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壱岐制圧2

―――――1538年8月18日 若宮島――――――

「熊太郎様、上陸したようです」

「そのようだな。そろそろ船を戻した方がいいだろう。合図を送ってくれ」

「はっ」

さすがに数が少ないとはいえ頭にあたると即死だからな。そんな危険な真似はさせないよ。

「熊太郎様」

「いかがした。頼氏」

「大筒はそのまま大岳城を攻撃させてはいかがでしょう。大岳城から援軍が来るとせっかくの策が敵に露見するおそれがあります」

「そうだな、よく気が付いてくれた。すぐに船に合図を送れ」

「はっ」

頼氏が頭を下げ配下に合図を出す。合図は太陽の光を鏡で事前に決めていた間隔で反射したり隠したりしてモールス信号のようにやり取りをする。似たようなことを水軍がしていたので改良して正式に使うことにした。

「熊太郎様、杉村様達が右城城に攻撃を仕掛けたようです」

小姓が声を上げる。さっそく始めたか。

「伏兵の方はどうだ」

「調親様の方はすでに準備を終えたようです。盛廉様の方は今少しかかりそうです」

「ふむ、そうか。狼煙の準備はしておけ」

「はっ」

小姓が一礼をして下がる。さて、うまくいくかな。


―――――壱岐 右城城付近 波多下野守興―――――

「殿、やはり宗が上陸したようです。おそらくこちらに向かってくるでしょう。いかがなさいますか」

「迎え撃つにしても城は焼けているからな。物見を出せ。こちらから向かっていくぞ。敵を追い払い次第大岳城に入る」

「はっ」

宗め、やはりあれを合図と間違えたか。これではあまり奇襲の準備をする暇がない。なんとか押し返すことができればいいが。

物見に行っていたものが戻って来た。

「殿、敵を発見しました。その数約1000。こちらめがけて進軍中です」

1000か。先ほどの攻撃と火事で100人ほど失ったから今の兵の数は1100ほどか。問題ない。

「皆の者聞いたか。敵の数はこちらより少ない。今不意打ちをすればたちまち崩れるだろう。出陣じゃ」

兵が一斉に鬨の声をあげる。よし、士気は高いな。先ほどの攻撃もおさまってきたことだしなんとかなるだろう。

「殿、前方二町ほど先に敵の姿が見えました。おそらく我らには気づいておりません」

なんとか先に攻撃することができそうだな。一時はどうなることかと思ったがこの戦勝てるな。

「よし、皆の者かかれっ」


―――――――壱岐 神皇寺付近 佐須盛廉――――――

「兄上、調親殿から準備は整ったとのことです」

「そうか、こちらも準備は整ったと伝えてくれ」

「はい」

弟の盛円が使者を出すよう指示を出す。儂とは年が離れているためまだまだ学ぶべきことは多い。それにどちらかというとまつりごとで熊太郎様を支えることが多い。ここらで一度、武功をあげてもらおう。儂には子供がおらぬから、晴康様より任じられた守護代の職は盛円が継ぐことになる。熊太郎様の役に立つようこの戦でしっかり学んでもらわなくては。


四半刻後、若宮島の方から狼煙が上がった。いよいよか。

「皆、そろそろ敵が来る。敵に備えよ」

「はっ」

「鉄砲の音が聞こえたらすぐに弓を放て。その後は全力で敵を叩く」

おそらく鉄砲で敵は混乱するはず。そこに我らと先に敵と戦った隊が攻撃を仕掛ける。熊太郎様はこの戦で決着をつけたいと思っているはず。必ず波多下野守興の頸を取らねば。


「申し上げます。お味方の軍勢を追いかけ敵がこちらにきております。間も無く予定の場所を通ると思われます」

北原殿の配下が報告に来た。

「そうか、分かった。盛円、皆に備えよと伝えてくれ」

「はい」

「それで、敵の味方の被害はどれほどだ」

「敵は200ほどですが士気はあまり高くありません。御味方も同じくらいです」

そうなると敵の数は1100ほどか。此方は1200。鉄砲隊がどれほど敵を殺せるかで決まるな。鉄砲隊の数は150。全て当てることができれば数の上では問題ない。そして敵の士気は低い。であれば十分勝機はあるな。


報告を受けてから幾許か過ぎた。そろそろ敵が来るだろう。む、あれは。

「兄上、味方が来ましたな」

「ああ、その方も早く備えよ。せっかくの手柄を上げる好機だ」

儂がいうと嬉しそうに頷いた。やはり武功がないことを気にしていたようだ。


ドドドドドド!


鉄砲が放たれたか。敵は・・・100ほど失ったな。それにかなり混乱している。囮役となった隊は調親殿の隊の後方で陣を整えている。まだ時間はかかりそうか。ならば今は突撃せず弓を射続ける方が良いな。

「弓隊構え、放てっ」

儂の号令で弓が放たれる。あまり損害を与えることはできなかったがより混乱している。鉄砲隊の弾込めはまだか。


ドドドドドド!


二度目の鉄砲が放たれた。損害は先程と同じくらいか。後方で陣を整えていた隊が敵に突撃した。よし、儂らも続くか。

「かかれっ」


―――――――1538年8月20日 壱岐 風早城――――――

「では、波多勢はいまは生池城にいるのか」

「はい。始めは樋詰城に移ろうとしていたようですが別働隊が鶴翔城を攻めていると知ると400ほど郡城に向かわせ、本隊は生池城に移動したようです」

「そうか、では軍議を行う。皆を集めてくれ」

「はっ」

頼氏が一礼して下がる。当初の予定から若干ずれてしまったが壱岐侵攻は順調に進んでいる。


神皇寺付近での待ち伏せはうまくいった。おびき寄せる時に200ほど兵を失ったが波多勢を600ほどと敵の総大将波多下野守興を討ち取った。200ほどは鉄砲で討ち取ったらしい。やっぱりこれからは鉄砲だな。

総大将を失った波多勢はすぐに敗走した。もちろん追撃し、風早城・高津城・加賀城を落とした。そこで追撃は終え周辺の城を制圧した。といってもすぐに降伏して来たからそこまで苦労しなかった。

別働隊は予定通り安城・船匿城周辺を制圧し、鶴翔城を攻略中だ。あとは生池城を攻略できれば壱岐郡のほとんどを支配下に収めることができる。石田郡の国人もこちらに付くものが増えるだろう。壱岐制圧もあと少しだな。

次回は来週の土曜日に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>ドドドドドド!鉄砲が放たれたか。 この作品では現実と違って、鉄砲の音が濁流のような音という設定ですか?
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