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上洛戦3

――――――――1568年8月25日 飯盛山城 三好長逸―――――――――

「まずいですな」

「まさかこれほど早く播磨を制圧するとは」

儂の言葉に友通殿が答えられる。宗渭殿は四国に戻り守りを固めている。

「制圧とはいっても政秀を潰しただけですがな。しかし播磨の国人どもが加わったせいでこちらに来る兵が増えてしまった。このままでは四国に帰れないぞ」

「分かっています。義昭様が頼った織田も上洛のため準備をしているとか。おそらくそのうち六角に使者を送るでしょう。織田だけであったらこちらが言い聞かせればおとなしく織田と戦をするでしょうが惟宗もいるとなると」

「二の足を踏むか。しかし義昭様が六角を許すのか。あの義昭様だぞ」

「ふむ、確かにそうですな。そこを中心に六角が織田と敵対するよう説得しておきましょう」

義昭様は何でも自分の思い通りにしないと気が済まない人だ。六角に追われたことを恨んでいたらそう簡単に許して上洛の兵に加えるとは思えん。


「しかし惟宗が攻めてくるのがもう少し遅ければ義栄様に将軍宣下が行われていたでしょうに。そうなれば惟宗は将軍に歯向かう逆臣にすることができたのですが」

「おおかた山科の縁を使って邪魔をしたのでしょう。それから一条家も。今回の上洛戦では嫡男だけでなくあの双子もつれてきているとか」

「あぁ、大友の家督相続を認めてもらうためと一条家への養子入りでしたな。しかしまだ7歳の子供を連れてくるとは。舐められたものですな」

「まぁ、初陣を飾らせるのではなく本当に連れてきただけみたいですが。国康が同じ年に初陣を飾ったというのもありますから戦場の雰囲気をと考えたのかもしれませんな」

しかし普通ならそんなことはしないだろう。なんというか大成する人は考え方が違うのかもしれんな。


「それよりこれからどうする。織田ならともかく惟宗が摂津に攻め入ってくれば我らは四国に戻れんぞ」

「分かっています。畠山や松永がどう動くか分からない以上さっさと四国に戻るのが一番なのですが義栄様が腫物のせいで動けませんぞ」

「さすがにここで義栄様を置いて逃げるという訳にはいかんな。かと言って義栄様のいる堺に留まるのも得策ではない。あの惟宗が堺を取ろうとしないはずがない」

「義栄様がいなければ四国に逃げてもいいのだが・・・死んでもらうか」

「仕方ないな。表向きは病死でいいだろう。医者もいつ死んでもおかしくないと言っていた」

「ではすぐに手配しましょう。友通殿は六角の説得の方を頼みます」


―――――――――1568年8月27日 立政寺 村井貞勝―――――――――

「何を言うかっ」

義昭様に怒鳴られてすぐに頭を下げる。まったく、なぜ儂がこのようなことをしなければならんのだ。

「貞勝殿、六角は義昭様を裏切って三好に付いた逆臣。それを許せというのは少し無神経な申し出ではござらんか」

三淵藤英が義昭様に代わって尋ねてくる。儂としては弟の藤孝殿の方に話を振ってほしかったのだがな。残念ながらまともに話が通じそうな方はいないようだ。


「されど六角を味方に付ければ惟宗殿とともに三好を挟み撃ちにすることができます。惟宗殿は三好の本拠地を攻めているので、三好はすぐに四国に撤退するでしょう。そうなれば義昭様の上洛は成功したも同然です」

「だからと言って六角を許すというのはどうでしょうか。それでは義昭様が征夷大将軍になったとしても舐められるだけではないですかな。それでは天下は安定しません」

「六角を許したからと言って舐められるということはないでしょう。むしろ義昭様の寛大さを天下に知らしめることができるかと」

「寛大さより武威を示すべきでしょう。それとも織田殿は逆賊である六角に勝つこともできないのですかな」

「そのようなことは」

いかん、この調子では説得できそうにもない。かといって殿にそう報告すればなんと言われるか。殿としては惟宗殿よりも先に京に入り主導権をとお考えなのだろうが・・・。


「貞勝、余は征夷大将軍になるのだ。それなのに一度も戦をしないというのはおかしいではないか。惟宗は一月もせずに備前・播磨をすでに制圧したのだ。六角など恐るるに足らず。必ずや逆賊六角を叩き潰すのだ。これは命令ぞ」

なにが命令だ。そもそもそんな権限はまだないだろう。だいたい六角を潰したいのも己のためだろう。惟宗が一月で備前・播磨を制圧したといっても国人たちが惟宗の下についただけであまり変化はないではないか。潰されたのは浦上と赤松の分家だけ。それと六角を一緒にするんじゃない。

「よいな、必ず六角を潰すのだ。しっかりと信長に伝えておけ」

「なれどそれでは」

「くどいぞ。お前はこのことを信長に伝えればよいのだ」

「・・・はっ」

はぁ、なんでこのような男を将軍にせねばならんのだ。あぁ、殿にまた怒鳴られるのだろうな。憂鬱だ。惟宗が義昭様のために働きつつも一度も惟宗領内に入れなかったのはこのせいだろうか。

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