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サクラサケ!  作者: tkkosa
6/12

第5話



 ジリリリリ、翌日、ジリリリリ(さくらさん、翌日は目覚まし時計の音で挟むものでは

ありません)。

 ジリリリリ、グースカ、ジリリリリ(あっ、起きないパターンですね・・・こらっ、起

きなさいっ)。

 ジリリリリ、うっさい、ジリリリリ(口ごたえっすか、上等です・・・このっ、ピコピ

コ、このっ、ピコピコ)。

 あぁっ、ピコピコハンマーで叩くんじゃないっ(起きるまで続けますよ、ピコピコ)。

 わっ、分かりましたよ・・・ジリリリリ、チンッ(ようやく、目を覚ますさくら)。

 あぁ、眠いよぉ(昨日、それなりに飲んでましたからね)。

 あと5分、眠らせてちょうだいな(それ、5分経ってから起こそうとしたら、また「あ

と5分」って言うんでしょ)。

 ドキッ、そんなことないですよ(動揺してるじゃないですか、認めませんからね、そん

なこと)。

 なんだよ、器の小さいやつだなぁ(あなたには言われたくありません)。

 ねぇ、ところでさぁ、なんで私ソファで寝てるの(あれ、覚えてませんでしょうか)。

 記憶なくしたんじゃないけど、寝起きで頭が回んないの(元々、頭が回ってないんじゃ)。

 なにをぉっ、こいつめっ、ピコピコ、ピコピコ(ピコピコハンマーを奪い取り、反撃に

うつるさくら)。

 くるくるパー扱いしやがってぇ、ピコピコ、どうだっ、ピコピコ(まっ、参りました、

白旗です)。

 よしっ、これからは私のことを才女という設定にしなさい(フンッ、そいつは無理な話

だな)。

 このやろ〜、ピコピコ、ピコピコ(もう、さっきの説明しますから定位置に戻ってくだ

さいっ)。

 ちっ、今日はこのへんにしといてやるよ(・・・・・・っていうか、完全に起きてるじ

ゃないですか)。

 誰が起こさせたんじゃ、誰がっ(言葉遣い、言葉遣い)。

 どなた様が起こしてくださったのでございましょうか、どなた様が(文法的にはいいん

ですが・・・どうにも違和感が抜けない)。

 そんなことより、説明でしょ、説明っ(あぁ、はい、はい)。

 私はどうしてソファで寝てるんですか、昨日の打ち上げの席から帰って来て(ちなみに、

どうしてだと思いますか)。

 どうって・・・例えば、絵里奈さんを介抱するってことになってたから、酔いつぶれた

絵里奈さんをここまで連れて来て、ソファに寝かせるのはなんだからってベッドに寝かせ

て、私が代わりにソファに寝た、とか(それです、正解)。

 えぇぇっ、適当に言ったのにぃ(その割には、ずいぶんポイントをおさえてますけれど)。

 へぇ、私の第六巻ってすごいんだなぁ(漢字が違ってます、それじゃあ単行本です)。

 あぁ、すいません、最近ドラマの「花より男子」のDVDを見てたんで(そういうこと

ですか・・・あれ、「花より男子」って五巻までしかないですよ)。

 ・・・・・・(なんで、精神統一みたいに目つむって黙ってるんすか)。

 正直、この言い合いで勝てる見込みがないと思ったんで(だからって、ダンマリはなし

ですよ)。

 ムダなことはしない主義なんです、私って(ムダなことばっかりしてる印象なんですけ

ど・・・・・・)。

 あ〜ら、ごめんくさい、プ〜ッ(あっ、ついに屁までしやがったっ)。

 アハハ、鼻つまんでる、かわいい(誰のせいですか、女の子でしょ)。

 しょうがないじゃん、自然現象なんだから(こういう場なんだから、気を遣ってくださ

い)。

 ありのままの自分を見せる方が好印象じゃないですかね(でも、屁はないでしょう

に・・・・・・)。

 斬新でいいじゃないですか、それはそれで(斬新の方向を間違えてるんですよ、今後や

めてください)。

 でもさぁ、起きぬけってしたくなるじゃん(まぁ・・・確かに)。

 寝てる間に溜まってるんだろうね、なんなら寝てるときにしてる人もいるもんね(あぁ、

います、います)。

 あれ、無意識でやってるんでしょ(多分、空に飛び立つ夢でも見てるんじゃないですか)。

 ジェット代わりってことなの、アハハ、面白い、面白い(褒めてもらってなんですが・・・

そろそろ、話を戻しませんか)。

 少年マガジンと少年サンデーはどっちが買いたくなるかって話だっけ(・・・・・・ど

っから、そんな話が出てきたんですか)。

 じゃ、いちごサンデーとチョコサンデーはどっちが美味しいかって話だっけ(なんで、

サンデーつながりなんですか)。

 あいにくですが、今日はマンデー(・・・・・・親父ギャグなんか今いりませんから)。

 そんでもって、本題は何なのか早く言いなさいよ(どうして、あなたに怒られないとい

けないんですか)。

 絵里奈さんを私の家まで連れて来て、ベッドに寝かせてあげてるんでしょ(しっかり、

覚えてるじゃないですか)。

 当たりめぇよ、べらぼうめっ(そこだけ、チャキチャキの江戸っ子っすか)。

 待てよ・・・ってことは、私の部屋には絵里奈さんが今眠ってるんですか(そういうこ

とです)。

 そろ〜り、そろ〜り、ホントだっ(自分の家なのに、抜き足、差し足、忍び足)。

 ってか、かわいい寝顔してまんなぁ(さくらさんも負けてないですよ)。

