表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/402

織田征伐3

あけましておめでとうございます

―――――――――1573年3月25日 立政寺 大舘晴光―――――――――

「ええい、武田はまだなのか。なぜ武田は浜松城を囲んだまま動かないのだ」

大樹が忌々しそうに言い捨てられる。他の家臣たちもそれに同調する。大樹は武田さえ動いて織田と合流すれば惟宗を倒すことができると御考えなのだろう。この戦で惟宗は20万もの兵を動かした。しかし国康本隊が率いているのは6万だ。織田と武田が合流すれば7万近くになるだろう。兵力の差はなくなる。逆臣国康を討ち取る絶好の機会なのだ。大樹がはやく武田に動いてほしいと言われるのも当然であろうな。

「仕方ありますまい。あの武田とて徳川を放置してこちらに来るようなことをするわけにはいきません。しかしすぐに浜松城を攻め落としてこちらに向かってくるでしょう。伊勢の長島一向一揆も惟宗の嫡男を叩き潰したらすぐに合流しましょう。さすればすぐに上洛して大樹の親政を執り行うことができるでしょう」

「そうじゃの。もう少しなのだ。あともう少しで父上や兄上が目指された将軍による親政を行うことができるのだ」

そうだ。あと少しで大樹による親政を行うことができる。織田や武田が口をはさんでくるかもしれないが惟宗の前例を見れば軽々に行動に移すことはあるまい。惟宗を、国康を討ち取れさえすれば何とかなるのだ。そのためにもこの戦では負けるわけにはいかない。

「和田、惟宗やほかの大名はどう動いている」

「まず惟宗康正が率いる隊は飛騨を制圧していまは兵を休めているところです。織田の主力がここにいる限りは単独で攻めてくることはないでしょう。戸次鑑連が率いる隊は一部が浜松城に入りました。そして残りの兵は武田と対陣しています。両軍ともににらみ合ったまま動いていません。惟宗貞康が率いる隊は伊勢中部と南部を制圧していまは北伊勢の制圧に向かっています。長島は完全に戦の準備を終えて長島にて惟宗を迎え撃つ構えを見せています。松浦康興が率いる隊は根来衆の反乱を制圧に向かっています。根来衆は奇襲に近い形で攻撃を受けたためかなり混乱しています。じきに制圧されるかと」

「ちっ。根来衆は惟宗に不満を持っていると聞いていたがこうもあっさり制圧されるとは情けないの」

雑賀衆のいない今、根来衆は日ノ本でも一二を争うほど鉄砲の扱いが上手い。あれが畿内で挙兵すれば少なくない兵を畿内に戻すと思ったのだが。

「最後に国康が率いる本隊は近江の大半を制圧しました。残るは犬上郡と愛知郡だけです」

「織田は何をしているのだ。ここまでは惟宗に領地を取られるだけだぞ」

「いま野戦を仕掛けるかどうか軍議が行われています。織田殿は野戦で国康の頸を取るしか勝つ道はないと言われていますがどうなるか。特に西美濃三人衆や不破が妙な動きをしていることを家臣たちが恐れているようです」

「そうか。しかしあの信長の事だ。いずれは家中を纏めて出陣しよう。我らもその準備をしておけ」

「はっ」

織田殿は今川の大軍が来た時には奇襲で一気に勝負を仕掛けた。今回も家中を纏めて野戦で一気に勝負をつけるつもりなのだろう。せめて引き分けに持ち込んで惟宗を退かせれれば武田がこちらに来るまでの時間を稼ぐことができる。

「ほかの大名はどうしている。例えば上杉や北条は」

「上杉殿は戦の準備をしていますが上野に攻め入るようです。北条もその動きに対応せねばなりませんのでこちらに援軍を送ることはできないかと。さらに上杉家はもとより北条家にも惟宗に味方するべきではないかという声が上がっているようです」

「なに?北条にもか」

大樹が意外そうな声をあげる。北条は武田と手を結んでいる。それなのに惟宗の味方をするべきという声が出てくるとは。たとえ武田を敵に回したとしても惟宗と手を結ぶべきと考える不埒な輩がいるのか。

「もし北条が惟宗に通じたら北条を攻撃する大名が欲しいの。そうでなくても味方は多いに越したことはない。上杉以外に北条と敵対している大名はいるか」

「北条と敵対している大名ですと里見・佐竹・結城などですな。奥羽や関東の大名たちを連合すれば北条と同等かそれ以上の勢力にはなるかと思われます」

「よし、北条が惟宗と手を取りそうになったら奥羽の大名たちに惟宗討伐の御内書を送る。それから北条と上杉に和睦と惟宗討伐の御内書を送ろう。余の御内書があれば家中の反惟宗派の声が大きくなろう。晴光」

「はっ」

「上杉・北条の説得はお主に任せる。必ずや成功させよ」

「かしこまりました」

これは大事な役目だ。必ずや成功させねば。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