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反惟宗連合1

―――――――――1569年7月1日 仏護寺 下間頼照――――――――――

「頼照殿が言われるようにすぐに門徒たちとともに一揆をおこすべきだ」

休むために用意された部屋を出て適当に歩いているとどこからか議論をしている声が聞こえてきた。どうやら先程儂が顕如様のご意向である一揆をおこすかどうか話をしているようだな。そのような議論など無駄であろうに。さっさと一揆をおこせばよいのだ。

「いや、国康様は宣教師たちが好き勝手していたのを抑えて下さったのだ。我らはこのままでいいのではないか」

ふん、抑えたはいいがそれだけだろう。


「だからと信用できるのか。本願寺に石山から出ろと言ってくるような輩だぞ」

「そうだ。それに我らは惟宗に信用されていない。上洛戦の時に兵を置いていたのは知っているだろう。信用されていない相手を信用できるわけがない」

そうそう、信用していないし信用されていない。そのような仲で手を結べるわけがなかろう。さっさと一揆をおこして安芸を加賀のような浄土真宗の国にするのだ。

「信用されていないのであれば信用されるような行動をとるべきだろう」

「そもそも門徒たちは一揆に賛成するだろうか。惟宗が安芸の支配者になったことで最も喜んでいるのは門徒たちだぞ」

「そうだ、年貢も下がり関所も廃された。これが前の状態に戻ることを望んでいるとは思えん。それにどうやら最近加賀の一揆の事が噂になっているのだが門徒たちがあまりいい扱いを受けていないという内容だった。それを門徒たちが真に受けて嫌がるかもしれん。それに別に浄土真宗を禁教にしているという訳ではないのだ。参加しない可能性が高いぞ」

御仏の教えを学んでいるとはいえ所詮は農民。極楽浄土に行くよりも現世での利益を優先するか。


「それは我らが惟宗と変わらない年貢しかとらないと説得すればよかろう。宣教師どもが我らを悪くいっていたことは皆知っているはず。それをかばっている惟宗に仏罰をといえば皆喜んで一揆に参加するはずだ」

「そもそもだ。惟宗と敵対して勝てるのか。上洛戦の時は合計10万以上の兵を動かしたのだぞ。京を押さえて帝や大樹の信頼も厚いはずだ。間違っても敵に回すべきではない。むしろ我らはあの頼照殿を惟宗と協力するよう説得する方がいいのではないか」

「いや、帝はともかく大樹からの信頼はそこまでないと思うぞ。惟宗が観能の会の時に演目を減らしたことを不満に思っておられるらしい。それに天下が落ち着くのであれば義栄様でも義昭様でもどちらでもいいと言ったらしい。三好攻めの時に惟宗が阿波公方様を味方に付けたら大樹にとってかなりの脅威になるのではないか。それを理由に諸大名たちを動かそうとする可能性だってある」

ほう、大樹を動かすか。田舎の僧侶にしては面白いことを考える。

「しかしなぁ。動くのか、諸大名が。義昭様が将軍になるために上洛をしてほしいと各地の大名に手紙を送ったのに誰も動かったのにか」

む、それもそうか。


「頼照様。いかがされましたか」

後ろから急に話しかけられて驚いて振り向くと儂を案内した僧侶がいた。あの話し合いに加わっていないところを見ると最近この寺に入ったのかもしれんな。

「いや、少し散歩をと思ってな。それよりええっと。すまん、名は何と申したかな」

「円月にございます」

「円月か。其方は一揆のことどう思う。遠慮はいらん。思うところを述べよ」

「はっ、某は三好討伐のため惟宗が四国にわたった時こそ好機。久留米城以上の堅城と言われている広島城を乗っ取るのです。そこは国康の新しい居城になると言われている城ですので兵糧も大量にあるはず。広島城を乗っ取り籠城していれば1年は持つでしょう。その間に各地で反惟宗運動が起きるでしょう。それに惟宗が手間取ればこちらのもの。一揆に門徒たちを使って安芸を制圧するのです」

「ほう、なかなか面白い策を考えるな。しかし惟宗と敵対するのに反対している者たちもいるぞ」

「まずは賛成している者たちだけで事を起こすのです。某の調べでは広島城の兵はせいぜい2000ほど。賛成派だけで十分攻め落とすことができます。ことを起こしさえすれば反対している者たちも腹をくくるでしょう。それでも反対する者がいれば御仏に逆らう仏敵として処罰すればよろしいかと」

なるほど、引き返せないところまで引きずり込むということか。そしてこのような策をすぐに思いつくところを見るとなかなかの拾い物だったかもしれんな。

「賛成派の門徒はどれほど動かすことができる」

「8000は手堅いかと」

「よし、其方の策を採用しよう。夜半に賛成派を儂の部屋に集めるのだ」

「はっ。それと私の伝手を使って城の様子を調べさせましょう」

「頼むぞ。もしうまくいけば顕如様に良い報告ができる。もちろん其方の事も書いておくぞ」

「ありがとうございまする。必ずや良い報告を持ち帰って参ります」

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