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壱岐制圧1

―――――――――――1538年8月15日 壱岐 若宮島――――――――――

「熊太郎様、全ての兵が到着いたしました」

陣の外で海の様子を見ていると小姓が報告に来た。

「そうか、では皆を集めてくれ」

「はっ」

一礼をして小姓が下がる。これから最後の軍議が行われる。まぁ最終確認だな。この軍議が終わり次第進軍を再開する。しかしうまく行くかな。これで失敗すると対馬で反乱が起きかねない。いろんな意味で負けられない戦いになる。


「熊太郎様、皆が揃いました」

30分ほど色々考えていると小姓が俺を呼びに来た。

「わかった。すぐに行く」

今負けた時のことを考えても仕方ないな。とりあえずはこの戦のことに集中しないと。

陣の中に戻ると家臣達が壱岐の地図が置いてある机の周りに集まっていた。近づくとこちらに気付いたようで頭を下げた。

「面をあげよ」

「「「「はっ」」」」

「では最後の軍議を始めよう。と言っても向こうで確認した通りだな。康範・盛長・智正は700の兵を率いて芦辺より攻撃を開始せよ。残りは右城城に籠っている波多勢を攻撃する。敵は立石図書の手紙を信じて右城城に多くの兵を置いている。また、こちらの合図とともに火を放つふりをしてくるはずだ。そこで城を襲い、奇襲を受けたふりをして神皇寺のあたりまで退く。その後追いかけて来た波多勢をあらかじめ置いていた伏兵とともに挟撃する。後は敗走する波多勢を追撃しながら南下。おそらくその頃には下条たちも挙兵しているだろう。頼氏、波多勢の船はどのあたりにある」

「郷ノ浦にあるようですが全ての兵を回収するにはいささか少ないようです。500から700ほどが限界でしょう。対して波多勢の兵は約1500。壱岐から脱出する際は同士討ちもあるかもしれません」

いいね、こちらの被害なく簡単に敵の兵を減らすことができる。

「船に細工をしておけ。あと下条たちには亀尾城を落としたら葛城に向かうよう伝えておけ。うまくいけば本隊と康範たちの別働隊と下条たちの兵で挟み撃ちにすることができるかもしれん」

「かしこまりました」

「山本たちは船越城を落としたあとは郡城まで兵を進め本隊と合流するように」

「「「はっ」」」

「では、出陣だ」


―――8月18日 18時頃 壱岐 右城城 波多下野守興――――

右城城に入って3日がたった。宗は上陸する様子もない。おそらく火が上がるのと同時に上陸し、そのままこの城を落とすつもりなのだろう。城の中の見回りをしていると、日高資が寄ってきた。

「殿、宗が近くまで船を寄せています。いかがなさいますか」

「攻めてきそうなのか」

「いえ、城の西側に安宅船が五隻ほど。物見にはいささか多い気がしたので一応ご報告を」

「そうか、しかし西側であるならあまり心配ないのではないか。西側は大軍を展開するには不向きであったはずだが。それに船は郷ノ浦に置いてきてしまったから追い払うこともできん。注意を払うだけでよかろう」

「ではそのように」

日高資が下がる。船を置いてきたのは失敗だったか。今からでも呼び寄せても間に合わないだろう。しかしいったい何のために宗は船を出したのだろうか。向こうも西側からの上陸は無理なことはわかっているはずだしそこから攻撃するにもここまでは二町ほど離れているから弓矢は届かない。


ドーン

「な、何の音だ」

いきなり地が震えるような音がした。外に出ると皆が混乱しているようだ。

「資、資はどこだ」

二回目、三回目の音が鳴る。

急に近くの壁が崩れた。いったい何が起きているのだ。

「殿、ご無事ですか」

「資か。これはいったい何事だ」

「宗の攻撃です。先程報告した船から攻撃されています」

「しかしこの攻撃は何なのだ。急に壁が崩れたぞ」

「どのような仕組みかはわかりませんが鉄の球を飛ばしているようです」

「鉄の玉を二町も飛ばすことができる飛び道具があるなど聞いたことがないぞ」

そのようなものがあると初めから知っておればここではなく都城あたりで待ち伏せをしておったわ。小姓が急ぎ足で近寄って来た。

「申し上げます。先ほど敵の攻撃が台所にあたり周辺に引火致しました」

「殿、まずいですぞ。もしこの火事を敵が立石からの合図だと勘違いして攻めて来たら奇襲どころではなくなります」

「分かっておる。すぐに城中の兵を全て集めよ。どうせこの城はもう使えん。この城は捨て打って出るぞ」

「はっ」


―――――1538年8月18日 壱岐 若宮島―――――

「爺よ、火が上がったな」

「上がりましたな。如何なさいますか」

「とりあえず軍議で話したように上陸する。爺と調親は400の兵を率いて神皇寺あたりに伏兵の準備をしてくれ」

「「はっ」」

「仁位盛家と平田成幸は1000の兵を率いて右城城に攻撃を仕掛けてくれ。おそらく抵抗は激しいだろうからあまり無理せぬようにな。四半刻ほどで戻ってまいれ。残りの100はここで待機だ」

「「「はっ」」」

しかしなんでこのタイミングで火が上がるのかな。やっぱりそこまで大筒の効果が出ていないのかもしれない。大筒のほとんどは山本たちが持って行ったからそこまで数が揃ってないんだよ。あと10門ほどあればもう少し効果があったと思うんだがな。


やっぱり金がかかるな。兵を雇うのにも金、鉄砲・大筒を作るのにも金。特に鉄を買うのに金がかかる。今は尼子から多く鉄を仕入れているがそのうち毛利に滅ぼされるんだよな。出来るだけ尼子には長く続いてほしいよ。出雲の砂鉄がなくなったら鉄砲の生産が遅れてしまう。滅亡前の尼子にはあまりいいイメージはないけどある程度大きくなったら尼子と同盟を結ぶのも悪い手ではないと思う。どうせ大内とは敵対するんだ。それなら尼子が大きいうちに手を結んでおいた方がいいだろう。大内からすれば宗家より尼子の方が脅威だろうから当分はこちらに目が向くことはないはずだ。

そうだ、大友も巻き込もう。史実では将軍の仲介で和睦した後はほとんど争うことはなかったはずだが宗家・尼子・大友で同盟を結ぶことができれば大内包囲網ができる。まぁ宗家と大友は形だけになると思うけど。どうせ今は弱小大名の一人だ。尼子・大友の陰に隠れてこそこそ勢力拡大させてもらおう。だが松浦郡だけだとなめられてしまうかもしれないから島原半島の有馬氏を滅ぼしてからだな。

次の投稿は来週の土曜日の予定です。今後もよろしくお願いします。

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