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三方ヶ原の戦い?

―――――――――1572年9月20日 浜松城 本多忠勝―――――――――

「もう終わりだ。二俣城も落ちてしまった。織田殿も西三河を制圧しつつある。武田が次に攻めてくるのはこの城に違いない。織田殿と武田が手を組んではもう勝てるわけがない」

「殿っ。何を言われますか。まだ策はあるはず。なんとしてでも持ちこたえて和睦に持ち込むのです」

「そうですぞ。上杉や北条にも使者は送りました。どちらかが動いてくれれば武田は退くはず。そのうえで織田と和睦をするなり戦をするなりすればよいのです」

「動くかのぉ。北条は代替わりしたばかりだし上杉は越中に攻め入ったと聞いておるぞ。それなのに来るのか」

殿が頭を抱えてぶつぶつ呟かれる。いずれも後ろ向きなことばかりだ。それを聞いて皆が何とか殿が前向きになるよう声をかける。いかに皆が諦めていなくても殿が諦められていては意味がない。

「忠勝よ。お主はどう思う」

ものすごい形相で吉信殿がこちらを見てくる。何か言えということだろうな。

「殿、皆の言う通りですぞ。この本多忠勝、どのようなことがあっても殿のお命だけはお守りする所存にございます。ですので皆に武田・織田に勝てと、信康様や御方様の仇を取れと御命じ下され」

「忠勝殿の言う通りにございます。どうか我らに御命令を」

そう言って皆が頭を下げる。

「分かった。皆がそこまで言うならば戦おう。しかし例えどんな手を使ったとしても文句は言うで無いぞ。特に忠勝」

む?儂が文句を?

「勿論にございます」

「ならばよい。では徳川はこれより惟宗につき惟宗の天下のために働く。忠世」

「はっ」

「急ぎ惟宗の元へ行き援軍を求めよ。正信の口添えがあれば何とかなるかもしれん。正信の妻子を養っているお前が適任だ」

「はっ」

なるほど。儂に文句を言うなと仰られたのは正信を頼るからか。ふん、あの腸の腐った奴を頼るのは不愉快ではあるが仕方ないか。とりあえず全てが終わったら正信を一発ぶん殴るぐらいで勘弁してやろう。

「失礼いたします」

いつの間にか正成殿が入ってきていた。

「いかがした」

「武田が二俣城から出ました」

「いよいよか。皆の者、できるだけ時間を稼いで惟宗・上杉・北条のいずれかが動き出すのを待つぞ」

「「「はっ」」」

例え相手が織田や武田であろうとも我らは負けるわけにはいかぬ。

「あ、いえ殿。それが武田は堀江城の方へ兵を進めています。おそらくこちらには来ません」

「は?」

まさかこの城は無視したということか。武田はこの城等放置しておいても問題ないと考えたということだろうか。ふざけよって。

「殿、いかがしますか。背後から襲うという手もありますが」

「このような侮辱は耐えられません。殿、武田を背後から襲いましょうぞ」

「いや、あの武田だぞ。これが罠だったとしたら」

「だとしてもここで出陣しなかったら国人たちが我らを軽く見て武田に寝返ろうとする者が出てくるかもしれませんぞ。ここは罠だったとしても出陣しなければ」

「いや、先程出来るだけ時間を稼ぐと決めたばかり。ここはこの城に籠城をしておいた方がよいのではないか」

皆が口々に意見を言う。しかしどちらの意見もうなずける。罠の可能性も捨てきれないし国人たちへの影響を考えると厄介だ。

「皆の者、静かにせよ」

殿の言葉に皆が静かになる。

「武田がこの城を無視するようなことは耐えがたい屈辱ではある。だが我らは生き残らねばならん。生き残らねば武田に与えられた屈辱を晴らすことも信康の仇を討つこともできない」

「では」

「武田の狙いが分からない以上この城から離れることはできない。正成、織田・武田の情報を徹底的に集めよ」

「はっ」

生きて雪辱をということか。幼少より我慢をされることが多かった殿らしいな。だが武田の動きは妙だな。今回の織田と武田の動きを見れば遠江は武田が三河は織田が取るという密約でも結んでいるはずなのだが。なぜ武田はこの城を捨ておいて奥へ攻め入ろうとしているのだ。まさか武田は織田とも敵対するつもりなのだろうか。いや、あの織田がそれを許すとは思えない。では一体何が狙いなのだ。

「正成、惟宗・上杉・北条に動きはないのか」

「北条は動かないようです。少なくとも兵を集めているような様子はありません。上杉ですが当分は越中平定を優先するかと」

北条・上杉は動かずか。北条はともかく上杉には期待していたのだがな。上杉が信濃に兵を進めれば間違いなく武田は兵を退くはずだ。

「そして惟宗ですが浅井の本拠地である小谷城を落としましたが久政らが比叡山に逃げ込んだようです。当分はそちらの対応に追われるかと。しかし織田領に面している城に兵を集めているようです。浅井との戦が終わったら織田領に攻め入る可能性はあるかと」

「そうか。では出来るだけ早く使者を送った方がよさそうだな。正成、忠世の警護を頼む。必ず惟宗のもとへ届けるのだぞ」

「はっ」

私用により一週間ほど更新をお休みさせていただきます。

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