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朝倉上洛

――――――――――1570年4月1日 二条城 大舘晴光――――――――――

「長らくお待たせしてしまい申し訳ございませぬ。朝倉義景、8000の兵を率いて参上致しました。どうぞ存分にお使いくだされ」

「うむ、よく来てくれた。面をあげよ」

「はっ」

大樹に促されて義景殿が面をあげる。あまり武家らしくない雰囲気を持った方だ。大樹は随分と頼りにしていたが本当に頼りになるのだろうか。戦では本人以外が指揮をすることも多いと聞く。少なくとも織田殿のような勇猛果敢な方ではない。それは朝倉に匿われていたころにも感じたことだ。当時はあの三好が相手なのだから仕方がないかと思っていたが織田殿の対応を見ると少し臆病な気がする。だが大樹は頼りにされている。おそらく織田だけでは惟宗に勝つことはできないと思われているのだろう。今は大丈夫だが浅井にもいずれ無理が来るだろう。そんな中での援軍はありがたい。あぁ、それと織田が活躍しすぎるのもあまり好ましくないだろう。第二の惟宗になる恐れがある。大樹が二度も同じことがないようにするのは当然のことだ。

「では義景には京の守りについてもらう。そして織田・浅井・松永の兵で一気に和泉を攻める。今までは赤井を気にして兵をいくつか置いていた。そのせいで和泉では兵の数では勝っていながらなかなか平定が進まなかった。だが朝倉が味方してくれればもう勝ったも同然。和泉を制圧し摂津に攻め入っている惟宗国康の頸を取るのだ」

「大樹、そのことですが」

そう言い始めたのは明智光秀だ。大樹が朝倉に身を寄せていたころに仕えはじめ、主に織田との間に立って働いている。

「兵糧の値が上がってきております。すぐに織田・浅井・松永の兵を使って戦をということは難しいかと」

「なに?そこまで深刻なのか」

「はい。惟宗が堺を押さえているためそちらからの米が回ってこないのです。堺を奪い返そうにも惟宗が多くの兵を置いているためうまくいかず」

堺は和泉・摂津の境にある。惟宗にとっては重要な場所が敵のすぐそばにあるのだ。多くの兵を割いてでも守りたいのだろう。堺の攻略は本願寺に頼むか?いや、今の本願寺は惟宗本隊に攻められているところだ。とてもではないが堺を攻める余裕はないだろう。門徒を使う手もあるが堺には切支丹もいる。すぐに制圧できるはずがない。第一、堺を戦場にすることを商人が嫌がるだろう。もしかしたら制圧しても協力を得られないかもしれない。

「美濃・尾張・近江から兵糧を集めていますがまだ時間がかかるかと。それに惟宗が大和は筒井を利用して混乱させようとしています。松永殿も動けませぬ」

「そうか。ではいつになったら動ける」

「次の刈り入れが終わってからになるでしょうか。その頃には浅井殿も近江に戻らねばならないですので」

「むむむ、分かった。朝倉の兵糧は大丈夫なのか」

「はっ。問題ございませぬ」

朝倉は戦をしていなかったらかな。兵糧には余裕があろう。だが6万以上の兵を養うほどの量はないと思うが。

「其の方らは丹波衆・丹後衆の援護に向かえ」

「はっ」

大樹は止まるつもりはないようだな。惟宗に息をつかせないようにということだろう。そして息切れを待って一気に攻められるおつもりなのだろう。かなり厳しい戦になるだろうが必ずやあの商人もどきの頸を大樹の前に置いてみせるぞ。


―――――――――――1570年4月10日 有岡城――――――――――――

「朝倉がついに上洛したか」

「はっ。その数は約8000。総大将は朝倉義景本人が務めます」

俺の言葉に頼久が反応する。摂津を攻略しているという時に面倒な。


播磨を制圧して摂津に攻め込むときに康胤から但馬を制圧したと報告があった。当主の山名祐豊は一色を頼って丹後に落ち延びたらしい。康胤にはそのまま丹後を攻めるよう命じておいた。これで丹波の赤井も守りから攻めに出ることもできるだろう。これまでは波多野に攻め込まれてそれを追い払い逆に攻め込もうとすると一色が赤井領に攻め入り、一色を攻めると波多野が攻めてきたこともありまったくうまくいっていなかった。だが一色を攻めることで赤井も波多野攻めを行えるだろう。だが信用できるよな。前久の縁で味方に付くと約束してくれたがどうだろう。念のため警戒するよう康胤に言ってある。康胤であればそう簡単には負けないだろう。


「では和泉への総攻撃を行うのか」

「いえ、丹波・丹後の反惟宗派の援軍に向かうようです。織田らは兵糧がうまく集まっていないようで」

それはそうだろうな。美濃・尾張・近江がどれだけ豊かであったとしても織田は北畠との戦からずっと戦っているのだ。それに堺の商人を使って周辺の米などを買い占めている。いま反惟宗派についているところは朝倉を除いて米の高騰に悩んでいるだろう。

「和泉といえば根来衆の一部がこちらに付くと康正から報告が来た。信用できるのか」

「大丈夫でしょう。康正殿がすでに杉乃坊がこちらに付いたと噂を流しています。これにより反惟宗には雇ってもらえないでしょう」

「そうか、10万石で召し抱えると伝えておくか」

根来衆が一部とはいえこちらに付くのはうれしいな。しかも俺が召し抱える形にすれば他所の大名に使われることはない。雑賀衆がいなくなれば鉄砲で惟宗に勝てるところはそうないだろう。

「畠山の内乱はまだ終わっていなかったな」

「はい、秋高がかなり押されていますが」

「今回こちらに付いた根来を向かわせよう。それで随分と楽になるだろう」

「左様ですな」

紀伊が落ち着けばそこから伊勢に入って直接尾張を攻めるという手もあるだろう。本拠地を攻められたらさすがの織田でも京から撤退せざるを得ないだろう。その間に摂津を制圧する。兵糧が少なかったとしても6万は脅威だ。背後に大軍がいるなか本願寺攻めは行いたくない。そうだ、安芸の兵は紀伊に送ろう。そして伊勢・尾張に攻め込ませる。織田さえ撤退すればこっちの勝ちだ。あとは織田が戻ってこないうちに畿内を平定して義昭を追放する。これでだいぶ楽になるだろう。武田・上杉がどう動くか分からないが近江・越前に兵を進めるうちにどうするか分かるだろう。よし、とりあえず紀伊平定を待つか。

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