表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラサケ!  作者: tkkosa
4/12

第3話



 さくらです、翌日、さくらです(・・・・・・なんか、いろいろ間違えてますよ)。

 あぁ、頭がズキズキする〜、アイス一気食いしたからじゃないですよ(分かりますって、

勢いまかせで飲んじゃったからでしょ)。

 変な飲み方しちゃったからなぁ・・・って、ここどこですか(管理人さんの部屋です)。

 管理人さんの部屋、なんでまた(ここで酔って、そのまま眠っちゃったんですよ)。

 マジですか、ヘタこいた〜(気分もアガってたし、空腹にあれだけ急速にアルコール入

れましたからね)。

 あれ、ところでこの布団はどうしたんですか(管理人さんが布団敷いて寝かせてくれた

んですよ)。

 そうなんですか、ちなみに管理人さんは(自分の部屋の床に寝てました、タオルケット

だけ掛けて)。

 あぁ、悪いことしちゃったなぁ(まぁ、夏だからそれでも平気ですよ)。

 とにかく起きよう、スクリッ(重たい身体をようやく起こす)。

 頭が痛いよ〜、赤ずきんちゃんの気持ちが分かる〜(別に、赤ズキンちゃんってことじ

ゃないですからね・・・・・・)。

 えっ、酔っ払いが赤くなって、頭ズキンズキンするって話じゃないの(何だと思ってる

んですか、赤ずきんちゃんを)。

 パシャッ、パシャッ、ゴシゴシ、そういえば管理人さんのタオルだった・・・まっ、い

いか(洗面所で顔を洗うさくら)。

 トコトコ、あっ、書きおきがある(留守にする際、管理人さんが書いておいた手紙を発

見)。

「おはようございます、宮前さん」

 こちらこそ、おはようございます(手紙に返事しなくていいですから)。

「昨夜は何か抱えこんでいた様子でしたが、他人に聞かれたくはない内容のようだったの

で特に聞くことはしませんでした。一昨日に来たとき、今日は本番翌日で休日だと聞いて

いたので寝かせておくことにします。私は私用で出掛けなければならないので、鍵はポス

トにでも入れておいてください」

 鍵ってこれのことか、私の家のとは違うな(同じだったら、おかしいでしょうに)。

 どうしよう、家に帰ろうかな〜、もう少しここにいようかな〜。家に帰ってもすること

ないし、管理人さんに一言おわびしてから帰ろうっと。

 ガチャッ、ゴソゴソ、大したもん入ってないなぁ(勝手に冷蔵庫を物色するさくら)。

 これでいいや、トコトコ、よっこい正一(あなた、一体いくつですか・・・・・・)。

 プリンとチョコスナックとバナナかぁ、意外に甘いもん好きなんだな〜、管理人さんっ

て(疲れた身体にはもってこいですしね)。

 そういえば、ムッツリスケベっぽい顔してるからな〜(関係ないでしょ、それ)。

 あっ、まさかっ、私を布団に寝かしてくれるときに変なとこ触ったりしてないでしょう

ね(そういう人じゃないでしょ、あの人は)。

 いやっ、もしかしたら、私のフェロモンむんむんボディに理性を失った可能性もアリで

す(そんなボディ、どこにも見当たりませんが)。

 おいっ、さっきから私に失礼なことばっか言ってないかい(そういうさくらさんこそ、

管理人さんに失礼なことばっか言ってないかい)。

 なんでですか、そういうのも無きにしもあらずってことですよ(無いです、無いです)。

 この〜、言いきりやがってぇ、ベンジャミンめ(確か、キャサリンって言ってませんで

したっけ・・・・・・)。


 アハハ、アハハ、んなアホなっ(水戸黄門でまさかの大爆笑、なぜかのツッコミを入れ

るの図)。

 管理人さん、いやに遅いなぁ、もうすぐ21時だよ(ねっ、どこで油売ってるんでしょ

う)。

 ねぇ、油ってさ、いくらぐらいするの(・・・・・・本当に油を売ってるわけじゃない

ですよ)。

 えっ、そうだったの、よく「油を売ってる」って聞くじゃん(さくらさん、どこまで本

気なのかが分からなくなってきました)。

 じゃあ、名古屋から上京してきた人が名古屋出身って知ってますか(・・・・・・何が

言いたいのか、さっぱりなんですけど)。

 別に言いたいことなんかありませんよ(そうでしょうね、意味の欠片もありませんし)。

