを殺せば畿内や九州で一揆が起きかねない。それなら助命が叶う可能性はあるか」

これがカブラルやコエリョならだれも助命なんて考えずにキリスト教存続を願い出てくるだろう。あいつら嫌われているしな。だけどオルガンティノは多くのキリシタンに慕われている。本人はキリスト教存続を願い出てくるだろうけど周りは助命を望む声の方が多いだろうな。そんな奴を処刑するのはまずいかもしれないな。前世の宗教観のせいかどうもキリシタンや熱心な仏教徒の考えが読めないんだよな。あと龍造寺みたいな粘着質な奴。あ、龍造寺といえば。

「頼久、大友義鎮はどうしている。あれも熱心なキリシタンであっただろう」

九州で一揆を起こすなら必ず義鎮に接触するはずだ。いるのといないのではかなり違ってくるだろう。かなり前に追放したからいまのいままで忘れていたな。龍造寺の時も忘れたころに出てきたのに学習してないな。いや、学習していないというよりか歳かな。もう50近くだ。ここからはもう衰えるだけだろう。早く貞康にすべてを任せて楽隠居したいな。貞康にすべてを任せるようになったら将棋や囲碁・猿楽・狂言・雅楽などの文化の保護をしていきたいな。特に将棋と囲碁は協会を作ってタイトル戦とかしたいな。名人戦はこの将棋の間で行うんだ。これが後世まで続けば面白いな。ま、その前にキリスト教だ。

「義鎮は天童氏領にいます。どうやら大友領を出る時に高価なものをいくつか持ちだしていたようでそれを売ってキリスト教中心の生活しているようです」

「奥羽で反惟宗勢力を作ろうとしているのか」

「いえ、そのような動きは全くありません。それどころか己の出生を一切まわりに伝えておらず、領主の天童頼貞も全く動きがないため放置しているようです。おそらく今回の件に関わってくることはないでしょう」

なんだか意外だな。惟宗領から追放するときはあんなに態度悪かったのに。てっきりあのあとは反惟宗活動を続けていたと思っていたのだがな。ま、余計な敵が増えないからいいんだけど。

「ほかの主流派ではない宣教師たちはどうしている」

「ほとんどは主流派に鞍替えしました。いまだ主流派でないものはオルガンティノと行動を共にしているため琉球の件は知らないようです」

一番伝手があるだろうオルガンティノですら知らないんだ。他の非主流派宣教師たちが知らないのは仕方ないか。しかしほとんどは鞍替えしたのか。もともと似たようなことを考えていたのかな。ま、日ノ本のキリスト教の仕組みを思いっきり変えるために宣教師は追放するんだ。むしろ宣教師への心証を悪くするために主流派になってほしいくらいだ。

「主流派非主流派関係なく監視を強化しろ。それから甲斐征伐の噂を出来るだけ大げさに広めろ」

「かしこまりました」

すでに貞康は今年の5月には武田征伐を行うと言っている。それと同時に蘆名討伐も行うことにしている。多くの兵を使うだろうな。おそらく第二次織田征伐と同じくらいだ。琉球侵攻にはちょうどいいだろう。琉球からの使者はない。明に使者を送り続けているようだが明はあまり信じていないようで対応も適当になっているらしい。それでもこっちには頼ってこないのか。本格的に攻めてくるとなってから使者をよこしても遅いぞ。今の琉球王は馬鹿ではないが賢くもなく、政務に特に見るべきところもないという評価らしい。あくまでこれまで通り明に頼っていくつもりなのかな。平和な時代ならそれでもいいだろうが今の時代ではだめだろうな。いや、もしかしたら琉球王は惟宗に頼りたいが頭の固い家臣たちが反対しているのかもしれない。そうなると攻めてきたとたん逃げ出すかな。そして惟宗の力を借りてイスパニアを追い出して復権する。そうすれば頭の固い家臣たちを一掃することもできる。場合によっては隠居しないといけなくなるかもしれないけどその跡を継ぐのは17歳の弟か10歳の甥だ。当分は権力を持つことができる。ふん、もしこれが当たっていたら随分と舐められたものだな。

「念のため琉球の監視も強化しろ。もし琉球王が逃げ出そうとしたら殺せ。琉球王の親族が逃げ出そうとしたら保護して確実に日ノ本に連れて来い」

「はっ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 将棋の場合は定石ではなくて、定跡ですね。
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