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壱岐制圧3

―――――――――――1538年8月22日 生池城周辺――――――――――

「熊太郎様、別動隊が到着しました」

「そうか、すぐに会おう。その後に軍議を行うからほかのものも呼んでくれ」

「はっ」

小姓が下がる。やっと郡城を攻略した別動隊と合流できるな。これで楽にこの城を攻略することができる。

この城の攻略後は内通した国人たちとともに波多氏が壱岐統治の拠点としていた亀尾城を攻略する。亀尾城を攻略すれば波多氏も壱岐から手を引くだろう。もしかしたら今すぐにでも手を引きたいと思っているかもしれない。なにせ右城城で決着をつけるつもりの楽な戦のつもりが蓋を開けてみれば1000人以上の犠牲を出し総大将を失った。これ以上戦を続ければ収穫にも影響が出るし早く次期当主を決めないといけない。この城で粘っているのも講和で少しでもいい条件で終わらせるためだと思う。波多氏が出してくる条件は波多下野守興の首と今後宗氏が波多氏に攻め込まないことかな。見返りは壱岐郡の割譲。つまり現状の追認ということだな。もちろん受けるつもりはない。しかし生池城はなかなかの堅城だ。おそらく攻略には時間がかかるな。


しばらくして皆が集まり軍議が始まった。まずは康範たちの功に触れる。

「安城・船匿城・鶴翔城・郡城攻略大義であった」

「「「ははっ」」」

「さて、これからの動きだがどうしたものか。生池城に手間取るようではこちらに付くといって来た国人たちも二の足を踏む。かといってこの城をすぐに攻略するのは難しそうだ。だれか策はないか」

周りを見渡すがお互いの顔を見るだけでだれも策を述べない。やっぱりこのまま包囲して兵糧攻めかな。

「こちらに付くといって来た国人たちはいつ合流できるのでしょうか」

あれは別働隊を率いていた井手智正か。

「どうやら亀尾城を奇襲するところまではうまくいったがまだ攻略はできていないらしい。城を落とすには兵が足りないと昨日文が届いた」

「では、また兵を二つに分けましょう。一隊が生池城を囲み、残りは石田郡に攻め入るのです」

「しかし智正殿。どこかの城を攻めている途中で生池城の囲いが突破されれば挟撃されますぞ」

智正の提案に津奈が反論する。

「問題ございますまい。こちらの方は1300ほど。対する生池城に籠っている波多勢は約600。城の備えに700ほどおいて置けば十分対応できるかと」

「しかし、この時期となると城には兵糧は少ないはず。時間はかかっても確実な兵糧攻めをするべきだ」

「それより降伏の使者を出すのはどうでしょう。意外とあっさり降伏するかもしれませんぞ」

柚谷康広が少し楽観的な意見を述べる。

「某が使者として向かいましょう。生池城の波多勢が降伏すれば石田郡の国人たちもすぐに降伏するでしょう。熊太郎様、お許しをいただけますでしょうか」

康広がこちらを向いて頭を下げる。他の者は皆俺を見ている。俺としても戦わずに落とせるのは大歓迎だ。

「よかろう。剛の者を10人ほど付ける。それと多聞衆からも何人か付ける。交渉がうまくいかなかった場合多聞衆はそのまま雑兵に紛れて噂を流してほしい。内容は宗は波多を降伏させたい。降伏すれば皆助けると言っている。しかし日高資がごねていくさが長引いている。日高さえいなくなれば全員無事に帰ることができるとな」

