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加賀一向一揆

―――――――――1572年7月10日 願証寺 顕如―――――――――――

「そうか。加賀の門徒たちが攻め入ったか」

証意の報告に思わず立ち上がってしまった。しかし間に合ったか。大樹からの知らせで惟宗に加賀・越中の兵を使うことが漏れていると聞かされたときは慌てたが何とか朝倉が滅ぶ前に越前に攻め込めたようだな。

「危ういところであった。朝倉はすでに一乗谷城から坂北郡に逃げ延び滅亡は時間の問題であったところだ。朝倉に恩を売るには最も良い時期であったな」

すでに義景に従うものは2000ほどにまで減ったと聞く。惟宗が全力で攻めれば1日も持たなかったであろう。つまり加賀の門徒は朝倉をギリギリのところで救ったのだ。朝倉とは長らく敵対していたがこれでどちらが上かはっきりしたな。惟宗を撃退した後は我らに頭が上がらないだろう。

「して戦況は」

「加賀の門徒だけですので惟宗を撃退するほどの兵力はなく加賀と越前でにらみ合っている状態です。しかしいずれは越中の門徒も参加できますのですぐに越前から追い払うことができるでしょう。また一部の門徒を使って大野郡の景鏡を攻めています。惟宗も景鏡への援軍は送るつもりはないようで1月もせずにこちらの手に落ちるでしょう」

「そうかそうか。いまのところは順調だな。しかし油断はできん。惟宗はまだ動かしていない兵のうち4万を動かすつもりらしい。当てが外れたわ」

「惟宗の兵は銭の兵で恩賞の大部分を銭で賄っているからでしょう。損害を含めて恩賞を出せばあとは人を集めるだけです。そこまで国人の負担になっていなかったのかもしれませぬ。それに国人の負担になっていたとしても惟宗は直轄地が多いですので」

「ふん、気に食わんな」

せめて増援が半分ほどの戦力であれば越中の門徒が加わったところで数の差を使って押し切れたというのに。

「頼周に一気に攻めるよう伝えよ。惟宗の援軍が加われば勝ち目はない」

「はっ」

あとは浅井の内乱が片付けば越前戦は終わったも同然。頼廉に統一を急ぐよう伝えるか。


「失礼いたします」

「頼旦か。如何した」

「武田・織田が三河・遠江へ攻め入りました」

「は?」


――――――――――――1572年7月11日 一乗谷城―――――――――――

「は?織田が三河に攻め入っただと」

頼久からの報告に思わず声が出てしまった。

「本当なのか。あの織田が徳川を攻めたというのか」

「はい。間違いございませぬ。武田と織田の間で使者の行き来が増えていたのは徳川との間を取り持つためではなくともに徳川を攻めるための準備だったようです。いちおうの名目は徳川が我らに通じて織田を攻めようとしたからだそうです」

あの信長がねえ。北畠がどれだけ挑発しても挙兵しないから徳川にしたのかな。

「しかし織田と徳川は娘を嫡男の嫁にするぐらい仲が良かったと思うのだが」

「確かに最初の頃はかなり親密な関係だったようです。しかし織田が本願寺と手を組んで我らと敵対し始めたころから以前本願寺と敵対していた徳川との関係も徐々に悪くなっていきました。先の戦でも今川との戦の最中だったとはいえあまり兵を出さなかったことに織田も不満を持っていたようです」

「そうか」

この歴史では織田と徳川の仲はそれほど良くなかったのか。織田としては対惟宗の戦で徳川の兵を使いたかったが徳川としては本願寺の味方をするのは気に食わない。惟宗がいたせいで織田が西に徳川が東にという訳にはいかなかったとはいえ史実を知っている身としては意外だな。

「それで三河・遠江の戦況はどうなっている」

「武田は25000の兵を率いて青崩峠から攻め入りました。徳川としては武田を自由に行動させては遠江の国人たちが寝返ると判断したため武田本隊に野戦を仕掛けましたがあっけなく撃退され浜松城に撤退しました。今は二俣城を囲んでいます。そこで徳川単独で戦うことはできないと判断したため織田に援軍を求めました。しかし織田は援軍と称して岡崎城に入ると城主で家康の嫡男である信康を討ち取り、城を乗っ取りました。現在は西三河の平定に集中しているため浜松城には攻め入っていないようです」

そうなると当分は持ちこたえるかな。織田の三河平定は最初はかなりうまくいっているけど三河の兵は精強だ。それに家康が何もしないわけがない。上杉とかを動かして武田を引かせようとするだろう。多分こっちにも来るな。

「加賀の門徒たちは今どの辺りだったかな」

「今は大野郡を制圧して戌山城に多くの兵を置いています。越中の兵も合流しましたので4万は超えるかと」

明日か明後日には援軍が到着する。それを待つのもいいがせめて朝倉は潰しておきたいな。それと奇襲で大野郡の一揆勢に打撃を与える。そこからは貞康に任せよう。

「皆を集めよ。軍議を行う」

「はっ」

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