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肝付氏

―――――――――1556年3月1日 高山城 薬丸兼将やくまるかねまさ―――――――――

「大殿と殿が参られました」

近習が声を上げたので皆が頭を下げる。どすどすと歩く音がして座る気配がする。

「面をあげよ」

「「「はっ」」」

顔を上げるといつものように殿が正面に、大殿はその後ろに座られている。まるで今の肝付家の様子を表したようだな。当主は殿だが後ろから大殿が実権を握っている。


「昨日、伊東殿より密使が参った」

話し始めたのは大殿からだった。おそらく密使も大殿の方に行ったのだろうな。

「伊東が真幸院を攻めるのと同時に大隅の惟宗領を攻められるようとの事だった。儂はこの提案に乗り大隅を肝付のものにするつもりだ」

皆がざわつく。儂もかなり驚いている。伊東とともにとはいえまさか島津ですらあっさり降伏した惟宗と敵対するというのだ。果たして勝算はあるのだろうか。む、殿まで驚いておられるな。まさか大殿がお一人で決められたのか。


「父上、それは少し危険ではないでしょうか。伊東殿は8000の兵を用意できれば良い方ですが惟宗は6万以上の兵を動員できます。はっきり言って我らが加わったぐらいでは勝負になりませんよ」

「ふん、そのくらい分かっておるわ。だが今回は問題ない」

「まさか大内とは言いませんよね。大内はいま毛利の相手で忙しいはずですぞ」

あぁ、あれは予想外であった。惟宗に押されているとはいえ大内は大大名。それが最近勢いがあるとはいえまだまだ弱小といってもいい毛利に負けたのだ。

「誰があのような大名に頼るか。あそこは頼りなさ過ぎる」

「ではどこの大名の力を借りるおつもりで?」

「大友よ」

「な、まことですか!?」

先程とは比べ物にならないくらいのざわめきが起きる。あの大友だと。不仲とはいえ惟宗とは同盟を結んでいたのではなかったのか。

「伊東殿と我らが惟宗と敵対して注意を引き付けている間に筑前・筑後に攻め入る。さすれば惟宗も慌ててこちらから手を引くはずだ。楽に薩摩を手に入れることができる」

「しかし大友は信用できるのですか。もしかすると惟宗の罠かもしれませんぞ。向こうから手を出す理由がないからこちらから手を出すように仕向ける。考えられないことはないかと思いますが」

罠か。たしかに殿の言う通りの可能性がある。

「いや、罠ではなかろう。この件を進めているのは重臣の奈多鑑基だ。十分信用できる」

「しかし・・・私は反対です。惟宗が気づいていないはずがないですし、仮に気づいていなかったとしても負ける可能性の方が高いです」

あくまで殿は反対か。他の重臣たちはどう考えているのだろうか。

「ふん、その方が反対ならば反対のままで良い。儂が当主に戻るだけだ。兼寛」

「はっ」

「良兼を捕らえよ。適当な寺に幽閉しておけ」

「父上、なにを言われますか。おい、なにをする。離さんか」

殿は抵抗するが家中でも随一の武勇を誇る兼寛殿には通用せずあっさりと連れていかれた。手際が良いな。もしかしたら二人の間で今日のことで殿の幽閉を含めて打ち合わせをしていたのかもしれん。

「これよりは儂が当主に戻って指揮をとる。まずは10日後に伊東殿に合わせて旧豊州島津家領を攻めるぞ」


―――――――――――1556年3月13日 久留米城―――――――――――

「大友に不審な動きありか」

「はっ。奈多親子を使って伊東や肝付と連絡を取り合っています」

頼氏が答える。その顔には不審の色が見える。隣にいる頼久も訝しんでいるようだ。そうだよな。今になって惟宗と敵対するのは全くの無駄だし、仮に敵対しようとしたとしてもほかの重臣たちが止めようとするはずだ。舅殿は噂がうまく回っているようであまり重用されていない。それでもほかの家臣たちにはなかなかの影響力を持っているようで冷遇されている今でもほかの重臣たちが相談に来ているらしい。

「どのような話をしているか分かっているか」

「残念ながらキリスト教徒を使っているようで接触が難しく分かっていないことがほとんどです」

「そうか」

多聞衆の情報網でもあまりうまくいっていないようだ。大友は惟宗よりキリスト教を優遇しているからキリスト教徒の受けもいいだろうな。


「御屋形様」

部屋の外から小姓が声をかける。確かあれは阿蘇の次男だったな。

「いかがした。人払いを命じていたはずだぞ」

「緊急の知らせにございます。伊東が真幸院に、肝付が飫肥に攻め入ったとのことです」

「なにっ!?すぐに軍議を開く。皆を集めよ」

「はっ」

伊東が戦の準備をしているという知らせは聞いていたが土持を攻めると思っていたんだけどな。確か飫肥は盛円が城代として赴いていたはずだ。守り切れるかな。

「御屋形様、もしこれが大友と示し合わせての行動だとしたら」

「面倒だな。大友が敵対するのであれば少なくとも2万は残しておきたい。だがそうなると伊東・肝付討伐には3・4万ぐらいしか連れていけんな。頼氏、土持の調略はどうだ」

「いちおう我らにつくとの返事が来ました。大友が伊東と組んだ以上再び大友につくと言うことはないでしょう」

「そうか、引き続き情報を集めてくれ」

「「はっ」」

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