 マジですか、この寝顔に負けてないってことは上物ですぜ(そうです、そうです)。

 どんな感じですか、お姫様みたいな顔してますか(口をあんぐり大開きにしてて・・・

たまに、よだれをダラーッと垂らしてます)。

 おぉ、かわいい、かわいい・・・って、なんでやねんっ(ノリツッコミ、使いこなせる

ようになってきてますね)。

 まさか・・・寝言やいびきや歯ぎしりはしてませんよね(寝言といびきはたまにありま

すよ)。

 そうかぁ・・・でも、歯ぎしりはインパクト強いからよかった(彼氏の家ででは避けた

いですよね)。

 寝言っても、かわいいもんでしょ(この前、谷治さん喜多さんって言ってましたよ)。

 ・・・・・・どういう意味ですか(こっちが聞きたいですよ)。

 いびきって、どんなレベルざんしょ(うぅん、疲れぐあいと比例して音量も上がってき

ますね)。

 すごい音のときもあるってことですか(レディに失礼ですが・・・カバでもいるのかと

思ったことはあります)。

 そこまで・・・あっ、そういえば、ウチにカバがいるんです(バレバレの嘘はつかない

の)。

 なんでですか、ウチの全てを見たっていうんですか(はい、全て見てますけど)。

 ・・・・・・じゃあ、ごめんなさい(分かればよろしい)。

 あっ、全て見たってことはっ、タンスの中まで開けたんですねっ(そこはプライベート

なんで見てないですよ、安心してください)。

 よかった・・・でも、それじゃ、カバがいないなんて言えないじゃないですか(絶対、

タンスの中になんていませんから)。

 分かりませんよ、ものすごく平べったいカバかもしれませんよ(苦しまぎれにしか聞こ

えませんから、諦めてください)。

 はい、はい、はい・・・でっ、何の話でしたっけ(・・・・・・あなたのせいで、全然

話が進みませんよ)。

 まぁ、これはこれで楽しいからいいじゃないですか(絵里奈さんとだと、スムーズに会

話が進むのに)。

 ・・・・・・また、主役降板なんて言わないでしょうね(いい加減に進行したいんで、

そういう話はナシにしときます)。

 ふぅ、やれやれだよ(戻しますからね、絵里奈さんの寝顔を見たってとこからです、3・

2・1・キュー)。

 ねぇ、キューちゃんのお新香って美味しいよね(だからっ、進行したいって言ってるで

しょっ)。

 はぁっ、作者さんが怒り出してるっ(本気で降板させてもいいんですよっ)。

 ダメです、それは勘弁です、辞めたくなんかありません(やんのか、やんないのか、ど

っちなの)。

 やりますっ、すがりついてでも主役は私が続けますっ(だったら、言うことを聞くのっ)。

 はいっ、誠心誠意あなた様のために尽くさせていただきますっ(分かったんですね、じ

ゃあキュー)。

 絵里奈さん、寝顔がかわいいですねぇ(軌道修正、やっとこさ成功)。

 今日は絵里奈さんは休みなので、このまま寝かせておいてあげましょう(そうですね、

その方がよさそうです)。

 鍵を置いて、メモ書きをして・・・朝ごはんとか、作っておいた方がいいのかな(どち

らでもいいと思いますけど)。

 でも、こういうの作ってあったらさ、私の株が上がりそうじゃない(そんな目的でしな

さんな・・・それに、絵里奈さんが起きたときに食欲がなかったとして、さくらさんが朝

食を用意してくれてるから食べないと悪いって無理に食べさせる結果になる可能性だって

ありますよ)。

 そういう考えもありますね、なるぽっど(・・・・・・一応ですが、なるほどってこと

ですね)。

 じゃあ、何も作んないのがよさそうですね(はい、飲み物ぐらい書いてあれば)。

 飲み物・・・どういうの飲むんだろう(朝はコーヒーだそうですよ)。

 コーヒー・・・賞味期限、大丈夫だったかな(夏場はそんなに飲まないですしね、家で

は)。

 あっ、まだ持ちこたえてます(じゃ、それでいいでしょう)。

 ですね、私はそろそろ出掛けるとします(はい、いってらっしゃい)。

 じゃあな、あんじょう頼むでぇ(・・・・・・頼むんなら、頼む内容を言ってってくだ

さい)。

 別に、内容なんかありませんよ(やっぱり、言い逃げかい)。

 ほんじゃあね、テッテケテ〜(やっと、会社へ出かけたさくら)。

「あっ、宮前さん、おはようございます」

 その声は管理人さん、またまたまたまたまた今日もちゃんちゃんこでお掃除中ですね。

「おはようございます、いってきます」

 さくらさん、笑顔で挨拶中。

「いってらっしゃい」

 管理人さん、笑顔を継続中。

 そして、さくらさんは通勤開始。


          ☆


 うぅん・・・あれっ、どうしたんだろう(絵里奈さん、お目覚めです)。

 あっ、おはようございます(どうも、おはようございます)。

 うぅんと・・・ここはどこ(私は誰、ってさくらさんなら絶対言うんだろうな)。

 見たことない部屋・・・誰もいなさそうだし(さくらさんの部屋です、本人はもう会社

に出かけました)。

 宮前さんの部屋なんですか、会社って・・・そうか、私は休みなんだ(昨日が本番でし

たから、今日はオフですよ)。

 あぁ、身体が重いなぁ・・・とりあえず、起きよう。

 トコトコ、パシャパシャ・・・タオル、使っていいですよね(はい、いくらでもどうぞ)。

