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内政?そんなものは経験のある人に任せなさい

――――――――――1537年9月佐須盛廉―――――――――

熊太郎様が当主になられて3度目の収穫の時期となった。

熊太郎様が新しい農法を取り入れられてから石高は年々向上し、今では倍以上にまで増えた。

いったいどこでそのような知識を付けられたのだろうか。以前聞いてみたが元から知っていると言われた。これだから民に不思議な若様と言われるのだ。まぁ、皆熊太郎様を慕っておるからいいのだろうが・・・。

熊太郎様は他にも硝石や澄み酒を作られたり椎茸を栽培されたりして対馬を豊かになされているが、それらを売り新しい異国の武器や兵を全て銭で雇ったりと皆が考えないようなことをなさる。銭で兵を雇うことは何人か反対したがそのものたちは熊太郎様の説明を聞いて今では積極的に雇っている。異国の武器の部隊も津奈調親殿が率いている。次の戦では大いに活躍してくれるだろう。

当主になられた時熊太郎様は九州を取ると言われていた。初めは皆子供の言うことだと笑っていたが今では誰も笑わない。幼子に命じられたからと反発することなくむしろ嬉々として従っている。おかしな話だ。熊太郎様が今後どのようになさるかは儂にはわからないが傅役としてしっかりと熊太郎様を御支えしなければ・・・。

そういえば銀山の採掘を再開したそうだ。あれがあればまた宗家は力をつけることができよう。灰吹き法というものも熊太郎様が新たに取り入れられた。まさか銅から金がとれるようになるとは・・・。今商人を通じて大量の銅を仕入れている。これも宗家を潤した。

いったいこれから宗家はどのような道をたどるのだろうか・・・。


――――――――――1537年10月山本康範――――――――

「はなてっ」

わしの号令とともに大筒が放たれる。今は熊太郎様の指示で壱岐周辺の船を襲っている。

しかしこの大筒というものはすごいな。7・8町先まで鉄の玉を飛ばすことができる。これをまともに受けたらたとえ安宅船でも大破するだろう。それにわしらが今乗っている船は熊太郎様が考えられたガレオン船なる奇妙な船だ。何でも風の力で動くらしく同じ大きさの安宅船より速く進むことができる。皆はこの船のことを熊太郎丸と呼んでいる。おそらくいつも奇妙なことをなされて対馬を豊かになさっている熊太郎様と重ね合わせているのだろう。

海賊衆の者達は皆熊太郎様に敬服している。おそらくこの船の図案を描いたことと、壱岐周辺での海賊行為を限定的とはいえ認められたからだろう。朝鮮にまた船を止められるかもしれないのではないかと思ったが熊太郎様が先に壱岐の松浦党が襲っていると朝鮮・明に報告した。これを鵜呑みにした朝鮮・明は壱岐への船を止めた。さらに我等に松浦党及び国内の倭寇追討を要請してきた。これで壱岐や松浦郡を攻める口実が出来た。さらに船が来なくなったことで壱岐の国人達にかなり不満が溜まっているらしい。いま頼氏殿が調略をしている。

熊太郎様は忍びだからと蔑むことがないよう他のものに言い含めているようだ。はじめは蔑むことはなくとも陰口を叩くものがいたらしいがいまではそのような声は聞こえない。北原殿の功績もあるが熊太郎様の人徳も関わりのあることであろう。

これから宗家はどうなるかは船を動かすことしかできないわしには分からないがおそらく熊太郎様が御当主である限り宗家が滅びることはあるまい。わしに出来ることは最後の時まで熊太郎様を支えていくだけだ。


――――――――――1537年10月北原頼氏―――――――――――――――――

「それでは立石図書の裏切りは偽りであるということか」

「はい、松本殿の話ではそのようです。どうやら適当なところに誘き寄せそこで挟撃するつもりだとか」

「なんと・・・。熊太郎様の仰る通りだとは」

「それがしも知らせを受けた時には驚きました」

「分かった、熊太郎様には伝えておく。その方はそのまま調略を続けよ」

「はっ」

小頭が立ち去っていく。思わずため息が出そうになった。我が殿はいったいどこまで予想していたのだろうか。

先々代が挙兵しようとした時もそうだった。我らに監視をするよう命じた翌日に挙兵の準備を始めた。まるでそうなることが分かっていたかのようだ。殿に報告するとその後の動きは迅速だった。すぐに兵を集めると清玄寺に集結した先々代を襲撃した。あまりにも早い襲撃で先々代はあまり抵抗することができずに討ち死した。いや、あれは討ち死なのだろうか。あの襲撃で初めて使われた鉄砲によって蜂の巣のようになっていた。顔も判別できずに身に着けていたもので判別した。

そして今回の立石図書の件。殿には先を見通す力がある。それがあれば壱岐・肥前も夢ではないだろう。しかし九州北部には大友・大内が勢力を張っている。肥前を手に入れても4・50万石ほど。大友・大内を相手にするには少し心許ない。殿はいったいどのようにしてこれらを倒すのだろうか。おそらく内より崩していくつもりなのだろう。それを我らが行う。

殿は我らとほかの家臣とを差別することはない。我らには大江のものだとばれないようにと多聞衆という新しい名を与えられた。殿は我らに期待しておられる。その期待にしっかり応えねば・・・。

次回は来週の金曜日に投稿予定です。

今後ともよろしくお願いします。

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