 ところでさ、私って何時から眠ってたの(昨日の22時には潰れてましたよ)。

 起きたのが16時でしょ・・・ゲッ、18時間も眠ってたの(そういうことになります

ね)。

 寝すぎじゃんかよ、なんで起こしてくんないのさ(それ以前に、18時間も寝ることが

どうかと思いますが)。

 あぁあ、折角の休日がダラダラで終わっちゃったよ、どうしてくれんの(いい休息には

なったんじゃないですかね、落ち着いたでしょ、富士への怒りも)。

 あっ、その名前は言わないでったら(あっ、タブーでしたか、富士って言うの)。

 わざと言ってるだろっ、この野郎(わざとなんかじゃないですよ、富士って言ったのは)。

 このアホンダラ、女ったらし、セクハラ大王、パッパラパー(・・・・・・私が何をし

たっていうんですか)。

 カチカチ、ガチャッ(101号室の玄関扉が開く音)。

 あっ、管理人さんが帰ってきた。

「宮前さん、まだいたんですか(まさか、まだいるとは思ってなかった幸四郎)」

「エヘヘ、引き続き、おじゃましてます」

「どうしたんですか、まだ用があったんでしょうか」

「いえ、管理人さんにちゃんとおわびをしていかないとと思って」

 と言いつつ、テーブルの上には私が食い散らかしたゴミがあったりして(絶対、おわび

する感じには見えません)。

「昨日はすいませんでした、管理人さんが買い置きしてたビールを飲んじゃって(そっち

じゃないでしょ、そっちじゃ)」

「いえ、私は全然かまわないんですが・・・何かあったんですか」

 何かはあったんですけど・・・言うのか、言うまいか、言うのか、言うまいか。こういう

話は気が引けるんだけど・・・でも、誰かに聞いてもらいたいっ。

「実は・・・昨日、キスされました」

「キス・・・ですか、また誰にでしょう・・・前に言っていた富士という方でしょうか」

 ドキッ、するどい、管理人さん(というか、妥当ではないでしょうか)。

「アイツふざけてます、だって彼女と別れたばっかりなんですよ。それなのに、私にそん

なことするなんておかしすぎます。私をからかうにしても、度が過ぎてると思いませんか」

「そうですね、イタズラだとしたら度を超えてます。でも、私はそういうふうには考えま

せんね。以前に言ったのを覚えてるでしょうか、彼は宮前さんのことを本気で嫌いか、実

はそうではないかのどちらかだと。本気で嫌いな相手にそんなことまかりまちがってもし

ないでしょう。ということは、彼は宮前さんにそういう気があるのではないでしょうか」

 富士が私に・・・ない、ぜっっっっっっっっっっっっっっったいにないっ(そこまで強

調しなくても・・・・・・)。

「ありません、そんなこと。もう、ムカつくだけのやつなんですから。あぁ、明日会社に

行きたくな〜いっ(ダメですよ、それは)」

「落ち着いてください、宮前さん。どちらにしろ、その彼と一度話してみた方がいいです

よ。このまま、やきもきしたままで同じ職場にいるのはよくありません。明日は無理かも

しれませんが、早いうちにそうした方がいいと思います」

「・・・・・・はぁい」

 こうして管理人さんに説得され、私は24時間ぶりに101号室を後にしたのでした。


          ☆


 読者の皆々様、おっしゃらぱっぴーな(おはようございます、と言ってるそうです)。

 どうしましょう、翌日の朝になってしまいました(そりゃあ、物語は進行していくので

仕方ありませんよ)。

 富士と会いたくなぁ〜い、今日は休みま〜す(そんなのいけません、社会人でしょ)。

 休む〜、休むったら休むのら〜(駄々をこねないの、さくらさん)。

 こうなったら、ストライキ決行ですっ(ストの理由が「富士と会いたくない」なんて通

るはずないから)。

 ここを動きません、私の意志は石頭より固いんです(そうですか・・・リモコン、ピッ)。

 あっ、いつのまにか、ベッドから洗面所に移動してる(リモコン、ピッ)。

 ああっ、いつのまにか、トイレから出てきてる(リモコン、ピッ)。

 あああっ、いつのまにか、シャワーを浴び終わってる(リモコン、ピッ)。

 ああああっ、いつのまにか、朝ごはんを食べ終わってる(リモコン、ピッ)。

 あああああっ、いつのまにか、おしゃれさんに着替え終わってる(リモコン、ピッ)。

