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暗殺

―――――――――――1566年9月25日 久留米城―――――――――――

「御屋形様、失礼いたします」

そう言って康正が入ってくる。

「おぉ、待っていたぞ。菊王丸は元気にしているか」

「はい。この間も虎千代君や辰千代君と手習いをしていましたが景轍玄蘇が呑み込みが早いと褒められたと言っていました」

康正はどうやら親馬鹿になりそうだな。

「そうか。いずれは貞康を助けることになるのだ。楽しみにしているぞ」

それに比べて虎千代や辰千代だ。どうやら継ぐ家は逆の方がよかったらしい。虎千代は武芸にあまり興味を示さず和歌や蹴鞠の方ばかりしている。辰千代はその逆だ。これで武家の名門である大友家や摂関家の一族である土佐一条家を継ぐことができるのかどうか。心配だらけだな。そろそろ傅役を考えないと。辰千代は和歌とかを覚えてほしいから頼安に任せようかな。確か連歌を嗜んでいたはずだ。あ、でも、あいつは貞康の傅役か。じゃあ康興にするか。たしかあいつも連歌をしていたはず。虎千代は大友の家督を継ぐのだから元大友家臣がいいだろう。だけど元大友家臣は有能だからあまり引き抜けないな。隠居していて貞康の助けをしてくれる知識を教えれる奴。そんなやつは・・・そうだ、角隈石宗にしよう。あいつは義鎮にキレて隠居したんだ。暇だろうしまだ何かしたいと思っているはずだ。よし、そうしよう。さっそく明日にでも命じよう。

「お二人ともまだ5歳です。いずれ名門を継ぐ自覚が出てくるでしょう」

「だといいのだがな。辰千代はいずれ上洛して一条本家の養子となるのだ。そこで恥をかくような真似だけはしてほしくないのだが」

そんなことになれば恥をかくのは辰千代だけではない。それを分かっているのかな。

「まぁ、まだ先の事だ。それよりもう少し手前の事の話をしよう。貞康の事だ。元服もしたしそろそろ嫁を考えねばならん。だが惟宗の嫡男の嫁だから慎重にせねばならん」

今回康正を呼んだのはそのことだ。他の家臣だと自分の娘をと言いかねないから相談できないんだよな。

「そうですね・・・公家からとりますか」

「いや。惟宗が畿内を制しているなら考えたがまだ九州と山陰・山陽の一部だ。公家より武家を重視したい。かと言って惟宗は天下を目指すのだ。その時に敵に回る可能性がある大大名では不安だ」

「では尼子なんかは論外ですな。あれを倒さない限り惟宗の天下はないでしょう」

よく分かっているじゃないか。そうなんだよな。尼子・三好以外で畠山のような守護大名も無理だし。やっぱり公家かな。

「まぁ、まだ17です。もう少し様子を見てからでもいいでしょう。それより側室の件はどうなったのですか」

「あぁ、それもまだ終わってなかったな。いちおう探してはいるのだが」

なかなか安心して迎えれる娘はいないんだよな、

「阿蘇はいかがですか」

「娘がおらん」

「千葉は」

「おらん」

「島津はどうですか」

「いてもまだ幼い。側室など無理だな」

「大友系の家臣たちは」

「正室も元大友家臣の娘だぞ。元大友家臣が優遇されていると勘違いする馬鹿が出てきかねない」

「西園寺は」

「娘というか子がおらん」

「肥後の国人たちは」

「あれはなぁ、検地の時に不快そうだったと聞いている。どうも信用できん」

「河野はどうですか。あそこは信用できますぞ」

「あそこも子がおらん」

改めて考えるといいのがいないな。

「別に今あげた者たちの実子である必要はないでしょう。今あげた者たちの重臣の娘を養子にして嫁がせればいいのでは」

「しかし嫌がらんかな」

「たぶん大丈夫でしょう。少しでも惟宗と縁を深めておきたいと思うはずです」

「そうか、そっちの方でも考えておこう」

「よろしければ私が探しましょうか」

「いや、しかし・・・分かった。頼んだぞ」

弟が兄の側室を探すなんてかなり違和感があるがさっさと見つけた方がいいな。


その後は雑談をしてそろそろ康正が下がろうとしていると外が騒がしくなってきて、千寿丸が入ってきた。

「御屋形様」

「千寿丸か。いかがした」

「頼久殿より御報告です。備前に攻め入っていた尼子義久殿が討死されました」

「なにっ」

義久が討死しただと!?確か2万の兵で宇喜多・浦上領に攻め入っていたはずだ。対して宇喜多・浦上は備前一国だ。せいぜい7000だろう。そう簡単に負けるとは思えないのだが。

「詳しくはこちらの書状に」

そう言って懐から書状を取り出して渡した。すぐにそれを開いて読む。

「千寿丸。すぐに皆を集めよ。それから兵もだ」

「はっ」

「御屋形様、書状にはなんと」

「どうやら宇喜多が義久殿を暗殺したようだ。それで混乱している尼子勢に奇襲を仕掛けて3000以上の損害が出ている」

書状には実行者の名前は書いていなかったがたぶん遠藤兄弟だろう。確か史実でも似たようなことがあったはずだ。

「暗殺ですか」

「卑怯ではあるがまともに戦った時の損害を考えるとそれが最善ではあっただろうな。宇喜多はそうやって大きくなっていたはずだ」

「梟雄ですな。ところで兵を集めると言われていましたが尼子の援軍に?」

「いや、尼子が混乱しているうちに備後・備中を攻め取る。尼子は惟宗への礼金を払っていないのだ。攻められても文句は言えんだろう」

これを機会に上洛のための道を確保しておきたいな。尼子さえいなくなれば後は備前と播磨だ。一気に上洛が現実的になる。

「なるほど。尼子が混乱しているうちにですか。御屋形様も宇喜多に負けないほどの梟雄ですな」

「最高の褒め言葉だな」

そうだ。宇喜多攻めの時の口実は宇喜多が俺を暗殺しようとしたと言うことにしよう。多聞衆か世鬼に暗殺する振りをさせるか。

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