 トコトコ、あっ、宮前さんからだ(書き置き、見つけましたか)。

「絵里奈さん、おはようございます。昨日は約束どうりに、私が介抱させてもらいました。

絵里奈さんをかつぎ、タクシーに乗せ、その料金も私持ち、そして私ん家のベッドまで運

びました(何かの見返りを求めてるとしか思えない、詳細な状況報告)。ぐっすり眠ってい

たので、起こさずに私は会社へ向かいます。ウチにあるものだったら、なんでも適当に使

ってくれてかまわないので。お帰りの際には、鍵をかけて605号室のポストに入れてお

いてください」

 そうかぁ、宮前さんに迷惑かけちゃったなぁ。お詫びの電話入れておこう、今って何時

ですか(えぇと、10時過ぎですね)。

 まだ仕事始まったばっかか、もう少し時間おいてからにしよう。

 あっ、富士くんからメールが来てる。

「絵里奈さん、おはようございます。昨日はだいぶ酔ってたみたいですが、大丈夫ですか。

まぁ、宮前がちゃんとやってくれてるんだろうから、問題ないでしょうけど。・・・って、

人の心配とかしてますが、俺もそれなりに潰れたんですよ。身体は大丈夫なんですけど、

昨日タクシーに乗った後の記憶とかなくって。マズイですよね、しかも着の身着のままで

寝てるし。きっと、俺臭ってんだろうな。風呂でも入ってさっぱりします、絵里奈さんも

ゆっくり休んでください」

 気遣いのメール、富士くんは優しいですね(こういうの、さくらさんにも出来ないのか

な)。

 宮前さんもです、良い後輩に恵まれて私は幸せですね(いえいえ、絵里奈さんの人徳で

すよ)。


「もしもし、宮前さん」

「絵里奈さん、どうですか」

「大丈夫だよ、いろいろありがとうね」

「いえ、私は何もしてないですよ(その割りには、書き置きに事細かに書いてたじゃん)」

 13時、フロートアップの昼休憩の頃合を見計らって、宮前さんに電話をかけます。

「会社の方、どうなってるかな」

「昨日のイベントの件ですか、SSIの事務所サイドから「失礼しました」ってお詫びの

電話がありまして。明日、フロートアップの方にも直接お詫びに来るそうです。こっち側

に不備はないんですから、絵里奈さんは気にしないでいいんですよ」

「うん、ありがとう」

 そうか、特に問題はなかったんだ(よかったですね)。

 はい、みんなにも心配かけたみたいで申し訳ないです。さっき、携帯を見たらAチーム

のみんなからの着信がありましたし(仲間って素晴らしいですね、うんうん)。

 お言葉に甘えて、今日はリフレッシュさせてもらうことにしました(そうですね、羽根

のばしてください)。

「どうでした、昨日のこと(んっ、この声は)」

「大丈夫だって、そんな気にしなくていいみたいよ」

「そうですか、それならよかった」

「うん、今日はパッと遊んじゃおうよ」

「はい、そうしましょう」

 今日は富士くんと野球観戦することになり、横浜で待ち合わせをしました(やっぱ、あ

の声は富士でしたか)。

 宮前さんの家にいるときに連絡したら、2人とも特にやることがなかったので「じゃあ」

と事が運んでいき(にしても、野球観戦とは意外な)。

 そうでもないんですよ、前から2人とも野球が好きって話はしてたので(へぇ、そうな

んですか)。

 富士くんは神奈川出身だから横浜ファン、私は東京出身だから巨人ファンです(そこ、

ヤクルトにはいかなかったんですか)。

 あぁ、父親が巨人ファンだったから、小さい頃からテレビで観さされてたんです(なる

ほど、そういうのありますよね)。

 今日は、運よく横浜スタジアムで巨人と横浜が試合をするそうなので、じゃあ観に行こ

うということになりました(よく、そんなうまいこと巨人と横浜の試合が・・・フィクシ

ョンだからか)。

 当日券もあったので、わざわざ横浜まで来たかいがありました(でも、今日って月曜日

ですよね・・・セリーグの試合ってないんじゃ)。

 それが、以前に雨天順延になってた試合が今日組まれてたんです(よく、そんなうまい

こと延期試合が・・・フィクションだからか)。

 試合開始の18時までは時間があったので、中華街を中心に2人で歩きました。いろん

なタイプのお店があって、時間を感じないぐらいに楽しめましたよ(ホント、御飯ひとつ

にしても一体どこに入ったらいいんだか分かりませんもんね)。


 そして、いよいよ巨人と横浜の試合が開始(プレイボール、っす)。

 その前にネックになったのが、どこの席に座ればいいか(あぁ、1人が巨人ファン、1

人が横浜ファンですからね)。

 一緒に楽しもうと来たのに離れて座るのはなんだし、隣の席に座ったらどっちかが応援

できなくなりますし(複数でこういう場に来たときの悩みですね)。

 どこに座ろうか迷いましたが、結局レフトスタンドにしました(ほぉ、なぜに)。

 横浜スタジアムですから、ホームチームに敬意を込めてというところで(なるほど、素

敵な心がけですね)。

 巨人ファンといっても、父親ほど執着心をもって応援してるわけでもないし(うんうん、

頑張ってる姿を見ることが何よりのっていうところですか)。

 とはいっても、勝敗も気になりますけどね(まぁ、素直な意見ですよ)。