 ああああああっ、いつのまにか、全て準備を終えて外に出ている(どうだっ、この野郎)。

 この〜、作者の権限を最大限に使いやがってぇ(こうでもしないと、動かないでしょ)。

 分かりましたよ、行けばいいんでしょ(分かっていただけましたか)。

 作者のバカやろ〜、ダダダダ〜(捨て台詞とともに会社に向かうの図)。

「あっ、宮前さん、おはようございます」

 その声は管理人さん、またまたまた今日もちゃんちゃんこでお掃除中ですね。

「おはようございます、行きたくないけどいってきます(本音を言わないの)」

 さくらさん、口をヘの字にして挨拶中。

「いってらっしゃい」

 管理人さん、笑顔を継続中。

 そして、さくらさんは通勤開始。



「ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ、ブツ(作者への不満をブツブツ言うさく

ら)」

 こちら、すでにウチの会社のある高層ビルのエレベーター。これが18階に着いたら、

そこはフロートアップになるのですっ。

 どうすればっ、私はどうすればいいのですかっ(昨日、管理人さんに言われたとおりで

いいんじゃ)。

 それはそうですけれど、気持ちの整理がついてないでしょうが(そんなこと言われまし

ても)。

 チーン、着いてしまったぁ・・・・・・(もう、あきらめてくださいね)。

 今日だけ、18階がフロートアップじゃないなんてことはないですかねぇ(むちゃくち

ゃ言わないでください)。

 はいはい、降りますよ〜だっ(あれっ、あれは富士じゃないですかね)。

 えっ、富士がすぐ先からこっちへ歩いてきてるよっ(トイレでしょうか、いきなりのご

対面ですね、こいつは)。

 なんでよっ、心の準備ができてないじゃんか(富士、こっち見てますよ)。

「宮前・・・・・・」

 その瞬間、一部始終がスローモーションに感じました。死ぬ直前の人が走馬灯のように

過去を巡るみたく、ゆっくりに思えました。多分、あれって、極度の緊張感からくるんだ

ろうなぁ。

 富士が私の名前を呼んだとき、私は目をそらしました。

 私は富士を避けました、向こうもそう感じたと思います。

 しょうがない、これでいいんだ。

「一昨日のAチームのヒーローショー、特に主立った問題もなく無事に終わりました。先

方からも好印象の言葉をいただいており、成功といえる結果でしょう。今後もこの流れを

続けていけるように頑張ってもらいたいと思う」

 部長からAチームに届けられる言葉も、なんだか遠くに感じてしまいます。

 私は朝礼のときも、仕事のときも、必要以上に富士に目を向けていました。気にしない

ようにすればするほど、無性に気になってしまいます。富士を見てると一昨日の光景が頭

に浮かんできて、富士と目が合いそうになるとサッとそらして、なんだかモヤモヤしたも

のが取れなくて嫌になります。

「宮前さん、宮前さん」

「・・・・・・あっ、はい、すいません」

 絵里奈さん、いつから私の後ろにいたんですか(あなたが気づいてないだけですよ)。

「なんか、今日元気なく見えるよ」

「えっ、そんなことありませんよ、いつもどおり全開です(無気力なニンマリ笑顔)」

「ならよかった、心ここにあらずみたいに見えたから。はいっ、これ、コーヒー」

「あっ、ありがとうございます」

 絵里奈さん、こんな下っ端の私にコーヒーなんぞ入れてきてくださったんですか(考え

ごとしてるように見えたんでしょうねぇ)。

 してるように見えたんじゃなくて、考えごとしてたの(あっ、これは申し訳です)。

 ったく、絵里奈さんを見習いなさい、年下の私に気なんかかけてくれてるんですよ(そ

っくり、そのままお返ししますよ)。

 それにしても、絵里奈さんは素晴らしい女性です(うん、うん)。

 私もいつか紀子姉様や絵里奈さんみたいになりたいかぎりです(険しい道のりになりそ

うですねぇ)。

 なんだよ、いちいち突っかかってくんなっつうの(そんな言葉遣いしませんよ、紀子姉

様と絵里奈さんは)。

 なんなんでございますか、一回一回お突っかかってこないでほしいでございますわ(そ

の無理やり、間違ってますよ・・・・・・)。

