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01.

 診療所へ再び寄る為、ルーナの街へ戻った。戻ったのだが、街の入り口は人でごった返していた。


「な、何か人多く無い?お祭りとかあるの?」


 さすがに珠希も動揺してそう訊ねると、いや、という否定的な言葉がイーヴァの口から漏れた。


「今月は何も無かったと思う」

「えー!俺、衛兵に何かあったのか訊いて来ようか!?」


 皆の承諾を得るより先に、ロイが駆けて行く。その先には銀色の上下セットの鎧に身を包んだ兵士らしき人物がいた。そういえば、最初ルーナに来た時にはあんな物騒な出で立ちの人達はいなかったはずだ。

 臆すること無く武装した兵士へ何事かを訊ねるロイ。少し離れているし、回りが騒がしいので何を話しているのかは分からない。ややあって、片手を挙げた彼は衛兵に礼を言うと戻って来た。


「で、どうだったのだ?」

「んー、よく分かんないけど、王都が閉鎖中らしいぞ!」

「はぁ?」


 フェイロンが訝しげに眉根を寄せた。ダリルが素っ頓狂な声を上げる。


「王都が閉鎖!?珍しいなあ。騎士団が一新したとか、王都にいないとか、か?いやでも、理由としては弱い気もするな」

「これからどうするんですか?ルーナで待機?」

「オトウェイに行くかい?ルーナより少し大きな街で、神殿もちゃんとあるよ。まあ、王都からは少し離れる事になるけれど」


 ダリルの推す提案は少しばかり信用ならない。彼は王都へ行きたくなく、それとなく王都から離れようとしている、という見方もあるからだ。

 ちら、とイーヴァの意見を仰ぐ。いつだって決定権は彼女にあるのだが、その彼女は「そうだね」、と同意の意を見せた。


「ここで足踏みしていても仕方が無いし、オトウェイまで足を伸ばしてみようか。ただ、王都が閉鎖って事はオトウェイも人が多いだろうけどね」

「分かった!で、オトウェイっていうのはどっち――ん?」


 視界の端で何かの光が反射した。思わずそちらを見て、目を見開く。

 軽い鉄の音を奏でながら、先程ロイが話をしていた兵士が軽く走ってこちらへ向かって来ているのが分かったからだ。いや、人は多いし自分達以外の誰かに用事なのかもしれないが、あの甲冑が走る様はなかなか恐ろしい光景である。

 ――が、そんな珠希の予想通り、あらゆる人物を素通りした兵士は目と鼻の先にまで迫ってようやく口を開いた。


「ダリル団長、何故ここにいらっしゃるのですか!?」


 曖昧で優しげな表情だったダリルの顔が目に見えて分かる程引き攣った。事情が分からない珠希だけが何事か、という表情をしていたが他の面々は「あーあ」、と言いたげの空気を漂わせている。

 狼狽えた様子のダリルは衛兵ではなく明後日の方向を見ながら小さく片手を挙げた。


「あ、あー、久しぶり。えーっと、誰だったっけ?俺の部下だったっけ?」

「いえいえ、私などただの兵士ですから。団長が覚えていないのも無理はありません!門番Aみたなものですからね、自分は!」

「そっかー……」


 じり、とダリルが一歩後退る。

 そんなことは意にも介さず、無意識か何か、兵士は一歩足を前へ踏み出した。


「いやあ、まさか私が当たりを引くとは思いませんでした!団長、ヴィルヘルミーネ団長から、王都へ召集をかけられておりますよ!」

「え!?いやごめん、待って。俺、騎士団辞めてるんだけど……」

「存じております。今は旅をしていらっしゃるとか……」


 衛兵の視線がこちらを見る。そこに感情の色は無く、ただどんな人間なのかを確認したような、そんな無機質さだった。これは修羅場なのでは?


「お、俺は今護衛業をやって生計立ててるんだから、俺の意向だけで王都に進路変更は出来ないよ!それに、閉鎖してるんだろ、王都」

「ダリル団長なら顔パスなので問題ありません!そちらの方々も、どうでしょう?団長の客人という事で王城の一室を貸し出します――と、ヴィルヘルミーネ団長が仰っていましたよ」


 ゆっくりとイーヴァがダリルを見、そして衛兵に視線を移す。彼女はまるで決まっていた文言を口から吐き出すように淡々と応じた。なお、その際に縋るようなダリルの視線はきっぱりと無視する。


「私達は元々、王都へ行く予定だったのだから、王都へ行く事は構わない。城への召集に応じるかどうかは、私ではなくダリルが決めるべき。行くのならちゃんと私達はあなたの予定にも付き合うから」

「ええええ!?空気読んでおくれよイーヴァちゃん!」

「駄目。行きたくないのなら場を濁すのではなく、ちゃんとそう伝えるべきだと思う」


 差し出がましい話ですが、と衛兵が苦々しい口調で話し始める。


「今の新しい団長――ヴィルヘルミーネ殿が、団長たる振る舞いをする為には、ダリル団長が行って、戻らない事をきちんと説明していただいた方が良いかと。私のような末端兵は指揮系統が混乱するとすぐ散り散りになってしまう、烏合の衆ですからね。頭脳にはきちんと働いてもらわなければ、力を発揮する事が出来ません」

「ぐっ……」

「勿論、私はまたダリル団長が戻られても構いません。団長の采配は、私達にとってはとても動きやすいものでしたし」


 どうしようかなあ、と頭を抱えたダリルの答えを急かすこと無くまんじりと観察するイーヴァ。場合によってはダリルが旅のメンバーに戻らなくなるかもしれないのに、随分と余裕な事だ。


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