 不甲斐ない成績だったら悪い気になるし、それこそ優勝すれば歓喜ですし(そうです、

そうです)。

 そういうわけで、試合の話にいってもいいですか(あっ、進めてもらってすいません・・・

ったく、無理してまで話をそらす誰かさんに見習ってほしいです)。

 序盤は両先発の投げ合いになりました、スタンドも固唾を呑んでるといった様子です(ほ

う、ちなみに先発は)。

 横浜が寺原投手、巨人が木佐貫投手です(あぁ、確かに前半にくずれることが少ない投

手ですね)。

 中盤になると、両チームとも打線がつながるようになり、1点、1点、と入るようにな

ります(うむ、でも決定打とは呼べませんね)。

 試合が決まったのは7回、同点から村田選手の一発で勝ち越した横浜がそのまま勝ちま

した(あぁ、村田選手、いいホームランの打ち方しますよねぇ)。

 ですね、見ていて気持ちのいいホームランはいいですよね(誰がいいですか、私は新井

選手が思いきりよくていいんですが)。

 あぁ、私は巨人ファンもありまして、イ・スンヨプ選手です(なるほど、あの打ち方は

キレイですね)。

 試合は横浜の勝ちになりましたが、結果としてレフトスタンドに座っててよかったです

(周りが良い雰囲気ですからね)。

 負けちゃうとね、変な空気が漂いますから(飲まねぇとやってられるか、みたいな)。

 はい、特に阪神ファンなんかすごそうですよね(すんません・・・私、阪神ファンです)。

 あっ、そうなんですか、すいません(いいんです、いいんです、絵里奈さんと同じく執

着心はさほどないファンなので)。

 よかった、作者さんの気を悪くさせてしまったのかと思って・・・・・・(いえいえ、ラ

イトな阪神ファンですから)。

 まぁ、富士くんがいい気分になれたようなのでよかったです。

 野球観戦が終わると、2人でランドマークタワーのスカイガーデンまで行きました。日

本一の高さという展望台フロアだけあって、そこからの雄大な景観は目を見張るものがあ

ります(おおぉ、これは心奪われますねぇ)。

「きれ〜い、こんな夜景見たの久しぶり」

「俺もです、たまにだとよけいに良く映りますよね」

 薄暗い照明の中にいる富士くんは、なんだか大人びた印象に映りました。いつもは忙し

さにもまれて、近くにいる人たちのことを深く感じる余裕もないのですが、今私の横にい

る富士くんは情緒のある繊細な顔つきで少し見とれてしまいそうです。

「どうかしました」

「んっ、うぅん、なんでもないよ」

「よかったです、今日は絵里奈さんに笑顔が戻って」

「・・・・・・ありがとう、気にしててくれたんだ」

「絵里奈さんが元気ないと、Aチームの活気が半減しますから」

「そんなことないよ、みんながいてくれるから私も頑張れるんだって」

「明日からまた頑張りましょう、いつでも力になりますから」

「うん、ありがとう」

 なんか変でした、これまでなかった感情が横入りしてきたみたいにフッと私の心の中に

出てきたんです。

 分かってます、この気持ちがどういうことなのかってことは(・・・もしや・・・)。


          ☆


 シャワワ〜、翌日、シャワワ〜(さくらさん、その翌日・・・もういいか、別に)。

 ちょっと、ちゃんとツッコみなさいっ(もう、この「翌日」のパターン、いいんじゃな

いでしょうか)。

 何を言いますか、私の1番のお気にですよ(・・・・・・そうだったんだ)。

 これは是が非でも続けさせてもらいますからね、作者さんもきちんとツッコんでくださ

いよ(でもねぇ、読者のみなさんも飽きてるかもしれませんよ)。

 ダメです、スマスマのビストロとか、いいとものテレフォンショッキングとか、何がど

うなろうとも続いてるコーナーってあるでしょ(はい、そういえば)。

 それと一緒です、何がどうなろうとこれは続けていきますよっ(・・・・・・そういう

ことなら、分かりました)。

 っもう、また朝っぱらから言い合いですよ(望んでるわけじゃないんですが・・・とこ

ろで、朝風呂ですか)。

 はい、朝は寝坊しないかぎりはお風呂に入ってるんです(目が覚めますからね、神経の

活性化にもいいらしいですよ)。

 1日をすっきりして始めるという意味でもいいんですよ(私は朝は入らないんですが、

やっぱりおすすめですかね)。

 もちオススメです、なんなら湯舟に温泉の素まで入れちゃったりして(それは、さすが

に夜でもいいんじゃ)。

 いいんです、自分の身体の現実を見なくてもすむし(あぁ、お腹がプニプニとか言って

ましたよね)。

 そうなんです、このお腹がどうにもこうにも・・・ああぁっ、覗いてるぅっ(やばい、

バレたっ・・・ってか、気づくの遅くないですか)。

 このやろ〜、ついに見やがったなぁっ(大丈夫ですって、温泉の素で全然見えませんか

ら)。

 ああぁん、お腹のたるみを見られたよぉっ(・・・・・・そこなんですか、1番見られ

たくないの)。

 なんだよぉ、まだ誰にも見られたことなかったのにぃ(そうなんですか・・・まぁ、見

てないんですけど)。

 ・・・・・・嘘ですけどね(この状況ででも嘘つきますか、あなたは)。

 いいから早く出てけっ、この泥棒猫がぁっ(・・・・・・一応ですが、表現が違ってま

すよ)。

 ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ(作者に対するいらだちをブツブツ

愚痴るさくら)。

 あぁあ、一服でもしてねぇとやってらんねぇぜ、スパー(吸わない人でしょ、さくらさ

ん)。

 なに言ってんすか、常習ですよ(怪しい・・・ちなみに、銘柄は)。

 銘柄・・・マイルドセブンっす(めっちゃ王道じゃないですか、知ってるの言っただけ

でしょう)。

 うっさい、口ごたえをするんじゃない(追いつめられたら、大抵その逃げ方しますよね)。

 あたいは生粋のワルですぜ、これほどのワルがいたのかってくらいですよ(じゃあ、武

勇伝の一つでも語ってくださいよ)。

 あたいはね、駅のアナウンスで「白線の内側までお下がりください」って言われても、

ちょっとだけ白線を越えるんですぜ(それまた、かわいいワルですね)。

 かわいくなんかないもん、ものごっつワルなんだもんっ(じゃあ、ワルっぽいセリフの

一つでも言ってくださいよ)。

 顔はやめときな、ボディにしな、ボディに(これ、絶対違うな)。

 ああぁん、ワルだもん、あたいはワルなんだもん(もう無理ですから、さくらさん)。

 なんで、あたいの思い通りに事は進まないんだよぉ(進まないような方向に向かってる

からじゃないでしょうか)。

 そんなぁ、別に「この先、行き止まり」なんて書いてなかったもん(そんなに親切じゃ

ないですって、世の中・・・そろそろ、元に戻りませんか)。

 うぅ・・・その代わり、私のこと慰めてくれますか(はいはい、さくらさんは世話がや

けますね・・・よしよし、頭ナデナデ、よしよし、頭ナデナデ)。

 ありがとうございます、作者さん、優しいですね(そんなこと・・・なんだか、立場が

逆転してる、しめしめ)。

 お母さんみたい、私のお母さんになってくれませんか(それは絶対に無理です)。

 なんでですか、いいじゃないですか(ありとあらゆる意味でもって、100%無理です)。

 その100%、10%にしてみてる気はありませんか(どんなことを言おうと、相思相

愛だったとしても無理です)。

 しょうがない・・・100歩譲って、お父さんになってください(それは譲ったといえ

るのか・・・それに、さくらさん、両親がいるでしょうに)。

 います、それでも構いませんっ(めちゃくちゃ言わないでください)。

 気持ちは揺るぎません、お友だちからお願いしますっ(ねるとんかいっ、お友だちから

お父さんへってどういうことですか)。

 そういうことですよ(また言い逃げしたな、さくらっ)。

 ひゃあっ、作者さん怖いです、いってきま〜す(待てっ、逃げるんじゃないっ、さくら

っ)。



「作者さ〜ん、作者さ〜ん(完全に立場が入れ替わるの図)」

 ガタンゴトン、作者さ〜ん、ガタンゴトン(満員電車から呼びかけるさくら、応えない

作者)。

 いつもみたいに言い合いしましょうよぉ、主役降板とかの掛け合いでもいいからぁ(無

視されるなら、まだ主役が誰だのと言い合ってた方がいいさくら)。

 ふんっだ、そっちがそれなら、こっちだって自分で暇つぶししますからいいですよぉ〜

だ(んっ・・・どうする気だ)。

 羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹、羊が5匹・・・・・・(なんて、寂しい時間

の潰しかた・・・見てられないから早送り、ピッ)。

 羊が999匹、羊が1000匹、羊が1001匹(なんで、そんなに続けてるんだ・・・

凄すぎる、さくらさんの負のパワー)。

 羊が1002匹、羊が1003匹、羊が1004匹(もはや、暗示にかかってるぐらい

のオーラ・・・もう見てられません、さくらさん、さくらさんっ)。

 羊が1005匹、羊が・・・はぁっ、なっ、なんですか(戻ってきてください、相手し

ますから)。

 ここはどこ・・・私は誰(あっ、やっぱり言った・・・さっきの絵里奈さんとのやりと

りを参照)。

 あぁ、いつのまにか異次元空間に迷い込んでいました(すいません、そんな追いつめら

れてるとは知らずに)。

 さっきのですが、また相手してもらっていいんですか(はい、もちろん)。

 私なんかで、私なんかでいいんでしょうか(何を言いますか、さくらさんじゃないとい

けないんです)。

 なんて嬉しい言葉、泣いてもいいですかっ(・・・・・・満員電車ですからおさえてく

ださい)。

 では、この気持ちを作者さんへ贈る即興ソングとして歌わせていただきます(・・・・・・

なんか、嫌な予感がするのは私だけでしょうか)。

 ピンカラコ〜ン、チョンチャンチェ〜ン、トトォコピッタンチャ〜ン(なんだ、このあ

り得ないイントロは・・・・・・)。

「異国の国から吹いた風、トーテムポ〜ル、トーテムポ〜ル(なんだ、この歌い出し・・・

まぁ、最後まで聞いてみよう)、外が晴れたらフィーバーサンタ、あたしの指名はスリ〜セ

ブン、ハイ、ハイ、ハイ(1人で合いの手までこなすさくら)、片言で来日したイラン人、

日本の首都を土浦と勘違い、インスタントラ〜メンこそ焼いて食べる、あっちのお水は田

中くん家の所有権、大親友はマライア・キャリ〜、ただいまトイレで下痢ピー中、あぁ作