「おい、さっきから進んでないぞ」

「・・・・・・あっ、すいません」

「仕事の悩みならいいけど、プライベートの悩みは仕事に持ち込むなよ」

「はい、大丈夫です」

 富士、佐渡さんに注意されてる(向こうも考えごとしてたみたいですね)。

 なんか、気分がのってないような感じだなぁ(さくらさんもですけど)。

「はいっ、どうしたの、富士くん」

 絵里奈さん、富士にもコーヒーを(ホントに気がつきますね、絵里奈さんは)。

「ありがとうございます、何でもないんで大丈夫です」

「うん、なにか相談とかあったら乗るから言ってね」

「はい、すいません」

 うぅん、あれが私には出来ないんだよなぁ(まぁ、さくらさんは下っ端ですし)。

 でも、キャバクラでは下っ端の人がお酒つくったり、タバコに火つけたりするんでしょ

(あの、ここ、キャバクラじゃないんで)。

 富士が元気ないの、一昨日のを気にしてるってことなのかなぁ(それっぽいですよね)。

 富士はあのことをどう思ってるんだろう(そればっかりは本人に聞くしかないですよ)。

 いや、さすがに本人に聞くのは勘弁です(まだ、そういう心理状態にはなってないです

か)。



「そんで、どうしたの」

 その日の夜、私は紀子姉様に相談があると言い、バーに連れて来てもらいました。

 カウンター式のバーで、ブルーとイエローの照明が雰囲気を作り、ジャズが流れる上質

な店内には、年代物のお酒とレコードが並んでいます。私のような大人なりたての人間に

はいささか早い気がして緊張してしました。

 私はフルーツカクテル、紀子姉様はブランデーをオーダー(格好いいっすね、ブランデ

ー)。

 そうです、上着を脱いだ紀子姉様はワンピース一枚、胸元も結構開いちゃってて、それ

にプラスでブランデーなんて女の私でもドッキンコです(ドッキンコ・・・ドキドキって

ことですね)。

「リーダーって、男性からモテますよね」

「なによ、その質問」

 んっ、紀子姉様が苦笑い(聞き方じゃないですかね)。

「その・・・男性の方から押してこられたとき、どうするのがいいんでしょうか」

「押してこられたの、さくら」

 ドキッ、直球ですよ、姉様。

「いえっ・・・友達が困ってるらしくて、押しの強い人に告白されて」

「ふぅん、そうなんだ。そうだなぁ、相手によるかな、これは。その友達はさ、その押し

てくる男をどう思ってるの」

「どうって・・・なんか、いけすかない男だなって。犬猿みたく、やることなすことで衝

突しがちで。なんで、わざわざ私の望んでないことばっかりするのかが不思議なくらいで

す」

「なるほど、でっ、友達はその相手にどういう押しをされたの」

 えっ、そんなとこまで掘り下げるんですか(まぁ、的確な返答をするためにはねぇ)。

 まぁ、友達ってことにしてあるからいいか。

「あの・・・キスをされたみたいで」

「アンタ、キスされちゃったのっ、富士に」

 えっ、なっ、なんで、私と富士ってバレてんの(私でも分かりますよ)。

 ホワィ・ディッヂュー・ノウ(パニくって英語になってますが、なんで分かったんです

か、と聞いてます)。

 なっ、なして、なしてですのっ(パニくって方言になってますが、なんで分かったんで

すか、と引き続き聞いてます)。

「なっ、なんで、私と富士が出てくるんですか」

「あっ、ごめん、ビックリしちゃって。さくらのこと言ってるんだろうなって分かってた

んだけど、アンタが友達がってことにしてたから乗っかっておこうと思って」

「どうして、私のこと言ってるってバレてるんですか」

「だって、アンタ、話の途中でその友達のことを「私」って言ってたから」

 えっ、そんな凡ミスするはずが・・・ホンマや(ちょっと前を読み返し、自分のミスに

気づくさくら)。

「そんで、アンタと犬猿な男っていったら誉ぐらいだからさ」

 あぁ、あっさりバレてしまった(自分で崩した壁ですからね、しょうがない)。

 紀子姉様もそんなあざとく見つけなくてもいいのに、古畑任三郎並みです(いや、古畑

の方が断然上ですから)。

「ごめんね、言うつもりはなかったんだけど」

「いえっ、逆に気をつかわせてすいません」

 バレてしまったからには、もうとことん打ち明けてしまおう(そうですね、そっちの方

