表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/402

激震

――――――――1574年1月10日 小田原城 大舘晴光―――――――――

「ま、まことか。この書状は間違いないのか」

書状を読まれていた大樹が声を震わせて和田殿に確認する。和田殿も顔を青くしながら頷かれる。一体何が起きているのだ。

「大樹、書状にはなんと」

「上杉が、上杉が惟宗に降伏した。惟宗もそれを受け入れたらしい。最悪だ、上杉が敵に回ってしまった」

「う、上杉殿が降伏ですと!?和田殿、間違いないのですか。多聞衆が適当な噂を流して大樹と上杉の仲を裂こうとしているだけではないのですか」

「残念ながら事実です。使者として大坂城に向かった直江景綱殿はそのまま大坂城にとどまり惟宗の指示を上杉に伝えています。まず間違いないかと」

なんということだ。上杉殿は大樹が最も頼りにされていた大名の一人だ。惟宗の大軍に攻められている織田や信玄がいない武田、腰の重い北条より頼りになるはずだったのに。つい昨日も上杉宛の御内書を書かれていたはず。それなのに惟宗につくとは。いや、それより上杉が惟宗に降ったことで惟宗は織田攻めにより多くの兵を動かせるはず。我らが想定しているよりも早く織田が滅びかねないぞ。そうなれば武田勝頼に対処できるかどうか。それに上杉が降伏したことで関東の諸将が惟宗に対して弱腰になるやも知れない。ただでさえ味方は少ないというのにより減ってしまう。

「おのれ、誰が関東管領にしてやったと思っているのだ。それを思えば将軍家に忠義を尽くすが道理というものであろう。それを惟宗に降ろうとは」

「大樹、嘆いていいても仕方ありますまい。それよりこれで北条の腰がまた重くなるはずです。そちらの対処を先に決められた方がよろしいかと」

「くそっ。北条はまだ動かないのか。1000だけでもいい。北条が動いたという事実があれば惟宗も動きが鈍くなるはずだ」

北条は動かないだろう。惟宗とは特に諍いがあったわけでもない。それに対して反惟宗の一人である武田は北条と敵対していたこともある。北条家の中には我らを追い出して惟宗に従う方がよいと考えている者もいる。上杉の事もあってその声は大きくなろう。

「大樹、まずは上杉の関東管領職を解任して北条氏政殿に任命しましょう。北条は関東管領職は関東支配に必要なものと考えているはずです。関東管領職を引き換えに出兵を求めれば兵を出してもらえるかと」

「関東管領か。うむ、そうしよう。すぐに氏政を呼べ」


――――――――1574年1月15日 長篠城 武田勝頼――――――――――

「すぐに兵を引き上げるべきです。上杉が惟宗に降伏した以上、上杉がいつ攻めてくるか分かりませんぞ。上杉が攻めてくれば主力がここにいる我らには信濃を守り切れませんぞ」

「しかしここで撤退しては惟宗が三河を平定してしまいますぞ。そうなればこれまでの犠牲が無駄になってしまう。それより三河にいる惟宗勢を一たたきしてからの方がよろしいでしょう。幸いにもまだ上杉は雪のせいで動けないでしょう。その間に惟宗を叩くべきです」

「何を言うか。惟宗と戦をすればこちらも少なくない損害を受けるのは間違いないぞ。先代もそれを考えられて織田とともに戦をする道を選ばれたのだ。それなのに別働隊とはいえ単独で惟宗と戦をするのはいたずらに犠牲をだすだけだ。すぐに撤退するべし」

皆が撤退するべきか否かでもめている。撤退するべきと言っているのは父上の代から武田を支えている馬場・山県で惟宗との決戦をと言っているのは最近俺が目をかけている跡部・長坂だ。俺が家督を継いでからよくある光景だな。

「御屋形様はいかが御考えですか」

話を振ってきたのは信廉叔父上だった。叔父上も確か馬場たちと同じで撤退するべしと考えていたな。

「俺はまず惟宗を叩いたうえで戻るべきだと思うぞ。どうせ上杉は雪で動けんのだ。それにたとえ動いたとしてもあの上杉が惟宗に指図されて全力で攻めてくるとは思えん。どうせ適当に攻めて終わりだろう。そのために2万もの兵を動かすわけにはいかん。まずは惟宗・徳川を叩いてからだ」

「御屋形様!惟宗・徳川を叩くのは時間がかかりますぞ。戦が終わる前に上杉が攻めてくるやかもしれません。そうなればたとえ上杉が全力でなかったとしても信濃は大いに混乱します。何より戦を始める時とは状況が違うのです。すぐに兵を退いて策を考え直すべきです」

「しかし今兵を退けば遠江は完全に惟宗の手に落ちるぞ。織田も尾張と美濃を同時に攻められているのに三河からも攻められては厳しくなる。織田を助けるためにもここは惟宗・徳川を叩く必要がある」

ここで織田が負ければ惟宗全軍を武田が相手せねばならんのだ。これはさすがの武田でも厳しいだろう。だから織田は盾として必要なのだ。織田が耐えている間に遠江・三河の惟宗を潰す。そして父上が計画されたように織田とともに上洛するのだ。亡き父上が果たせなかった上洛を俺が必ず果たして見せる。そして武田が天下を取るのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