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足利覚慶

―――――――1565年11月21日 矢島御所 細川藤孝―――――――――

「ふむ、なかなか良い場所でおじゃるの」

「お褒めの御言葉、痛み入ります。承禎殿と義治殿にもお伝えしておきまする」

覚慶様が周りを見渡して満足そうに頷かれると惟政殿が頭を下げられる。惟政殿は六角の被官だった時期もあるから親しくしているのだろう。しかし六角殿がこれほどよくしてくれるとは思わなかった。観音寺騒動のせいで最近は勢いが衰えてきていた。そのこともあるから三好に逆らわないよう我らを受け入れないかと思っていたがそうでもないようだな。余計な心配だったか。

「ところでいつごろ上洛できるのかな」

「それは何とも。三好は強大でありますので六角だけでなく朝倉殿や上杉殿・畠山殿などと協力せねばなり

ません。幸いにも織田と一色は覚慶様の仲介を受け入れて上洛に力を貸すようですので来年あたりにでも六角・畠山・一色・織田を連れて上洛できるでしょう」

「そうか。上杉が参加できんのは残念だが仕方ないの。して九州探題はどのような動きをしておるかの。あれが動けば今すぐにでも上洛できると思うのだが」

そう言って覚慶様が周りを見渡される。確かに惟宗は長門・周防・石見・安芸を制圧したことで石高は450万石以上、兵は10万以上を動かすことができる。おそらく惟宗単独で上洛戦を行ったとしても成功するだろう。だが惟宗と京の間には三好のほかに尼子がいる。尼子も上洛戦に協力してくれるのであれば良いのだがもし尼子が三好に付いたら難しいだろう。それに惟宗が素直に尼子と協力するとは思えない。上洛戦を理由に尼子領に攻め入ったうえで三好と敵対する可能性がある。それでは来年の六角・畠山・一色・織田の上洛戦には参加できないだろう。

「覚慶様、それは難しいかと。惟宗は大身とはいえ上洛するには少々遠くになります。それでは覚慶様が京に入るのが遅くなってしまうかと。惟宗殿には将軍宣下の資金などで手伝ってもらえればよろしいのでは」

あれは藤長殿か。しっかり物事が見えているような意見だがおそらく惟宗嫌いで言っているのだろうな。以前から惟宗の事を嫌っている様子であったが惟宗を訪れて以来、惟宗嫌いはずいぶんとひどくなった。

「ふむ、そうか。確かに義勝には堺があるが我らにはないの。銭の心配など将軍がするようなことではないと思うがあって困ることではないからの。惟宗にはそう手紙を書くとするか」

「それがよろしいかと」


―――――――――――1565年12月1日 久留米城―――――――――――

「なんだこの手紙は」

康広が持ってきた手紙を見て思わず声に出してしまった。しかし仕方がないだろう。こんな手紙はさっさと上洛せよと言ってきた義輝よりひどい。

「御屋形様。手紙にはなんと」

「正月の献金は今後、覚慶様にもってこいとのことだ。しかも上洛したら将軍宣下の資金も用意するべしと。まぁ、もう少しましな言い方があると思うがな」

「それは・・・上洛もしていないというのに随分と気の早いことですな」

「だいたい元が坊主だから戦の事はよく分かっていないのだ。織田と一色を結び付けて上洛だと。織田と一色がどれだけ戦を続けてきたと思っているのだ。どうせ三好が動いて途中で終わるに決まっている」

だいたいその上洛戦には参加しなくていいから金を出せって。ようは上洛戦に参加させないことで上洛後の惟宗の影響力を抑えて必要経費だけもらおうとか言う算段だろう。あとこの手紙の形式だって御教書じゃないか。またずいぶんと仰々しいな。ていうか御教書って確か将軍か四位以上の守護大名しか使えないはずじゃ。覚慶はどちらでもないだろう。正直、こんな奴ならたとえ神輿でも将軍にしたくないな。

「御屋形様、いかがしますか。義勝様か覚慶様、どちらに献金を」

「どちらにもするつもりはない。俺が献金をしているのは征夷大将軍ではなく幕府だ。京にいる伊勢殿に預ければよかろう」

「しかしよろしいのですか。三好勢力を弱めるには絶好の機会ですぞ」

確かに大義名分があり、それに味方する勢力もいる。三好も三人衆と久秀に分かれて内乱を始めた。これ以上ない機会に見えるがまだ早いと思っている。それに惟宗の兵力を考えれば味方はあまり必要ない。むしろ惟宗の影響力を出来るだけ大きくするにはいない方がいい。

「構わん。どうせ当分はどちらも京に入ることはできんのだ。それに上洛しようにも尼子領を通らねばならん。尼子が裏切ればその上洛戦は失敗だ。そんな危険な真似は出来んよ。ならば何もしないことで惟宗の価値をあげた方がいい」

「惟宗の価値ですか?」

「そうだ。覚慶様が計画している上洛戦は失敗する。おそらく一色と六角が裏切ってだ。そうなると覚慶様は早期上洛が厳しくなる。しかしそう簡単にあきらめるような方ではないだろうから惟宗を頼らざるをえなくなる。だが惟宗単独で上洛した時の影響力はどうなるだろうな。果たして将軍の親政はできるのかどうか。楽しみなことだ」

将軍の親政をするには強力な後ろ盾が必要だろう。だが後ろ盾になれる惟宗はそんな真似はさせない。少なくとも三好政権下の義輝以上の不自由を味わうことになるだろう。それに満足できるかどうか。ま、上洛前に尼子をどうにかしないとな。

「では今年の献金は康広に頼むぞ。帝へと伊勢殿へと」

「はっ」

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