第二次織田征伐7
――――――――――1574年4月23日 長良川付近―――――――――――
「信長が出陣した?それは間違いないのか」
「はい。間違いございません。長良川の対岸に約8000の兵がいます」
俺が聞き返すとすぐに頼久が答えた。8000か。確か昨日まわりの城の兵を岐阜城に集めていると報告があったな。それを考えると少し少ない気がするな。だけどある程度の脱走兵と城の守りの兵がいると考えたら妥当かな。
「率いるのは」
「織田信長本人です」
信長本人か。そうなるとこの戦で決着をつけるつもりだろうな。向こうの狙いはもちろん俺の頸。桶狭間の再現って言ったところかな。だけどそれにしてはすぐに見つかっている。俺が信長なら川を渡った直後に奇襲を仕掛けるはずだ。それが川を渡る前に姿を現した。
「織田の様子は」
「川の対岸に布陣しています。時間がなかったのか柵はそれほどありません」
うーん、柵もないなら川を渡っている途中で史実の長篠の戦いみたいに鉄砲を使ってくるわけでもないのかな?よく分からん。
「兵を止めよ。軍議を行う」
「はっ」
しかし川の対岸を取られたのは嫌だな。それにどうも妙だな。普通たった8000で3万に挑もうと思うか。しかも奇襲ではなく正面から。間違いなく罠だろうがどういうものだろうか。川を渡っているところを鉄砲や弓矢で攻撃するとか?いや、それだけなら川を渡るときに犠牲が出るとはいえすべてを止めるのは無理だろう。対岸に布陣したのは囮で別働隊が別の場所から川を渡って奇襲を仕掛けてくるとか?うーん、悪くはないだろうがそれにしては数が少ないような気がするな。それにそれならわざわざ対岸に布陣せずに直接奇襲を仕掛けてくればいいはず。それはないだろう。だとしたら何が狙いで堅城と名高い岐阜城から出てきたのだろう。普通なら岐阜城に籠って尾張の戦が終わるのを待つはずだ。尾張の戦が織田の有利に進めば尾張の兵を美濃に戻すことができる。尾張の戦はいちおう惟宗有利に進んでいるが戦上手が多いこともあってなかなか押し切れていない。尾張の戦はまだまだ続くだろう。やっぱり美濃で一気に惟宗有利に持ち込みたいな。そのためにもここで勝たないと。別にこちらが受け身になる必要はない。向こうが奇襲を仕掛けてくる前にこちらから奇襲を仕掛けよう。そうだな、とりあえずこの本隊には3万の兵がいる。そのうち8000を別の場所から渡河させて織田本陣を狙わせよう。それから12000を正面から渡河させる。残りは本陣の守備と大筒などで渡河する隊を援護させよう。いや、もしかしたら史実の耳川の戦いのように釣り野伏せを狙っているのかもしれないな。そうなると全軍が対岸に渡ったらそこで追撃はやめさせよう。渡河している途中で背後を突かれないように常に背後の備えを置いておくか。それからほかの城を攻略中の隊も呼び戻そう。ろくにこちらに付こうとする者がいない上に相手は三英傑だ。出来ることは全部しないと。
―――――――――1574年5月5日 古渡城 小早川隆景――――――――――
「そうか、御屋形様が岐阜城を落とされたか」
「はい。長良川にて織田と戦をし、織田を撤退させるとそのままの勢いで岐阜城を攻め、これを落としました」
御屋形様の使者からの知らせに皆が喜びの声を上げる。岐阜城は織田の居城。それが落ちたとなれば美濃・尾張平定もかなりはかどることになるだろう。
「長良川での戦の様子を知りたい」
「はっ。岐阜城を目指して本隊3万を率いて進んでいるところに織田が出陣して長良川の対岸に布陣したとの知らせが入りました。そこで御屋形様は兵を2つに分けました。本隊は織田の本陣を叩くべく川を渡り、別働隊は離れた浅瀬から織田にばれないように渡河して奇襲を仕掛けようとしました。その奇襲はうまくいき織田本隊を後退させました。渡河した隊はそのまま織田本体を追撃しました。その間に本陣が渡河しようとしましたがそこで織田の別働隊に奇襲を仕掛けられました。渡河している途中だったこともありかなり混乱しましたが、御屋形様が念のため置かれていた兵たちが織田の別働隊を食い止めているうちに本陣の兵が川を渡りきり別働隊を追い払いました。後退した織田本隊は最終的には岐阜城まで後退しましたが追撃した別働隊によって岐阜城は落とされました。本隊を率いた織田信長は岐阜城に火を放ち自害したとのことです」
信長は自害したのか。おそらく信長にとって長良川での奇襲は最後の手段だったのだろう。しかしこれで織田征伐は終わったも同然だな。敵討ちを望む一部のものを除けば当主が自害したところで降伏をしてくるはず。
「御屋形様は何かおっしゃっていましたかな」
「そのまま尾張平定を続けるべしとのことです。美濃平定が終わり次第合流すると」
「そうか。ご苦労だった。御屋形様には尾張平定も残りは愛知郡と知多郡のみですので心配はご無用と伝えてくれ」
「かしこまりました」




