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伊予

――――――――1558年12月20日 久留米城 北原頼氏―――――――――

「御屋形様、頼氏にございます」

「そうか、入れ」

「はっ」

御屋形様に言われて部屋に入る。

「今日は頼氏か。どうだ、息子の頼久はうまくやっているか」

「四国の方を任せていますが多聞衆を引き継ぐにはまだまだ未熟者にございます。某ももうすぐ50ですのでそろそろ家督を継がせたいのですが」

「だが四国の事を任せられるほどには成長しているのであろう。康胤や康繁・康興・康正のような若い者たちと一緒にこれからの惟宗を支える存在となってくれよう」

「だとよいのですが・・・」

不満はあまりないがどうも頼りないというか、自分がいなくてもやっていけるのかと不安になってしまう。亡き父上も同じような思いをされたのだろうか。

「俺は戦や当主としての仕事ばかりで都都熊丸にあまり構ってやれてないな。傅役を付ける前は政千代に、傅役を付けてからは尚久たちに任せてばかりだ。そして来年は正月が終わればすぐに上洛の準備。なかなかゆっくり話す時間もない。尚久たちからは内政の事も戦の事も嫌がらずに学んでいるようだが果たして俺の跡を継いで惟宗を、家臣や領民を守れるのか心配だな。九州だけでも300万石以上。兵の数でいえば8万以上になる。そして四国や毛利の事も考えるとまだまだ大きくなるだろう」

そうだ、それほどの大大名は惟宗のほかにいないだろう。京を支配している三好でも惟宗と敵対することは避けようとするはずだ。そしてそれは御屋形様が一代で築き上げたものだ。嫡男の事が不安になるのも仕方ないだろう。

「ま、まだ元服もしていないのだ。心配するのは少し早いかな。今は都都熊丸の心配よりほかの大名の事だ。報告を頼む」

「はっ。まずは西園寺ですが宇都宮の攻勢が激しくなってきているようでかなり厳しいでしょう。幸いにも家臣たちは忠義が厚く、裏切ると言った心配はありませんがこのままでは滅ぶやもしれません」

「そうか、来年か再来年あたりに伊予に出兵することも考えないとな。土佐一条はどうだ。この間、敵対しないから離縁は勘弁してほしいと言ってきたが」

「どうやら惟宗に従うと言っておりますが当主の兼定はあまり惟宗に対してよい感情を持っていないようです。惟宗領から追放された義鎮を匿っているのは兼定です」

「意外だな。あの土居宗珊がそんな危険な真似を認めると思わなかったが」

御屋形様は宗珊をかなり評価しているみたいだ。いずれは調略を命じられるかもしれんな。

「どうやら兼定の母親が説き伏せたようです。そして古い寺に匿っているので宗珊ら重臣たちはこのことを知りません。おそらく義鎮は土佐一条家に頼っても旧領を回復できるとは思ってないでしょうからすぐに去るでしょう」

「そうか、引き続き監視を頼む」

「はっ」

御屋形様は妙なところで義理堅いな。いま義鎮をころしたとしても旧大友家臣たちは文句を言うことはできないはずなのにそのようなことはしないようだ。

「ほかの土佐の国人たちはどうしている」

「本山氏は吉良を滅ぼしたので次は土佐一条家と本格的に敵対するようです。ただ長宗我部がその後ろをつこうとしているので当分はこのままではないかと。その長宗我部ですが安芸氏とも香美郡夜須の領有権をめぐって争いが起きそうです」

「そうか、土佐もまだ俺と敵対しようとは思わんだろうな。河野氏はどうだ」

「内で纏まることができていませんな。宇都宮などの侵略に耐えるために姻戚関係にある毛利の力を利用しようと考えているようですが、そのうち毛利の被官となりましょう」

「やはり毛利の影響力は大きいな」

御屋形様はそういうと溜息をつかれた。大友が滅んだ以上これからの主敵は毛利となるだろう。だが毛利は大友とは違い当主も跡取りもかなり優秀だ。隆元は己の事を凡人だと言っているようだが御屋形様は隆元の事をかなり評価しておられたな。

「敵対することになれば厄介だ。その毛利はどうしている」

「はっ。毛利は石見銀山を巡って尼子と争っています。8月に反抗的だった小笠原氏を降したので来年には山吹城を攻略するべく大軍を動かすでしょう。当分は九州を攻め入ることはないかと」

「では、上洛中は大丈夫だな。念のため、俺と康正が留守の間は調親と歳久をを常駐させておこう。兵站衆も人手が足りんな。あとで誰か追加しておかねば。鑑理あたりがよいだろうな。正月にでも任じよう」

「それがよろしいかと」

鑑理殿は大友に仕えていた頃から長増殿と共に内政の中心として働いていたはずだ。検地や街道の整備を行う兵站衆の仕事に向いているだろう。

「引き続き義鎮と毛利などの監視を頼む。それから上洛の際は護衛もな。それと畿内にも人を入れてくれ。詳しい三好や大樹の動きが知りたい」

「はっ、かしこまりました」

領内の孤児を鍛えるようになってから人手も増えた。そのくらいならなんとかなるだろう。上洛の護衛には頼久も連れていこう。良い経験になるはずだ。

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