者さん、世界で1番〜アンニュイだ〜、チャンチャン」

 以上、私から作者さんへの愛の歌でございます(全くもって意味不明なんですが・・・

多分、これまでの中で1番)。

 なんなら、2番も歌いましょうか(2番ってオイ・・・でも、ちょっと気になるかも)。

 決まりですね、ミュージック・スタートっ(怖い・・・けど、気になる)。

 パッキンコンタン、ボンシュンラップ〜、サッカー、トトントテン(なんだ、途中に普

通に「サッカー」って入ってるのは・・・・・・)。

「枯れた空気が蜜の味、ママハハさん、ロリコンさん、何がなくともフューチャーベイベ

ー、おまえの指名はポンコツカ〜、ヨイ、ヨイ、ヨイ、骨身を削った皇帝ペンギン、中国

の首都を香港と勘違い、キャラメルコ〜ンこそ隠れて食べる、そっちのお水も田中くん家

の所有権、大親友はダニエル・カ〜ル、ただいまホテルでジャグジー中。あぁ作者さん、

世界で1番へんてこだ〜、チャンチャン」

 これにて、第1回さくら一座公演とさせていただきます、チャンチャカチャン(一座公

演って・・・しかも、第1回って続ける気っすか)。

 いやぁ、おかげさまで作者さんにも大好評ですよ(私、そんな肯定的なこと言ってませ

ん)。

 第2回公演、なるべく早くに開幕できるよう精進していきたいと思っておりますっ(い

え、もう金輪際やらないでください)。

 やだなぁ、照れないでくださいったら(どうして、そんなふうに前向きに受け止められ

るんだろう・・・・・・)。

 あっ、そろそろ終点です、また次の機会をお楽しみに〜(次なんてありませんよ、あし

からず)。



 こちらフロートアップ、とっても、とっても、とっても、とっても、ライオ〜ンだ〜(あ

っ、富士サファリパーク・・・まだ、さっきの即興ソングを引きずってるな)。

 今日は早めに着いたのですが、すでに絵里奈さんと富士の姿があり(・・・・・・もし

かして、富士つながりだったんですか、さっきの)。

 あたぼうよ、ちゃんと考えてるんですからね(そうか、そこまで練ってたんですね・・・

できれば、もっと他のことに頭を使っていただきたいですけど)。

「おはようございます、早いですね」

「おはよう、今日からワインイベントに合流するから予習しておこうと思って」

 そう、一昨日まで別件のアイドルイベントを担当していた2人は、Aチームが進めてき

た今週末のワイン展示試飲会に今日から合流するのです。

 正直、助かります。2人がいないと、雑用という雑用が私のところに転がりこんできて、

対処できないぐらいでしたから(絵里奈さんと富士が表舞台で頑張ってる裏では、さくら

さんの頑張りもあったわけですね)。

 ホントですよ、私が2人の分をカバーしてたんですから(ごくろうさんです、2週間)。

「昨日は休めましたか、絵里奈さん」

「あぁ、ごめんね、宮前さんの家に泊めてもらっちゃって。おかげさまでリフレッシュで

きました、富士くんと野球観戦に行って来たの」

「えっ、2人でですか」

「うん、結構ね、楽しかったよ」

 絵里奈さんと富士が2人で野球観戦・・・そういや、飲み会で2人が野球の話してる印

象がある(さくらさんはそこの席にはいなかったんですか)。

 だって、野球なんか全然詳しくないもん(あぁ、ヒット打ったら、三塁に走ってく人で

すか)。

 そこまでじゃありませんよ、バカにしなさんな(失礼しました、どのくらいの知識があ

るんですか)。

 知ってますよ、清原、松坂、桑田、松井、工藤、秋山、落合、チャップリン(最後の、

ふざけたでしょ)。

 あっ、バレましたか(当たり前です・・・ってか、一時代前の全盛期選手とか知ってる

んですね)。

 はい、私の野球知識は主に「かっとばせ! キヨハラくん」と「やったぜ! クワタく

ん」なので(そこからですか・・・また、懐かしいの見てますね)。

 親が買った単行本が家にあったんで見てました、あれ面白いですよね(はい、笑えます

よね・・・でも、あれから知識を得るのも困りますが)。

 えっ、どうしてですか(あの漫画は誇張してありますから、特に桑田あたりは)。

 そうなんですか、クワタくんって意地悪ピッチャーじゃないんですか(違います、本人

はいたって真面目です)。

 なぁんだ、つまんないの(つまんなくない、あんなもん現実でやられてたまるかっ)。

 あとはね、イチロー、ジロー、サブロー(適当に言ったでしょ・・・まぁ、イチローと

サブローはいるにしても)。

 えっ、サブローもいるんですか(います、います)。

 私すごいっ、あてずっぽうで言ったのにっ(・・・・・・やっぱり、山勘だったのか)。

 サブローさんって、パンチパーマで鼻は大きめですか(北島三郎やんけ、そっちのサブ

ローちゃう)。

 ま〜つりだ、まつ〜り〜だ〜(歌うんじゃない、サブちゃんじゃないって言ってるでし

ょ)。

 ジョージ、ジョージはどこにいるんだいっ(だから、サブちゃんじゃないし、ジョージ

もいないのっ)。

 ショージ、ショージはどこにいるんだいっ(だから、ショージもいないのっ)。

 あぁっ、素敵ですっ。やっぱ、作者さんのツッコミが私にはピッタンコですっ(それは

どうも・・・ただ、ほどほどにね)。

 でっ、サブローさんはどこの人なんですか(ようやく戻った・・・ロッテです、4番な

