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07.

 その後、何故かランドルが来たがこれもスルーした。あの人は何の用も無く自分の部屋を訪ねて来るようなタイプだとは思えないので我ながらベストな選択だったと思う。

 ただし、次に来た彼女を無視する事は流石に出来なかった。


「珠希? コルネリアが捜していたけれど、部屋にいるの?」


 ――イーヴァ。

 タッチの差とはいえ、異世界へ迷い込んで初めて出会った現地民。今までほぼ無償で助けてくれた相手であり、多分友達なのだと思う。そんな彼女をシカトする事は良心が咎めた。

 気怠い気持ちを振り払い、僅かにドアを開けて部屋にいる事をアピールする。ここでコルネリアがいれば台無しだったが、空気を読んだのか彼女の姿は無かった。


「……どうしたの?」

「コルネリアが捜してた。けど、人と会う気分じゃないみたいだね」

「ああうん。いや、流石にこれからの事について考えてたらお先真っ暗過ぎて。脳天気にははしゃげないわ」

「珠希が大人しいと、変な感じがする」

「いつも煩いって事? まあ、否定は……出来ないかなあ」


 そんなに騒がしくしてたっけ? とも思ったが、他と比べれば女子高生なんて非常に煩い生物だ。煩かったのだろう、恐らく。

 珍しくも落ち込んでいたのだが、遠慮なくイーヴァが中へ入ってきた。というか、最早お邪魔して良いかどうかも聞かれなかった。


「珠希、これからについてなんて今考える必要は無いわ」

「い、いやいやいや! 駄目でしょ! 将来の事はちゃんと考えないと!」

「今すぐ、混乱している時に決めた事なんて熟慮した結果と比べればお粗末なものだと思う。旅はどのみち長く続けるつもり。色々なものを見て、聞いて、それから決めるべきだと思う」

「ええ? そうかなあ……」


 イーヴァが床に座る。長居する気満々じゃないか。

 仕方ないので部屋の主である珠希もまた、適当な所に腰を落ち着けた。


「そうだよ。旅の中で帰る方法をまだ探すもよし、住みたい村や街に目星を付けるのもよし。あなたのしたいようにするべき。何故、人生の道をすぐに敷こうと思うの? 私達は明日の事でさえ見透す事は出来ないのに」


 言われてみればイーヴァの言う事は正しいのだが、現代日本で暮らしていたという性質上、先の見えない現状は不安で不安で仕方が無い。本当にそんな適当な感じでやっていけるのか、イーヴァの言う旅の終わりとは具体的にいつなのか、というか明日は何をして生きればいいのだろうか。

 遠くも真っ暗だが、足下を見ても真っ暗。お先は真っ暗である。そして人間は、先に見えない暗闇の中に歩を進められる生き物ではないのだ。


「珠希、考え過ぎだよ。いい? もう考えるのを止めるの。考えたところで何か変わる? 私達、子供の浅慮で人生を左右出来ると思っているのなら大間違い。流されるままに我慢する事も大事」

「考えるのを、止める……」

「勿論、考える必要がある時もある。けれど、今は絶対にその時じゃない。一度落ち着くべきだと思うよ、珠希は。今日はぐっすり眠って、明日になったら明後日の事から考えよう」


 考える事を止める。

 それは酷く不安定さを覚える発言ではあったが、イーヴァの言う通り考えるのを止めれば幾分気が楽になる事も分かっている。


「珠希」

「うん?」

「散歩にでも行こう。外の空気を吸えば、気が休まるかもしれない」

「……分かった、ありがとう」

「いいえ」


 オーバーヒートしかけている頭を冷やすべく、珠希は立ち上がった。上に適当な上着を羽織る。部屋に備え付けてあったものだが、多分使ってもいいだろう。


 その後、3時間も外を歩かされた挙げ句、休む間もなく夕飯。風呂に入って上がる頃には疲れ切っていた為、倒れるようにベッドインした。なお、この緊迫した状況下で翌日にコルネリアが起こしに来るまで熟睡。自分は案外単純な人間なのかもしれない。認めたくは無いが。というか、これはイーヴァの作戦勝ち、と形容すべきか。


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