「はっ」

日高一族は壱岐統治の旗頭だったはず。今後の壱岐統治のことを考えるといなくなってくれた方が楽だろう。

「最後に対馬の父上から使者が来た」

「大殿からですか。それでなんと」

「うむ。実はな・・・」


―――――――1538年8月23日 生池城 日高資―――――

「敵は我らの2倍もいるのだ。ここは籠城するしかなかろう」

「そうだ、宗もこの時期では長期間の戦は避けたいはず。籠城しておればそのうち退却するはずだ」

「いや、この城にはあまり兵糧がない。籠城すればすぐに食べるものがなくなるぞ。それならば打って出た方が勝つ可能性が高い」

「それに我らがここに籠っている間に他の城が攻略される恐れがある。兵糧がなくなった時には味方がいないということもあり得るぞ」

「しかし・・・」

やれやれ、なかなか結論がつかないな。やはり殿がいないとただの烏合の衆か。いや、右城城であのような大敗を喫しなければここにいるものだけで対応できたはずだ。


「日高殿はいかがお考えか」

この城の城主の本郷殿がこちらを見て尋ねた。さて、いかがしたものか。

「やはりここは城に籠って敵が去るのを待つしかないかと。そろそろ収穫の時期です。我らも苦しいですが敵も国元の作物の事が気になっているはず。おそらく10日も耐えることができれば向こうから和議をと言って来るでしょう。幸いにもこの城は堅城。10日ほどなら問題ありません」

「しかし兵たちからは不満は出ないでしょうか。この戦に勝ったとしても兵に不満が溜まっていては今後に差し支えるましょう」

「今敵に突っ込めと言われてもこちらの士気は低いのです。攻撃するだけいたずらに兵を失う結果となるかと」

「そうですな」

その後半刻ほど話し続けたが結局良い案は出てくることはなかった。そのまま解散となりそうになったとき城番が慌てたように大広間に入ってきた。

「申し上げます。宗氏の使者が城門の前まで来ております」

「使者が?わかった、すぐに連れて来てくれ」

「はっ」

城番が一礼して下がる。

「さて、皆様は何のために宗より使者が来たとお考えで」

本郷殿が周りを見渡して問う。

「おそらく我らに降伏せよと言いに来たのでしょう。先ほども言いましたが収穫の時期ですので敵も無理はできません。あまり戦わずに勝ちたいのではないかと」

「某もそう思います。しかし殿がいない今誰がこの交渉を行うべきか」

「この城の開城を求めて来た場合は本郷殿がなされるのが筋かと。この城の持ち主は本郷殿ですので。波多の降伏を求めてきた場合は私が相手をしてその後皆と相談するという形で良いかと」

「そうですな、日高殿は壱岐の旗頭。交渉役には適任でしょう」

「左様ですな、某も賛成です」

「では、交渉は日高殿にお任せするということでよろしいですか」

本郷殿が周りを見渡す。反対する者は誰もいない。

「では日高殿、よろしくお願いいたします」

「はっ」


「宗熊太郎が家臣柚谷康広にございます。本日はこの戦を終わらせるべく赴きました」

「波多家の家臣日高資です。さっそく本題に入らせていただくが終わらせるというと宗は兵を引くということでよろしいかな」

「まさか。むしろ皆様に和睦を勧めに参ったのですよ。波多には壱岐より手を引いていただきたい」

やはり降伏をさせに来たか。しかし壱岐より手を引けだと。とてもじゃないが認めることはできないな

「しかし降伏と言われましても我らはまだ戦えますが」

「ははは、ご冗談を。収穫前の戦でただでさえ苦しいのに当主を失ってもまだ戦えると言われるか」

「苦しいのは宗家も同じでしょう。他国に踏み込んで戦うのです。兵糧や国許の田畑が気になって戦に集中できないのでは?」

「いえ、ご心配には及びませんよ。兵糧はまだまだ余裕はありますしご協力していただける方もいらしゃいますので」

「立石図書のことですかな」

「あのような二枚舌の嘘など我が主はすぐに見抜かれましたよ」

見抜かれていたか。では協力しているものはいったい誰なのだ。

「まぁ、二枚舌の事などどうでもよいのでしょう。こちらの要求をお伝えします。ひとつ波多は壱岐より手を引くこと。ふたつ波多に従っている国人及び豪族はすべて宗に従うこと。最後に最近お生まれになった熊太郎様の弟を波多の養子とし波多家の当主とすること、以上です」

今後もよろしくお願いします

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