んですよ)。

 4番って、すごいじゃないですか(そうなんですよ、知っといて損はなしです)。

 やるなぁ、祭りさん(勝手に、サブローのあだ名を「祭り」にしないでください)。

 でも、4番といえば、バカスカとホームラン打って、看板にボールが当たって100万

円貰っちゃうんでしょ(どんな印象・・・サブローはね、つなぐ4番なんですよ)。

 何をつなぐんですか、電話とか(なんで、4番が電話をつながなきゃなんないんです

か・・・・・・)。

 プルルルル、もしもし、プルルルル、もしも〜し(完全におちょくってる・・・まぁい

いか、ガチャッ、もしもし)。

 オレだよ、オレ、オレ(オレオレ詐欺かいっ、この人をもう止められない・・・・・・)。

 お褒めの言葉、ありがとうございます(これを褒められてると思うんだから、末恐ろし

いかぎりです)。

 ねぇ、そろそろ話を元に戻しましょうよ(・・・・・・ぶっ飛ばしてやりたい、こいつ)。

 作者さんっ、レディに対して汚い言葉遣いはブーですよ(言われる側にそれ相応の理由

があると思うんですが)。

「宮前さんは今何をしてるの、手伝うよ」

「あっ、はい・・・どうも」

 2人で野球観戦、これってデートってことでしょうか(さぁ、お互いの気持ち次第じゃ

ないでしょうかね)。

 なんか嫌です、そういうの(おや、どうしましたか)。

 分かりません、でもスッキリしないんです、心の中が(・・・これも、もしや・・・)。

「ねぇ、前に夜ご飯を食べに行ったときさ、みんなで温泉にでも行きたいねって話したで

しょ」

「あぁ、しましたね、そんな話(第一章、参照)」

「山梨に行ったらさ、温泉に泊まれるから願いが叶うね」

「はい、そうですね」

 そうか、ワインイベントは前日乗りになるから泊まりなんだ(それで、温泉に泊まるん

ですか)。

 思い出した、去年もそうでした、みんなで温泉に入ったりしちゃって(ふむふむ、楽し

そうですね)。

 えぇ、誰のボディラインが綺麗だとかで盛り上がったんですよ・・・あぁっ、しまった

ぁっ(どっ、どうしました)。

 こんなプニプニのお腹でみんなと温泉になんて入れませんっ(あぁ、なるほど)。

 作者さんも見たでしょ、私のお腹のたるみ(ですから、見てませんってば、疑りぶかい

ですね)。

 なんにしても、このままじゃいけません(ちなみに、去年はどうしたんですか)。

 去年は執念のダイエットを試みまして、なんとか見ることはできる程度にはしたんです

(じゃあ、今年もそれでいくしかないのでは)。

 えぇえ、またあの地獄の日々をやんなきゃなんないの〜(別にやらないならいいですよ、

もっと地獄を見るハメになるのは自分ですから)。

 やりますよ、やるからには絶対に成功させてみせますよ(おぉ、その意気です)。

 強い意志で取り組みますからね・・・明日から(意思、強くないじゃん)。


          ☆


  ところかわりまして、こちらは宮前さくらさんの自宅のあるマンションの101号室

です。

 ドナドナド〜ナ、ド〜ナ、子牛をの〜せ〜て〜(なっ、なぜ、ドナドナが流れてるんだ

っ)。

 ドナドナド〜ナ、ド〜ナ、荷馬車がゆ〜れ〜る〜(こっ、この暗闇は一体、その先にい

るのは・・・管理人さん、管理人さ〜ん)。

 あっ、こんばんは、丹乍幸四郎でございます(どうも、こんばんは)。

 お久しぶりですね、こうやってきっちり話すのは(はい・・・でも、なんでまた、ドナ

ドナなんか)。

 いえ、なにもいじけてたわけではありませんよ(いじけてたのか・・・そういや、それ

なりに長いことピックアップしなかったからなぁ)。

 作者さんが来ない間も、宮前さんは毎日のようにここへ来てはお酒を飲んでいかれてま

す(なるほど、そろそろ毎度の展開にしましょうか・・・チクチク言うタイプだな)。

 はい、ただ今の時刻は20時、今日はクレームもなく平和な1日でした(ほぉ、よかっ

たですね)。

 いろいろと言ってくる人がいますからね、電気、水道、近隣関係、騒音、装飾、挙げき

れないほどです(大変ですよね、管理人って仕事も)。

 みんな、宮前さんのように楽観的だといいんですけどね(さくらさん、何か壊れても「明

日になれば直ってるだろう」ってタイプですからね・・・直んないのに)。

 今日も宮前さんは来ると思うので、ビールを買い足しておきました(・・・・・・結局、

管理人さん持ちなんですね、お酒のお金って)。

 いえ、いいんです、宮前さんと話しながらお酒をいただく時間は楽しいので(おっ、慣

れてきたんですね、さくらさんに)。

 そうですね、最初こそ「なんなんだ、この人は」と思いましたが、今はこれが1日の締

めみたいになってきました(感染しましたね、さくら病に)。

「ヘックシィッ(どこからか聞こえた、さくらのくしゃみ)」

 おや、どうやら来たようですね(ドリフ以来っすね、あんな古典的なくしゃみ)。

 ピンポーン、ピンポーン(101号室に響くインターホンの音)。

 トコトコ、ガチャッ(さくらさん、登場)。

「宮前さん、こんばんは」

「こんばんは、管理人さん」

「あがってください、どうぞ」

「はい、おじゃまします」

