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門司城

―――――――――1560年6月1日 中村館 土居宗珊――――――――――

「宗珊、宗珊はおるか」

おや?御屋形様が私を探しておられるようだ。長宗我部が本山を攻めたと聞いていたがそのことだろうか。

「はっ。お呼びでしょうか」

「すぐに戦の準備をせよ。本山を攻めるぞ」

「ということは長宗我部と本山の戦は長宗我部が勝ちましたか」

「あぁ。今攻めれば簡単に勝てようぞ」

まずいな。もしかしたら御屋形様は戦というものをなめているのかもしれない。今回の戦で長宗我部が勝ったということは元親も初陣で勝ったということだろう。同じくらいの歳の者が次々と戦に勝っていることで焦っているところもあるかもしれない。

「伊予も河野が降伏したことで後ろを気にせずに戦うことができる。敵に囲まれている本山などすぐに倒してくれる」

「しかし今は農繁期です。すぐに戦と言われましても兵を集めるのは難しいかと」

「それをどうにかするのがそなたらの役目であろう。頼んだぞ」

そう言ってさっさと御屋形様は行ってしまった。さて、どうしたものか。とりあえず曽衣殿と相談しよう。御屋形様を説得するには曽衣殿の賛成があった方が容易なはずだ。


近くにいた小姓に聞くと曽衣殿は自室にいると言われたのですぐに曽衣殿の自室に向かった。

「曽衣殿、失礼しますぞ」

「どうぞ」

曽衣殿に言われて部屋に入る。どうやら京への手紙を書いていたらしい。

「いかがされましたか。先程御屋形様が探されていたようですが」

「ここに来る前にお会いしました。どうやら本山が長宗我部に負けたようです」

「そうでしたか。長宗我部国親には恩を売っているのですから土佐での一条家の影響力は増しますな」

「それだけならよかったのですが・・・御屋形様が今から本山を攻めると言われているのです」

「それは・・・困ったものですな」

そう言って曽衣殿は溜息をつかれる。曽衣殿も農繁期に戦をすることには反対だろう。

「伊予にいた惟宗はどうしているかご存知ですか。どうも内政ばかり見ているのであまり話を聞かないのですが」

「どうやら宇都宮の居城だった大洲城に吉弘鑑理と5000の兵を置いて九州に帰ったようです。おそらく河野が毛利や三好に唆されて裏切る可能性を考えているのでしょうな」

「では惟宗に援軍を頼むというのは無理でしょうな。友好関係にあるとはいえ同盟すら結んでいない一条家を危険を冒してまで助ける理由はありません。何とか説得して出兵をやめさせないといけませんな。分かりました、すぐに御屋形様の下に行きましょう。宗珊殿も頼みますぞ」


―――――――――――1560年9月1日 門司城―――――――――――――

「御屋形様、わざわざ御足労をいただき有難うございまする」

そう言って康正と調親・歳久が頭を下げる。

「そこまで遠いわけではないから苦労というほどでもない。面をあげよ」

「はっ」

しかし久留米城ほどではないがかなり大きな城になったな。これだけ大きくて1万も兵がいたら毛利も攻めようとは思わないだろう。それに鉄砲や大筒などの惟宗で生産した武器を大量に置いてある。これなら毛利が和睦を破棄した時にすぐ攻めれるはずだ。大筒は狭間を作っていつでも毛利の船を撃てるようにしている。もし毛利が攻めてくるならまず船を使って上陸しないといけない。周りに惟宗の船がなければ油断するだろうから、そこを城から大筒を撃って上陸させないようにする。まぁ、うまく当たるかはわからないけど何もしないよりかはましだろうな。

「皆、こちらの暮らしには慣れたか?特に歳久は九州の南端から北端に来たのだ。慣れぬことも多かろう」

「お気遣い痛み入ります。何かと薩摩の頃とは違うことが多く戸惑うこともございますが、それも様々なことを学ぶ良い機会と持っております」

「そうか。たまには久留米にいる忠平や薩摩の義辰に手紙でも書くといい。あいつらもいろいろと苦労しているだろうからたまに愚痴を言い合うのもよかろう。もちろん俺に書いてもいいぞ」

「は、はぁ。そうさせていただきます」

始終の利害を察するの智計並びなくと祖父に評価された歳久との文通なんて楽しみだな。


「康正は嫁を貰ってから以前に増して働いていると聞くぞ。嫁にいいところを見せようとしているのかな」

「あ、いや。そのようなことは・・・」

康正が恥ずかしそうに頭をかく。

「ははは。仕事ばかりやっていたお前らしいと言えばお前らしいな。その調子で頑張ってくれ。だが働きすぎて倒れないようにしてくれよ。お前にしかできない仕事というのは多い。門司城のような重要な城の城代などだな。自身の健康管理も仕事と心得よ」

「はっ」

戦国時代で過労死なんてやめてくれよ。ただでさえ親族衆は少ないんだ。ここで死なれては俺の仕事が増えてしまう。


「調親は若い二人を見ながら仕事となるからかなり大変だろう」

「いえ、康正殿も歳久殿も優秀で大変だと思うことはございませぬ。むしろ仕事を二人が先に終わらせてしまってすることがないなんてこともあるくらいです」

「そうか。だがこれからは仕事が増えてくると思うぞ。河野が降伏したことで毛利の伊予への影響力はかなり減ってしまった。ようは毛利の邪魔をしたことになるな。もしかしたら毛利との小競り合いが起きるようになるかもしれん。その時に上陸させないよう鉄砲隊や大筒隊を率いることになるのは調親になるだろう。頼りにしているぞ」

あれには驚いたな。まさかこんな簡単に河野が降伏するとは思わなかった。まぁ、三好の盾には使えそうだからとりあえず受け入れた。次の戦は毛利か土佐か。土佐は長宗我部国親が死んで元親が本格的に動き出すことになるな。場合によっては土佐一条家から援軍をと言われるかもしれないな。この間、宗珊と曽衣の反対を退けて本山を攻めていたな。そしてまたぼろ負けしたはずだ。だがこのままでは本山は土佐一条家と長宗我部に滅ぼされるだろう。問題はそのあとだよな。


土佐一条家と長宗我部が手を組むか敵対するか。手を組んだとしたら俺に歯向かうつもりだろう。河野と手を組めば大洲城にいる鑑理と5000だけでは厳しいはずだ。敵対したとしたらそのうち土佐一条家が俺に泣きついてくることも考えられる。いずれにせよ長宗我部が勢力を拡大するのは間違いないな。蝙蝠の相手か。毛利の事も考えると面倒だ。早めに三好や尼子と手を組んでおこうかな。

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