がいいですよ)。

 ウチ、ウチ、アケ、アケ(紀子姉様に事の成り行きを打ち明けるさくら)。

「そうかぁ・・・誉も中々大胆なことをするね」

 姉様、姉様、そんな感心しないでくだせぇ。

「なるほどね、それで2人とも今日元気がなかったのね」

「なんだか、無性に富士のことが気になって。こんなこと言うのもなんですけど、そのせ

いで仕事に集中できなくなって。そんな自分が嫌に思うんです、なんで富士なんかのため

にこんなふうにならないといけないんだって」

「分かるよ、私だってあるから、そういうこと」

「リーダーにもあるんですか、意外です」

「一応、人並みに女やってるからね。いろいろと男関係での悩みもあるよ、それは相手も

同じだろうけど。きっとね、されたアンタよりも、した誉の方が悩んでると思うよ」

「・・・・・・なんで、しちゃったんだろう、っていうふうにですか」

「そうよ、その証拠にね、佐渡ちゃんが誉に捕まってるから」

「佐渡さんが富士に捕まってるって・・・どういうことですか」

「今日ね、ホントは佐渡ちゃんと飲もうと思ってたの。でも、佐渡ちゃんにね、誉に相談

があるって誘われてるって断られて。多分、向こうは向こうで、アンタにしたことをこう

やって相談してるんだと思うよ」

 そうなんだ、そんなことになってたんだ(やっぱ、富士も悩んでるようですね)。

「リーダー、どうすればいいですか、私は」

「どうすればいいってもねぇ・・・アンタたちが直接どうにかしないことには進まないか

らねぇ。キチンと話してみなよ、わだかまり残ったままだと仕事にも差し支えるでしょ。

なんなら、私と佐渡ちゃんで場をセッティングしてあげるから、ねっ」

「・・・・・・はい、分かりました」

「よし、そうと決まったら、今夜は飲もう」

 そこから、私は紀子姉様とおしゃれバーでおしゃれカクテルをおしゃれに飲みました。

 やっぱり、紀子姉様は頼れるアネゴでございます(うん、うん、そうっすね)。

 ・・・・・・そういえば、佐渡さんと富士の方はどうなったんでしょうね(確かに気に

なりますね、そこんところ)。


          ☆


 皆さん、こんばんは(んっ、その低音空洞ボイスは)。

 富士誉です、こうして話をするのは初めてになります(おおっ、初交流ですね)。

 そうっすね、俺は宮前とは違って常識人なんで問題ないですよ(あぁ、あの人、めちゃ

くちゃ言うから困るんですよぉ)。

 分かります、事あるごとに突っかかってくるんですよねぇ(そう、そう、その都度にリ

アクションしなきゃなんないから辛いんですよ)。

「誉、一体どうしたんだ」

 今日は相談があるって言って、佐渡さんに飲みに連れてきてもらいました。

 仕事帰りのサラリーマンが集まる焼き鳥屋で、あえて静まったりするような場所は避け

て、こういうところを選んでくれたみたいです。周りはガヤガヤ騒ぎ立てていて、他の席

の話なんか知ったこっちゃないって感じですね。

「実はですね、とある女性にキスしてしまったんです」

「キス・・・いいじゃんか、何の問題があるの」

「いや、なんというか・・・突発的にしてしまって」

「いいんだよ、それでいい、男は強引に行けって」

「いや、それが・・・その相手を好きかどうか、まだ自分自身分かってないんです」

「なんだ、好きでもないのにキスしたのか」

「はい・・・それで相手にも拒否反応示されてるし、自分も自分の気持ちがどうだか分か

ってないからどうしていいかも分からないっていう状態なんです」

「そうか・・・ちょっと、それは複雑だな」

 今日の宮前の態度を見てるかぎり、俺を無視してるのは間違いないだろう。

 ただ、このまま、あの感じを引きずっていくのはよくないに決まってる(まぁ、仕事で

も一緒になることが多いですしね)。

「その相手が好きなのか分からないから、優しく接することも、これまで通りに接するこ

とも出来ないんです」

「そうだな・・・でも、そのキスはお前が突発的にしてしまったんだろ。なら、それはお

前が本能でそう動いたってことになる。そしたら、それが本当のお前の気持ちってことに

はならないかな。お前が本能でキスしたいと感じたから身体が自然にそうした、それでい