 ズケズケズケ、さくらです(ここで自己紹介っすか・・・久々だな、このパターン)。

「コンビニでおつまみ買って来ました、さきいか、チーかま、コーヒーゼリー(最後の、

個人的に食べたいものでしょ)」

 缶ビールで乾杯をすると、宮前さんは勢いよくグビグビと飲み続けていきます(明日か

らダイエットだから、ここぞとばかりに飲んでやがるな・・・・・・)。

 そして、今日は彼女から今まで聞かれなかった部分に触れられました。

「管理人しゃん、恋はしてないんでしゅか」

「どうしたんですか、急に」

「よく考えたら、管理人しゃんのそういう恋バナを聞いたことがなかったから。好きな人

とか、いないんでしゅか」

「好きな人・・・いると言えばいますが」

「ほえっ、いるんでしゅか、管理人しゃん。ちゃんとしてるじゃないでしゅか、恋なんて

二の次みたいな顔してぇ(どんな顔ですか、それ・・・第一、この前、ムッツリスケベっ

ぽいとか言ってたくせに)。どんな人なんでしゅか、教えてくだしゃいな、マンションの人

たちには黙ってましゅから・・・えっ、もしかして、マンションの人でしゅか」

「違います、違います」

 とは言ったものの困りましたね、これを言うものかどうか(・・・・・・何か訳有りで

すか)。

「なんでしゅか、ダンマリでしゅか、そんなのブーでしゅ。私も言ってるんでしゅから、

管理人しゃんもちゃんと言わなあきまへんでぇ(と言っている、へべれけさくら)」

「分かりました、私も言いますよ」

 確かに、これまで彼女の話を聞いてきましたからね、こちらのも話さないと平等ではな

いでしょう(さくらさんの場合、自分から言ってるだけですけどね)。

「おぉ、管理人しゃんの恋バナ、楽しみ〜(姿勢を正し、聞き耳を立て、目はうつろ)」

「そんな大したことではないので、落ち着いて聞いてください。まだ私が19歳で大学生

だったときです、そこで出会った1人の女性に恋をしました。彼女は非常によくできた女

性で、いつも私よりも一枚も二枚も上手でした。雨の日に私が忘れることを予想して傘を

2本持って来ていたり、筆記用具も鉛筆や消しゴムやボールペンなども2本ずつ持ってい

ました。まるで、母親や姉のように私のことを見守っていて、一向に頭のあがらない存在

だったんです」

「へぇ、じゃあ、両想いだったんでしゅか」

「はい、私が告白をしたところ、OKをもらいました」

「いいでしゅね、何て言ったんでしゅか」

「結婚を前提にお付き合いしてください、と言いました」

「固いでしゅね〜、もっと言い方なかったんしゅか」

「そうですね、彼女も笑いながら「はい、私でよければ」と言ってました」

「アハハ、いいなぁ、うらやましいなぁ、そのカップル」

「特別なことは何一つしてあげられなかったんですが、それでも彼女は幸せだと言ってく

れてました。2人で動物園や遊園地や水族館、共通の趣味でもある美術館や科学館によく

足を運びました。大学を卒業してからも、仕事が終わった後や休日に会っては2人で時間

を過ごしていました」

「うん、うん、いいでしゅね〜。それで、その後は(次が聞きたいさくら)」

「その後は・・・・・・(話すのをためらう幸四郎)」

「もったいぶらないでくだしゃいよ〜、結婚を約束したんでしょ〜(よけいに次が聞きた

いさくら)」

「そうですね・・・・・・(まだ、ためらう幸四郎)」

「・・・・・・えっ、別れちゃったんでしゅか(管理人さんの反応から、そう推測したさ

くら)」

「いえ、別れてはいません・・別れてはいないんですが(煮え切らない返答の幸四郎)」

「別れてないならいいじゃないでしゅか、あっ、ケンカ中で気まずいとかでしゅかっ」

「いえ、ケンカならまだいいのですが・・・・・・」

「んもぅ、どうしたんでしゅかぁ、管理人しゃん、ちゃんと言ってくだしゃいよ」

「・・・・・・眠っているんです、病院のベッドで」

「・・・えっ・・・」

「彼女が29歳のときでした、私との待ち合わせ場所に来る途中に交通事故に遭い、救急

車で病院に運ばれました。緊急の大手術が行われ、一命はとりとめたのですが、彼女はそ

れから一度も眠りから覚めることがないんです。それ以来、今日まで6年間・・・いえ、

きっとこれからも覚める見込みも分からない眠りについてるんです」

「・・・・・・それって、植物人間ってことですか」

「はい、そうなりますね」

 宮前さんは黙ったままで、下を向いてしまいました(内容が内容だけに、ですね)。

 私としては、もう6年も月日の流れてることですから自分の中では気持ちの整理はつい

てることなんですけれど、初耳である宮前さんには重いものだったようです。

「そんなに気にしないでください、私は案外吹っ切れてたりするんで」

「でも・・・今でも、彼女さんが目を覚ますのを待ってるんでしゅよね」

「まぁ、可能性は限りなく低いと言われてるんですけれどね」

「そんなぁ・・・そんなの辛すぎましゅ、切なすぎましゅ」

「大丈夫です、これまで彼女に世話を焼いてもらったお返しと思ってますから」

「でもぉ・・・・・・」

 宮前さんはシュンとしたまま、チビチビとお酒の続きを飲み続けていました。



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