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明智光秀

―――――――――――1572年6月10日 三峰城――――――――――――

「お初にお目にかかります。明智光秀にござる」

「惟宗国康である。面をあげよ」

俺に促されて光秀が顔をあげる。これがあの有名な明智光秀か。京ではなんだかんだであわなかったんだよな。光秀は基本的に織田の相手をしていたから仕方ないか。雰囲気は根暗な秀才って感じだな。だけど義昭と和睦をするときに幕府側の中心人物となったのは光秀だ。聞いた話では光秀が反対する者たちを説き伏せて和睦を推し進めたらしい。意外と行動力があるようだ。まぁ、それくらいできないと信長のもとでは出世できないか。


「それで今日の要件は何かな」

「大樹より和睦を仲立ちをするよう仰せつかりました。この辺りで戦をしまいにしてはいかがかな」

なんだ、何を言ってくるかと思えば和睦か。

「朝倉は光秀が以前仕えていた家だったな。昔の縁を使って義景に縋られたか」

「いえ、これは大樹の御意思にございます」

「左様か。それで和睦をするとしたらどのような条件かな」

「朝倉殿は一乗谷を受け渡し、惟宗殿は朝倉殿が吉田郡・坂南郡・坂北郡の領有を認めること。それだけです」

吉田郡・坂南郡・坂北郡の領有か。だいたい25万石ぐらいになったかな。もともとと比べると少ないが負けている方が要求するにしては多いな。


「論外だな。あと一月も戦をすればそれらの領地は手に入れることができる。わざわざ和睦を受け入れる理由はない」

「では吉田郡はお譲りします。それでいかがでしょう」

「断る。認めるとしたら義景の切腹と越前の譲渡のみ。朝倉の時間稼ぎに付き合うほどお人好しではないぞ」

「時間稼ぎなどするつもりはございません。ただ、大樹がこれ以上民を苦しめるのは見るに堪えぬと仰られたからこのように和睦の仲立ちに参ったのです」

「先の戦で民のことなど全く考えずに挙兵された方とは思えない言葉ですな」

俺が荷止めをしたというのもあるが義昭が挙兵したせいで畿内の物価は暴騰した。そのせいでどれだけの民が苦しんだと思っているのやら。


「光秀、はっきり言っておくが朝倉の狙いはすでにこちらに露呈している。これ以上朝倉を庇うのであれば大樹もこの件に絡んでいると判断するがそれでもよいか」

「朝倉の狙い?はて、なんのことでしょうか」

本当にわからないというように光秀は首をかしげる。本当に知らないのか?いや、あの明智光秀だぞ。これくらいの嘘をついてどれだけ情報が漏れているか確認するつもりなのだろう。

「一乗谷城に籠もり始めてからはあまり連絡を取っていなかったようだが加賀・越中の一揆勢と連絡を取っていることは知っている。おおかた農閑期になったら越前に攻め込み我らを追い払う算段なのだろう」

「しかし加賀・越中の一揆勢は上杉と戦をしています。そのような余裕はないでしょう」

「とぼけるのも大概にしてほしいな。大樹が顕如の要請で加賀・越中の一揆勢と上杉の和睦の仲立ちをしているだろう。知らないとは言わせないぞ。まさかとは思うが再び惟宗を潰すべく動いているのではあるまいな」

というかほぼ確定だな。武田が妙な動きをしているらしいが北条・上杉が動けば抑え込めるだろう。その上で織田と本願寺の力で浅井の内乱を終わらせて再び反惟宗同盟を作り上げる。それまでの時間稼ぎのために朝倉が必要なのだ。加賀・越中の一揆勢と上杉の和睦を仲立ちしたのも加賀・越中の一揆勢を対惟宗に使うのが狙いだろう。それと上杉に恩を売って加賀・越中が突破されたときのための備えかな。唯一動きが読めないのは武田だが惟宗と武田の間に織田がある以上すぐには来ない。それに徳川と揉めているから攻めるとすれば徳川だろう。実際にそのような動きはあるらしい。そうなると織田が武田の敵に回る。織田にとっては反惟宗連合どころではなくなるだろう。さっさと徳川に攻め入らないかな。


「そのようなことはございませぬ。万が一本願寺がそのようなことを考えていたとしても大樹とは関係のないことにございます」

「そうか。大樹は関係ないか。ではこの戦も大樹には関係ないだろう。和睦は受け入れん。話は以上だ」

「しかし」

「くどいぞ、光秀。もう話は終わった。大樹にはこれ以上惟宗の行動に口を挟むなと伝えよ」

これで本願寺に加賀・越中の一揆勢を使うことがばれていることが伝わるだろう。かなり強引な手を使ってくるかもしれないな。念のため4万ほど新しい兵を呼び寄せるか。そしてそのうちの2万は浅井を潰させよう。もちろん長政派も久政派もだ。いや、比叡山とか堅田の門徒が関わっているから誰かに任せるのは不安だな。越前制圧と加賀・越中の一揆勢の備えに5万を置いて残りの3万を俺が率いて北近江に攻め入ろう。その頃には武田や本願寺・織田も動き出しているはずだ。よし、留守を任せている貞康に手紙を書くか。そして5万の兵を率いるのは貞康に任せよう。そろそろ大軍を率いることにも慣れさせないと。家督はいつぐらいに譲るかな。やっぱり天下を統一してある程度体制を整えてからしよう。そのあたりは今のうちに考えておかないとな。

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