表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/151

19.

 真っ黒な体躯のドラゴン――その、腕に狙いを定める。スプーンを曲げる時より強く、いっそ神に祈るような気持ちでどうか曲がってくれと念じた。命が懸かっているので、当然こちらも必死だ。

 と、地面が震える程の咆吼を上げたドラゴンが心なしか苦しそうにのたうち回っているように見える。隣に立っていたハーゲンが眉根を寄せた。


「魔法か何か使っているのですか、珠希殿」

「あ、いや、だから……超能力を少々嗜んでいてですね」

「末端部を押さえているのでしょうか?出来ればこう、上から押し潰すように動きを止められませんかね。効いてはいますが、これではこちらへいつ飛び火するか分かりませんし」


 ――何か無茶な事要求してきた!!

 ハーゲンは期待に満ちた目をしている。そのくらい出来て当然だ、珠希の発想が足りなかったに違い無いというような目。どういう脳の構造してるんだろこの人。

 しかし文句を垂れている場合では無い。やる前から諦めていては駄目だ!

 アドレナリンか何かが脳で大量分泌されているのか、今なら何でも出来そうな気がしたので、ハーゲンの言う通り、今度は上から対象を押し潰すイメージをする。それまで暴れ回っていたドラゴンの動きが段々鈍くなってきた。


「あれ!?これ、もしかして成功してませんか!?」

「いや、どうして貴方が一番驚いているんですか」

「初トライでした」

「出来ないかもしれないなら、最初にそう言ってくださいよ」


 動きが目に見えて遅くなったドラゴンは困惑したように弱々しい呻き声のようなものを漏らしている。ヴィルヘルミーネもまた、怪訝そうな顔をしながらも残った羽を斬り落とした。

 好かさず、ダリルがその大剣にありったけの体重を乗せ、胴に突き立てる。真っ赤な鮮血が洞窟の地面をしとど濡らした。

 最後、コルネリアが魔法のようなものを発動。氷で出来た大きな刃をドラゴンの頭上から落とし、その首と胴体を切り分けた。鮮血を撒き散らしながらポトリと頭が地面に落ち、少ししてから大きな胴体が地面に倒れる。


「討伐完了、お疲れ様」


 スポーツでも終えた後のように、爽やかにダリルが額の汗を拭う。それには返り血が混ざっており、彼の服に赤い染みを作った。

 一仕事終えた騎士達がドラゴンから離れ、何故か自分とハーゲンがいる場所に自然と集合する。騎士団を代表してか、晴れやかな笑みを浮かべたヴィルヘルミーネが口を開いた。


「皆さん、ご協力有り難うございました。これより帰還します。ところで、珠希殿は……その、悪い意味で訊ねているのではなく、純粋な好奇心から訊きたいのですが――混血なのでしょうか?」

「えっ!?いや、うちの両親は多分初代からずっと人間ですけど!?」

「そ、そうでしたか。すいません、重力操作系の魔法で援護をして頂いたようなので、てっきり混ざりかと……」

「さっきも言いましたけど、あの、超能力です」


 この後、ロイとイーヴァは素材のはぎ取りを始め、最終的に戻れたのは日がどっぷりと暮れた後だった。


 ***


 王都のお城へ戻ってみれば、まるで英雄の凱旋のような扱いを受けた。王都の人々からは絶え間なく声を掛けられ、師団長であるヴィルヘルミーネはそれに対し、どこか快活とした笑みで応える。

 ――これ、ダリルさんが団長やってた時はどうしたんだろう。

 不意にそんな疑問が脳裏を掠めたが、訊かない方が良い。想像出来ない時点で何かを察してしまいそうだし。


 そのままごくごく自然に城の割当てられた部屋まで戻れば、ドラゴン討伐の祝いに立食パーティーをするとかで、休む暇も無くホールに集められた。

 そこには作戦には参加していなかったであろう、派手な騎士や官僚のような人物がひしめきあっている。

 途端に緊張が身体を駆け巡り、今日は何となく会話が少なかったイーヴァに話し掛けた。


「ね、ねぇ。これって勝手に取って食べていいのかな?バイキング形式?」

「そうだよ。珠希、お腹が減っているんでしょう?好きなだけ取って食べていいから」

「人が食い意地張ってるみたいに言うのはちょっと……間違ってはいないけど」


 はい、とイーヴァから皿を手渡された。料理は絶え間なく運ばれてきており、食欲をそそるように僅かに白い湯気が見える。

 今日は疲れたな、とそこまで思考して不意に思い至った。

 魔力を少しでも使うと人はバテてしまう、そう聞いていたはずだが、自分はピンピンしているという事に。俄には信じ難いが、コルネリアの言う通り魔力をタンクしているのだろうか。とはいえ、全くそんな事をした覚えはないが。


「――あ、イーヴァ。コルネリアがどこへ行ったか知らない?あの人、ちょっと変な所あるし、目を離さない方が……イーヴァ?」


 皿を手渡して来たはずの彼女は忽然と消えていた。どこへ行ったのだろうか。というか、よくよく考えたら孤立している。知らない城のパーティに招かれて単独行動を取る勇気など無いので、誰かと合流したい。

 絶対に暇であろうフェイロンかロイ、後はコルネリアの姿を求めて珠希は視線をさ迷わせた。ダリルは職場の同僚と積もる話もあるだろうし、あまり見つけても声を掛けない方向で行こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