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安芸氏

――――――――――1561年4月20日 烏帽子岳城―――――――――――

「御屋形様、頼氏殿が来られました」

軍議が終わって自分の部屋で手紙を書いていると外から千寿丸が声をかけてきた。

「すぐに通せ」

「はっ」

しかし今更和睦か。兼定は長宗我部に煽られて挙兵したとして長宗我部と安芸はなんで俺に歯向かおうと思ったのだろうか。確か安芸の当主は兼定の妹を嫁に迎えていたはず。その縁で長宗我部と和睦して共闘することになったのだろうか。

「失礼いたします」

そう言って頼氏が入ってくる。


「およびと伺いましたが」

「頼みがあってな。それより調略はどうなっている」

「はっ。土佐一条家からは土佐四家老の羽生道成・為松若狭守・安並和泉守がこちらに付くと約束してきました。またほかにも堀川隆康・津野定勝・布玄蕃・平尾新十郎・仲弥藤次が寝返ると言っております。皆、和睦派だった者たちですので信用できるかと」

かなりの人数だな。これだけの人数が反対していたのによく本山攻めを強行したな。

「津野といえば確か土佐一条家のものが嫁いでいたはずではなかったか」

「はい。定勝の母が一条房家の娘です。ですが津野は昔から土佐一条家と争い、最近土佐一条家の傘下に入りました。ですが当然納得していないものも多くその恨みを晴らすために寝返ると」

「信用できるか」

「問題ないかと」


「そうか。長宗我部の方はどうだ」

「長宗我部一族で国親と不仲になり伊予に出奔していた黒川元春に手伝ってもらったこともあり桑名重定・秦泉寺掃部・森頼実・五百蔵筑後守・柳瀬道重が寝返りを約束しています」

十分だな。長宗我部は惟宗と領地が面していないからそこまで惟宗の事を脅威と考えていないはずだ。大軍が近づいて来れば寝返ろうとする者が増えるだろう。

「安芸はどうだ」

「安田国長・井原源七郎・有井玄蕃・小谷左近太夫が寝返りを約束しています。また畑山元氏と黒岩越前が安芸家存続を認めるのであれば国虎を説得して降伏すると言っています」

「確か3歳ぐらいの嫡男がいたな。土佐以外の土地でも構わないのであれば認めると伝えろ」

「はっ」

安芸氏は土佐七雄と言われるほど土佐内では影響力の強い国人だ。たとえ3歳でも土佐での領有は認められないな。


「しかし和睦を認められてよろしかったのですか。たとえ一条本家の要請とはいえ無視することもできたでしょうに」

「構わん、兼定は隠居させて適当な公家か土佐一条家の血を引いている者を養子にしようと思っている」

或いは俺の子と言うのもありだな。出陣前に政千代が妊娠していることがわかった。その子が男の子なら一条本家の養子になって土佐一条家を継ぐと言うのも悪くない。

「それに考えるとは言ったが必ず和睦をするとは言っていないし、一条本家も土佐一条家を残してくれと言って来ただけだ」

もしかしたら宗珊は勘違いしたかもしれないけどこの時代では情報の行き違いなんてよくあることだ。気にすることではないよ。


「それより毛利や三好に動きはないか」

「尼子晴久が急死したことで尼子が揺れています。毛利はその隙をついて石見を切り取ろうとしているようです。少なくとも当分はこちらに来ないでしょう」

尼子か。この前使者を出した時はかなり友好的だった。もし毛利と敵対することになったらぜひ力を貸したいと言われている。ただしこれは晴久の代の事だ。義久はどうだろうか。馬鹿だとは思わないけど元就には劣っている。このままでは史実通り大名としての尼子は滅亡して毛利家に飼い殺しにされるだろう。


「三好ですが長慶の弟の十河一存が死んだことで和泉の支配が脆弱になっています。また畠山高政と六角義賢と細川晴之が連絡を取り合っているようです。おそらく隙を見て反三好勢力を纏めて挙兵をするつもりではないかと。さらに京では一存が松永久秀に殺されたと噂が流れています。三好家中はそれほど纏まっていないのではないかと思われます」

「そうか。ではこちらに構っている余裕はないようだな」

「はっ」

これなら三好領以外の四国を制圧できるな。しかし畠山と六角が連絡を取り合っているのか。たぶん三好実休が討死した将軍地蔵山の戦いのことだろう。もしかしたら惟宗にも連絡を取ろうとするかもしれないな。もし来たら土佐と伊予の兵を増やして阿波・讃岐を狙う振りぐらいはしてやるかな。それ以上は面倒ごとに巻き込まれそうだからやめておこう。


「御屋形様、頼みというのは」

「あぁ、そうだったな。今回、宗珊が約束したことを土佐中に広めてほしい。土佐一条家の信用を一気になくす」

「はっ」

「それから寝返りを約束している土佐一条家の者に土居宗珊は惟宗についている、だから土佐一条家に不利な和睦を結ぼうとしていると兼定に吹き込ませろ」

「はっ」

史実の元親と似たような手だな。これで兼定が宗珊を殺せば家臣たちからの信用も一気になくなるはずだ。周りの国人と家臣たちの信用を失った土佐一条家はすぐに降すことができるはずだ。あとは長宗我部と安芸だが兵力の差を考えると油断しなければ十分勝てる。よし、大丈夫だな。

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