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北畠氏

――――――――1570年5月30日 大河内城 北畠具教―――――――――

「ええい、放さぬか。おい、茶筅丸様をそのように雑に扱うでない」

そう言いながら織田忠寛と茶筅丸が連れてこられる。

「不智斎様、中之御所様。これはどういうおつもりか。このことが織田家に知られればお二人のお命だけでは済まされませんぞ。北畠は間違いなく潰されましょう。今なら間に合いまする。茶筅丸様と某の縄をほどいてくだされ」

「ふん、お前たちの縄を解くのはお前たちを殺してからだ」

「なんと。織田家を裏切られるおつもりか。今の北畠に織田に勝つだけの力があると御考えか。いや、まさか惟宗の調略がありましたな」

どうでもいいところは察しがよいな。しかし今更分かったところでどうする。

「御止めなされ。惟宗は幕府に歯向かう罪人ですぞ。そのような者に手を貸したとなれば北畠家の恥となりましょう」

「北畠は足利の幕府に最も抵抗した家の一つぞ。何が恥となろうか。むしろ御先祖はようやっと足利を滅ぼすことができると御喜びであろう」

「しかし勝てるとお思いか。尾張の兵や長島の一揆がすぐに攻めよってきますぞ。惟宗がそれを助ける余裕があるとは思えない」

「ほう、果たしてそうかな。河内の三好は様子見に徹している。大和の松永は惟宗の援助を受けた筒井に押されている。本願寺は惟宗本隊4万に囲まれて身動きが取れていない。畠山の内乱は惟宗が介入したことで一気に秋高の方が有利になった。それに比べて織田は何をしている。和泉の惟宗を攻めるが未だ碌に城を攻め落とせていない。落とせたとしても京に退いたらすぐに奪い返されている。丹波の波多野らは赤井に押されているらしいな。丹後の一色も惟宗に攻められている。いずれは滅びよう」

この機に乗じて惟宗の力を借りつつ北畠の領地を広げるのだ。北畠は名門中の名門。惟宗が天下を取ったとしても十分な地位に付けられるだろう。足利の天下の時のようなことにはならない。


「中之御所様はいかが御考えなのですか」

儂を説得することは無理だと見たのか次は倅の方を説得し始めた。

「父上が決められたことだ。私はそれに従う」

「それが北畠を滅ぼすことになったとしてでもですか」

「そうならぬように私がついていく。私の頸を差し出せば何とかなろう。出来損ないの私にできるのはそれくらいだ。鳥屋尾、連れて行け」


―――――――――1570年6月10日 二条城 大舘晴光――――――――――

「和睦だと!?ふざけるなっ」

光秀殿の言葉に大樹が怒られる。他の皆も口々に明智殿に対して罵声を浴びせられている。

「大樹、織田はすでに京から離れる決意を固めました。このままでは織田領の北伊勢・尾張に攻め込まれかねないからです。しかし織田殿がいなくなって我らに戦えますか。浅井・朝倉だけで戦えますか。無理でしょう。浅井・朝倉でせいぜい2万も動かせるかどうか。対して惟宗は別働隊だけでそれと同程度以上の兵を動かせるのですぞ。しかも浅井・朝倉は百姓の兵ですので場合によっては織田とともに帰ってしまう可能性が。実際、配下の者に調べさせたところ朝倉の兵たちにはすぐに領地に戻ると聞いたと言っていたものもいます」

「だから何だ。伊勢の惟宗は長島の本願寺派を動かせば何とかなる。それで織田を説得するのだ」

「本願寺はそれどころではありません。石山が攻められていつ落ちてもおかしくありません。噂では石山の兵糧も惟宗の大筒で焼けたとか。すでに本願寺は二条様を動かして朝廷の仲介という形で和睦をしようとしています。長島を頼ることもできないでしょう」

あの本願寺が和睦だと。大樹が考えられた反惟宗勢力の筆頭だぞ。織田と本願寺が下りれば負ける。

まわりを見ると皆も同じことを考えたのか顔が青ざめている。

「いまならばまだ有利な条件で結ぶことができます。あの惟宗も10万以上の軍勢で1年も戦うのはさすがに厳しいでしょう。国康とてそう長くは戦をしたくないはずです。和睦をするならば今しかないかと」

「しかし惟宗が受け入れるとは思えん」

「朝廷に仲介して頂きましょう。朝廷も今年は惟宗からの献金がなかったせいで随分と苦しんでいるとか。なんとしてでも惟宗からの献金を得るために何としてでも説得するでしょう。必ず受け入れます」

「だがのぉ」

ここで惟宗と和睦をしては諸大名はどう思うだろうか。あれほど大げさに惟宗討伐を叫んでおきながらできなかったのかと思うに違いない。一気に大樹の権威が落ちるだろう。それでは惟宗の権勢がまた大きくなるだろう。それではいかん。

「大樹、某は反対ですぞ。まだまだ持ちこたえることはできます。そのような状態で和睦など」

「大舘殿、持ちこたえれるでは意味がないのです。勝てなければ意味がないのです」

「だからと言ってこちらから和睦を請うというのは大樹の権威をいたずらに貶めるだけです。それで大樹の望まれる征夷大将軍による親政が出来るようになるのですかな」

「そうなるように交渉するのです。多少は譲歩しなければならないこともあるでしょうが以前よりはよっぽどましでしょう。今であれば織田殿も和睦に協力すると言っています。今は和睦をしていずれ再び惟宗を討つために力を蓄えるのです。どうか御決断を」

そう言って光秀殿が深々と頭を下げる。

「・・・分かった。全てお主に任せる」

「ははっ」

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