いんじゃないか。お前のことはお前にしか分からないけど、多分、お前はその相手に気が

あるんよ」

「・・・・・・そうなんですかね」

 そうだな、俺は確かにあのとき自然に身体が動いてた。宮前のことを見てるうち、キス

しようと思った。

 それが俺の気持ちってことなんだろうな、今までは気づいてこなかった(ということは、

富士はさくらのことが好きってことですか)。

 うぅん・・・正直、まだそこまでは考えがいかないんですよね(まだ、気持ちの整理が

ついてないところですか)。

 はい、宮前に気持ちが向かってるのもあるし、なんで宮前なんかにって思いもあるし(犬

猿の仲ですもんね、あなたたち)。

 えぇ、そういうこれまでの関係も抜けきれはしないし(さくらさんを好きになる人は物

好きって言ってましたもんね)。

 今でも思いますよ、あんな性格悪いのと付き合うやつなんて物好きしかいないって(そ

の両極で悩んでる最中ということなんですね)。

 はい、もう少し、時間がかかりそうです(うん、ゆっくり答えを出してくださいね)。


          ☆


 もしもし、こちら、さくらです(電話なんか掛けてないですよ)。

 日付かわりまして、翌日のフロートアップです。

 昨日、紀子姉様に話を聞いてもらったものの、やはり富士とは目も合わせられない時間

が続いてます。向かいのデスクなだけに、目線を外し続けるのが余計に不自然に感じてし

まいます(意図的、丸出しでしょうしね)。

 「丸出し」って、そんなエッチなこと・・・恥ずかしいですよぉ(・・・・・・そんな

意味で言ってませんったら)。

 トゥルリンッ、トゥルリンッ(メールを受信しました、メールを受信しました)。

 メール、紀子姉様からだ、クリック(受信メール、開封)。

「さっき、昨日のことを誉に言っといたから。近いうち、誉から話があると思うから、あ

とは自分たちで話しなさい」

 えっ、もう富士に昨日のことを・・・さすが、仕事が早いっす(そういう捉え方でいい

んだろうか)。

 じゃあ、ここ何日かぐらいのうちに富士と話をするのか・・・なんか、それだけで緊張

してくるよ。


「宮前、ちょっといい」

「・・・・・・何よ」

 トイレに行こうとデスクを離れたとき、急に後ろから富士に呼ばれます。

 何だ、何です、何ですきゃ〜(そんな三段活用、存在しませんから)。

「今日、何か用事ってある」

「・・・・・・別にないけど」

「話があるんだ、少し付き合ってもらっていいか」

 えぇっ、近いうちって今日かよ(確かに、1番近いですからね)。

 そんな、こっちの気持ちの整理がまだなのにぃ(でも、こういうのってズルズルいっち

ゃうから、早い方がいいですよ)。

 はい、はいっ、分かりましたよっ。

「・・・・・・いいけど」

「じゃあ、仕事終わったら下で待ち合わせな」

 えらいこっちゃ、どないしましょう(そんなこといっても、いずれ来るんですから)。

 え〜らいこっちゃ、え〜らいこっちゃ、よい、よい、よい、よいっ(踊ってないで、覚

悟きめてください)。

 え〜、話し合いってサシでしょ(サシじゃない方がおかしいでしょうに)。

 嫌だな〜、帰りたいな〜(ダメです、ちゃんと行きなさいっ)。

 うっさい、うっさい、このクソジジィ(私がクソジジィだったら、同年代のさくらさん

はクソババァになりますよ)。

 あっ、よく見たら、作者さんって若いですね(意見、変えすぎでしょ・・・・・・)。



 その日の夜、私と富士はチェーン店の喫茶店へと行きました。

 私はカフェラテ、富士はカプチーノをオーダーします。

 予想できたことでしたけど、最初はこれといった会話もなく時間だけが過ぎていきます。

 周りには、学校帰りの学生、仕事帰りのOL、キャサリン・セダ・ジョーンズ(絶対、

いないでしょうに・・・法外な嘘つかないように)。

 だって、緊張するんだも〜ん(だからって、ハリウッド女優まで出さないでください)。

 いいじゃん、キャサリンは友達だから(・・・・・・もはや、返す言葉もないです)。

「一昨日のこと、怒ってるか」

 怒ってるか、ですと(おさえてくださいね、まだ序盤なんで)。

 ならば、答えてくれよう、ルルルララ(意味不明です、さくらさん)。

