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分裂

――――――――――――1571年8月1日 八上城―――――――――――――

「浅井が割れた?」

頼久の報告に思わず声が出てしまった。しかしどういうことだ?

「長政と久政の意見があっていないと聞いていたがそこまでだったのか」

「どうやら援軍を求める朝倉の使者が浅井に行ったようです。しかし長政が援軍を送らず惟宗に付くべきと主張したため、朝倉へ援軍を送るべしと主張した久政が長政を幽閉し当主に返り咲きました。ですが一部の長政派の家臣たちが長政を救出。今は遠藤直経の居城である須川城に匿われています」

「長政の嫁の市姫は」

「長政と行動を共にしていますが信長からの指示ではなく自らの意志のようです」

「そうか」

浅井で内乱か。丹波を制圧して次は越前だ。どちらかと言えばいい知らせだな。長政が家督を継いだときは久政を強引に隠居させたらしいが今回はその逆か。

「それで久政は援軍を送るのか」

「難しいでしょう。長政に味方した国人は数こそ少ないですがいずれも有力な国人たちです。どちらかが内乱を治めない限り浅井が外に兵を出すことはできないかと」

朝倉に援軍を送るために長政を幽閉しようとしたら内乱になって結局は援軍を送れないのか。本末転倒だな。どうせ長政を当主の座から追いやるのなら殺しておけばよかったのに。まぁ、俺が同じような状況になれば殺せなかっただろうな。貞康が生まれる前だったら普通に実行しようと思ってもおかしくなかっただろうが人の親になると変わるものらしい。

「では俺が介入しない限り浅井の内乱はそう簡単には終わらんだろうな」

織田は武田が遠江に攻め入らないように何とか交渉して抑えているらしい。武田としては上杉・北条を攻めるより徳川を攻めた方が圧倒的に楽なのだから攻めたい。織田としては俺と敵対する可能性がある以上武田と敵対したくないが徳川が敵に回るのも厄介。うまく交渉で纏まればいいけどな。

「いえ、どうやら義昭が比叡山を動かそうとしています。比叡山の門徒を使って久政を援助しようと。比叡山も親惟宗派が近江にいるのは面倒だと判断して多くの金銀をもらって僧兵を動かすようです。それと堅田の本願寺門徒も久政方につくようです」

「俗物が。僧侶が金銀に踊らされてどうする」

「いかがしますか。比叡山の門跡である覚恕法親王様は帝の弟君ですぞ。それに比叡山は天台宗の総本山です」

覚恕法親王様に実権はないだろうが対応を間違えたら朝廷との関係も悪化するな。これだから俗物の僧侶は嫌いなんだ。もう少し高潔になれよ。天下を統一したらそのあたりもしっかりさせないとな。朝廷に頼んで覚恕法親王様を還俗させよう。対価は新しい宮家の創設。それに関わる費用は惟宗が持つと言えばなんとかなるかもしれない。康興と康広にその辺りの調整を命じておくか。覚恕法親王様の還俗を待って比叡山を焼き討ちにする。ついでに比叡山の近くにいる堅田門徒も潰そう。堅田は湖上交通の要所だ。本願寺なんかの勢力範囲に入れておきたくない。

「それで朝倉はどうするつもりなのだ」

「浅井が内乱になったことですぐに北近江は惟宗の物になると思ったのか義景が一乗谷に戻りたがっています。家臣たちが何とかして説得しようとしていますがそのうち一乗谷に戻って閉じこもるかと」

「こちらに寝返りそうなものは」

「一門衆の朝倉景鏡が寝返りを約束しています。それと富田長繁・前波吉継・毛屋猪介らがこちらにつくと」

この辺りは史実通りのメンツだな。

「寝返りの話を朝倉に流せ。朝倉も内乱状態になれば浅井が立ち直る前に潰せるだろう」

「よろしいのですか」

「構わん。富田ならばわからないでもないが一門でありながらこちらに寝返ろうとする景鏡など信用できん。少なくとも使おうとは思えん。それならば囮に使った方がよい」

「はっ。すぐに手配しておきまする」

越前を制圧した後はどうするかな。南は武田・徳川の間に立って交渉中の織田と内乱中とはいえ浅井が、北には百姓の持ちたる国である加賀がある。誰に任せるか迷うな。無難に康正にするか。あいつなら無理をしようとはしないはずだ。3万の兵を預けておけばそう負けることはないだろう。ま、細かいところはあとから考えよう。まだ越前を制圧したわけではないのだ。越前を制圧するには最低でも半年はかかるだろう。細かいところは来年以降に持ち越しだ。その間に浅井の内乱が終わっているかもしれないし織田も参戦できるようになっているかもしれない。

「武田・徳川の話し合いはどう纏まりそうか」

「武田がかなり強気に出ていますのでなかなか纏まらないかと。北条氏康が病に伏せているのが武田の強気の理由でしょう」

「北条が動かず上杉も越中に釘づけ。確かに徳川と戦をするにはちょうどいい時期だな」

「織田家の中には先に武田を攻めるべきだという意見や徳川を見捨てて武田と同盟を結びなおせばいいという意見もあります」

織田が徳川を見捨てる?武田としても織田と敵対するのには二の足を踏むだろう。織田と敵対するぐらいなら氏康が死ぬのを待って北条を攻めたほうがいい。東は武田、西は織田でということだろうか。だがあり得るかな?

「監視の人数を増やせ。動きがあれば些細なことでもすぐに報告せよ」

「はっ」

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