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毛利参戦

―――――――――1558年5月1日 吉田郡山城 毛利隆元―――――――――

私と父上が部屋に入ると皆が一斉に頭を下げる。どうせ、私にではなく父上にだろうな。そう思うとどうも居心地が悪い。さっさと上座に座ろう。

「面をあげよ」

「「「はっ」」」

皆が一斉に顔を上げる。ここからは父上が仕切ることになる。

「皆も知っていると思うが我らが大内を滅ぼす際に大友と密約を結んでいた。我らが大内を滅ぼすことを黙認する代わりに九州に兵を出すというものだ。先日、大友がその密約の履行を求めてきた。その書状の中には筑前・豊前は任せるとまで書いてあった」

大友は豊前を取られたことでよほど苦しいのだろう。当初の条件以上のものを見返りに用意してきた。


「その書状には毛利はすぐに豊前を攻められたし、惟宗が豊前に入ったら大友がその背後をつく。そう書かれてあった。儂としては旧大内領を我ら毛利領にしたいが無理はしたくない。そこで皆の意見を聞こうと思う。忌憚のない意見を述べてくれ」

そう言って父上は周りを見渡した。これの前に父上と話をしたがどちらかといえば大友の提案に乗りたいと考えておられる。私としては反対なのだがな。さて、誰から意見を言うかな。

「某は大友の提案を受け入れた方がよいかと思います」

最初に意見を述べたのは宍戸隆家ししどたかいえだった。隆家は父上が溺愛している妹を娶ってからか父上から重用され、今では毛利の重臣の一人だ。


「毛利はこれから大内の後継者として動くことになるでしょう。それを周囲の大名に認めさせるには大殿が仰ったように旧大内領を毛利のものとするべきです」

「左様、某も受け入れるべきだと考えますぞ」

次は吉見正頼よしみまさよりか。正頼は父上とは違って清廉で謀略を得意とする将ではない。

「大友とは密約とはいえ正式に約束したのです。大内の後継者たる毛利が一度取り決めたことを反するような卑怯な真似をするわけにはいきますまい」

父上はその卑怯な真似をすることも検討していたがな。

「某も豊前に攻め入るべきだと思いますぞ」

「私もです」

「某も」

重臣の二人が大友の提案を受け入れるべきといったことでほかの者たちもその意見に賛成する。これは決まっただろうか。この中で私だけ反対するのはきついな。


「父上、私は反対です」

皆が賛成するなか反対したのは隆景だった。よしっ、反対なのは私だけではなかった。

「我らが大友に味方したとしても惟宗に勝てるとはとても思えません。兵の数は毛利と大友を合わせても約3万。対して惟宗は約7万の兵を動かすことができます。だいたい大友は背後を突くといっていますが、惟宗が大友に備えを置かないはずがないでしょう。すでに豊後のみとなった大友には勝ち目はありません。わざわざ負け馬に乗る必要はないでしょう

隆景の言う通りだな。ここで危険を顧みずに惟宗と敵対するのは意味がない。しかし7万か。改めて聞くと惟宗は大きいな。


「しかし我ら毛利は厳島にて5倍以上の兵を有する晴賢に勝ちましたぞ。それに比べれば惟宗との兵の差など恐るるに足らず」

「その通り」

「惟宗など恐るるに足らず」

隆家が反論すると周りのものもそれに同調する。隆景、言い返してやれ。

「惟宗など恐るるに足らず?我らが陶に勝てたのは大軍をうまく使えない狭い場所に誘き寄せることに成功し、嵐で陶自慢の火縄銃が使えなかったから。しかし今回は誘き寄せるということもできない、雨になるとも限らない。そのような条件で戦えるわけがないでしょう」

確かに惟宗は陶以上に火縄銃が有名だ。おそらく日ノ本で最も火縄銃を持っているだろう。先の戦で火縄銃を初めて使ったのだがあれが大量にあればこれからの戦は大きく変わるだろう。ただ残念なのは火縄銃も火薬も非常に高価だ。毛利家の財政を知るものとして言うならあれほど高価なものを常に戦で使うことは無理だ。つくづく惟宗の凄さを知ることになるな。


「以前惟宗は数で劣っている大友に負けたではないか。十分に勝機はある」

いかんな。このままでは紛糾するだけで終わらないだろう。ここは私が様子を見ると一言いえば終わるはずだ。いや、私程度の提案など聞き入れるだろうか。だが一応毛利の当主だし・・・

「ええい、静まらんか」

あぁ、結局いつものように父上が収めるのか。


「大友の提案を受け入れる。隆景と隆家が2万の兵を率いて出陣せよ。出陣は来月の頭だ」

「「はっ」」

隆景は不満そうに、隆家はうれしそうに頭を下げる。

「それから政時、隆景と隆家の上陸を容易にするために麻生をこちらに寝返らせろ」

「はっ」

世鬼の頭領である政時が頭を下げる。世鬼まで使ったということは父上は形だけでなく本気で豊前・筑前を狙っているのか。ここ最近は戦ばかりだな。父上も皆も簡単に戦だと言っているが誰が兵糧などを都合していると思っているのか。はぁ、今夜は酒でも飲んで明日から頑張るか。

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