「怒ってるに決まってるでしょ」

「・・・・・・ごめん、成りゆきというか、その場の勢いでした」

 成りゆき、その場の勢い、お前は石田純一か(まぁ、おさえて、おさえて)。

 もしくは、海老蔵か(そういう問題じゃないです、さくらさん)。

「成りゆきって、そんなんでキスされたこっちの身になってよ。彼女にフラれてショック

だったのかもしんないけど、私には関係ないでしょ。ふざけないでよ、私はアンタの何で

もないんだから」

「・・・・・・ごめん」

 謝らないでよ、なんか惨めな気分になってくる。

 感情が不安定だった富士に良い様に使われた女、みたいじゃん。

「・・・・・・でも」

「でも、適当な気持ちでしたわけじゃない。ヤケクソとか、お前でいいやとか、そんなん

でしたんじゃない。誰でもよかったなんてことじゃない、お前だからしようと思った。そ

れは俺の中でまぎれもない事実なんだ、それだけは分かってくれ」

 なによ、それ、どういうことよ。

「・・・・・・どう分かれっていうのよ、そんなの」

 結局、私は富士を残して先に帰ってしまいました。あの空間の居たたまれなさと自分の

気持ちの整理がつかないことで。

 私は家に向かって歩いてました、でも目的地は家じゃありませんでした。


          ☆


 ところかわりまして、こちらは宮前さくらさんの自宅のあるマンションの101号室で

す。

 ただ今の時刻は20時、なんだかとてものどかな時間が流れています。

 お気づきの通り、丹乍幸四郎でございます(あぁ、どうもこんばんは)。

 こんばんは、ここも宮前さん1人がいないだけでずいぶん静かに感じますね(正直、あ

の人の独壇場ですからね)。

 えぇ、昨日は会社の方と飲みに行くということでここには来なかったのですが、宮前さ

んが1日いないと物足りなさすらありますから(物足りなさ・・・もしかして)。

 いやいや、決して、宮前さんに来て欲しいというわけではありませんよ(あぁ、そうで

したか)。

 この静寂とした時間の方が私には合ってますから、宮前さんのいる時間に多少慣れてき

たということです(管理人さんもさくらさんに洗脳されてしまったのかと思いましたよ)。

 それはさすがに勘弁してください、私という人間が崩れてしまいます(ですよね、共通

点あんまりないですしね)。

 ピンポーン、ピンポーン(101号室に響くインターホン)。

 おやっ、噂をすれば宮前さんでしょうか。トコトコ、ガチャッ(あっ、さくらさんです

ね)。

「こんばんは、今日も飲みに来られたんですか」

「はい、おじゃましてもいいですか」

「構いませんよ、どうぞ」

 おじゃましま〜す、テケテケテケ。

「おっ、今日はビーフジャーキーですね、酒のつまみのナンバー1ですっ」

 確かに・・・あっ、こういう妙なところで宮前さんと気が合ったりするんです(単なる

オヤジともいえますけど)。

 彼女とは年齢も一回りはなれてますし、兄と妹のように感じることもあります(あぁ、

なるほど・・・でも、ずいぶん似てないですよね)。

 そうですね、似てても困ります(そう、そう)。

「それとこれなんですけど、おでんを作ったのでこれもおつまみにどうぞ」

「マジですか、管理人さんが作ったんですかっ」

「はい、そんな大層なものではないのですが」

 料理は人並み程度ですが作ることはできます(おぉ、やりますな)。

 いえいえ、男が一人暮らしで不自由しないくらいですよ(大丈夫、大丈夫、さくらさん

は全然できませんから)。

 おや、宮前さんは料理をしない人なんですか(いや、するはするんですけど、なんとも

独創的な発想をお持ちのようで)。

 よく料理番組とかで料理下手なタレントが作り上げる、ああいうものですか(いえ、ち

ゃんと味としては美味しく食べれるんですが)。

 ・・・・・・そうですか、では今後に宮前さんの料理を食べる機会があった際には注意

しようと思います(はい、味はいいんですけど、何かが足りないんで)。

「美味しい、美味しいっす、管理人さん、最高です」

「ありがとうございます、どんどん食べちゃってください」

 いやぁ、こんなに喜んで食べてもらえると嬉しいものですね(そりゃ、美味しそうです

もん)。

 まぁ、静岡のおでんは名古屋とともに筆頭に挙げられてますからね(あぁ、静岡出身で

したよね)。

 私にとっては幼少の頃から慣れ親しんだ味なのですが、宮前さんにとっては新鮮なのか

もしれませんね(確かに驚きますよ、静岡おでんって)。

 逆もありますよ、私は静岡を離れてからコンビニやお店でおでんに牛すじやはんぺんが

ないことに驚きましたから(そうですよね、地元にいるときはそれが当たり前と思ってる

んですよね)。


「管理人しゃ〜ん、酔っ払ってきましたっ」

 おや、どうやら宮前さんができあがってしまったようです(あの不必要なほどの笑顔、

そのようですね)。

 私のことを「管理人しゃん」と呼び始めたら、酔ったという合図になるようです(典型

的な酔っ払いですな)。

 まぁ、10本パックのビールの9本を飲んでますからね(管理人さんが買って来た10

本の9本を飲むとは・・・・・・)。

 いいんですよ、どうせ私は1本か2本しか飲めないので(この配分がおかしいことに、

さくらは気づかないんでしょうかね)。

「そろそろ、今日はお開きにしましょうか。眠らないうちに帰った方がいいですよ、片付

けはやっておきますから」

 また、ここで泊まられたりするのもなんですし。

 一応、管理人という建前があるので、住人の方々に万が一そんなことが知れ渡ったら威

厳にかかわります。

「管理人しゃんは優しいでしゅね、いっつも私と飲んでくれて(好きで飲んでるわけじゃ

ないですよ)。私は幸せでしゅ、こんなに仲良くしてもらって(別に仲良しというわけでは

ないんじゃ)。これからも、私と仲良くしてくだしゃいねっ」

 溶けだすくらいにたるませた表情の宮前さん、いい笑顔です(いやいや、管理人さんの

笑顔も負けませんよ)。

「はい、いいですよ。私なんかでよければ、愚痴でもなんでも聞きますよ(あっ、まずい

ですよ、それ)」

「フフフ〜ン、じゃあ、聞いてもらってもいいでしゅか(ほらっ、この展開です)」

 しまった、余計なことを言ってしまいました(自分のせいですよ、責任もって聞いてあ

げてください)。

 分かりました、流れなので(頑張ってね、管理人さん)。

「はい、何かあったんでしょうか」

「実はでしゅね、今日ね、富士と話をしたんでしゅ。そしたらね、私にキスしたことをね、

成りゆきとか、その場の流れとか言いやがったんでしゅ。最悪でしょ、あんなのにキスさ

れた私がかわいそうでしゅよぉ」

「それはひどいですね、本当に彼はそういう気持ちでしたんでしょうか」

「でもね、お前だからしようと思ったんだ、って後から言ったりしてぇ。もう、どうした

いんだか分からないんでしゅよ。勝手にキスしてね、私の心をもてあそぶようなことして

ね、なんなのよ〜」

 そうですか、そういう展開に話は進んでるんですね(えぇ、中々やっかいで)。

「その彼は誰でもよかったんではなく、宮前さんだからしたんですよね。なら、きっと彼

は宮前さんに対して好意があるんです。今はまだ掴みきれてないんですよ、自分の本当の

気持ちを。彼がそういう状態だから、宮前さんも自分の気持ちが掴めないんです。そのう

ち、きっと答えは出ますよ」

「答えって・・・いつ、出るんでしゅか」

「それは私にも分かりません、すぐかもしれませんし、当分先かもしれません。でも、今

は待ちましょう、お互いに自分の気持ちに気づけるまで。よく分からなくなったら、また

私にでも相談してください。的確な答えはあげられないかもしれませんが、こうやって聞

いてあげることはできます。それで宮前さんの心が少しでも落ち着くのであれば、いつで

も話してください」

「管理人しゃん・・・ありがとうございます、超いい人です、管理人しゃんは」

「いえいえ、私は単なるしがない管理人ですよ」

 私にはそれぐらいしかできません、でもそれでいいのでしょう。

 こうして、わざわざ私を頼ってきてくれる宮前さんをないがしろにすることはしません。

 こうやって、彼女とお酒を飲むようになったのも一つの縁です。折角できた縁なのです

から、大切にしたいと思います。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