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イーディア・クロニクル~笛吹き男と女神の血涙~   作者: ミズノ・トトリ
1章 それぞれの始まり
3/32

宝飾職人は、己が作品に未来を込める。

捕捉説明:

1ドラク=1000コドラク=約1万円


地理の設定


惑星イーディアの地図


 地球の世界地図から、アフリカ・南米・南極大陸を消し、オーストラリア大陸を東端がハワイの位置に来るように移動させ、その北西に東南アジアの島々をちりばめると完成。

 三つの大陸の間には、途中に島はひとつもない大海原、大海洋グレート・ブルーが広がる。


 北米大陸に当たる場所には、イーディア帝国の首都、シャーネポリスのあるイーディット大陸。ヴェスヴィオス自治州はその南西部。


 ユーラシアの位置には、ジュスラーム大陸。大陸を中央で東西に分断する8000m級のリーキ山脈があり、それより東部には独自の文化と思想をもつシュンジュン連邦が栄える。


 オーストラリアと東南アジアをごちゃまぜにした部分は、オーラシア連合国のオセジア大陸。大陸の北部、大海洋沿岸には約40の火山島や海底火山が乱立し、そこに因んだ民間伝承が存在する。

―オーラシア民話集1 女神の血涙(けつるい)


大海洋(グレートブルー)に大陸を創りだし、人類に知恵を与えた3大神が1柱、<南のオーラシア>は、とてもとても泣き虫な女神だった。


 新たな命が芽吹いた時は嬉し泣き、古い命が大地へ還った時はむせび泣き、その度に大地を震わせ、空を陰らせてしまった。


 だが人間たちは、そんな彼女を嫌わず、


「ああ、また『お泣き』になられたか」

 

 と慣れた様子で、彼女の声が届かぬ風上や物陰へ騒がず素早く隠れ、泣き止むのを待った。

 彼女をそっとしておけば、泣き止んだ後に相応の対価が得られるからだった。


 それは、彼女の涙。

 女神オーラシアがその両眼からこぼした熱い滴は、冷えるとそれはそれは美しい、空よりも海よりも青い宝石となったのである。

 人間たちはそれを『オーラシアの涙』と呼び、手を加えて宝飾品にし、それを他所の国へ売って日々の糧とした。その為、人間たちはつつましくも豊かな暮らしを送ることができた。


 ところがある時、人間たちの中に欲深き者共が現れた。

 彼らはより多くの『涙』を欲し、彼女の住む島に忍び込み、あちらこちらを無秩序に掘り漁った。

 しかしいくら探しても、宝石は見つからない。

 それで欲深き者共は、とうとう女神の御神体に手をだし、その巨大な体にピッケルを突き立てた。

 

「ああ、なんと醜き人間たちか!?」


 オーラシアは、初めて人間たちに怒りの声をあげ、両眼からは血の涙が吹き出した。

 怒りの炎よりも、恨みの(ほむら)よりも色濃く鮮やかな、岩のような水のような、ドロリとした紅いソレは、島を不毛の焼け野原に変えながら、海岸まで流れた。

 そして、海水に触れるとその滴は宝石となった。


 怒った女神は地団駄を踏み、欲深き者共の何人かはその場で殺されてしまうが、僅かだが生き残った者もいた。

 彼らは、血の涙で出来た宝石を陶器のツボに納め、里に持ち帰ってしまった。


 するとその直後から、様々な災いが起こりだす。

 鳥は狂い地に落ち、家畜は仲間同士で争いだし、そして人間たちは、手足の力を失い次々に倒れていった。


「これは女神の呪いだ。欲をかいた事への神罰だ!」


 良心を持つ人間たちは、赤い宝石の入ったツボを悪党たちから奪うと、それをあるだけの『女神の涙』と共に、オーラシアが傷を癒している島へと運んだ。

 だが呪いは、運び手たちにも及び、一人、また一人と命を失っていく。

 そして、最後の1人だけとなったころ、ようやく女神の下へたどり着いた。


「女神オーラシアよ。どうか怒りを沈めたまえ!あなたから賜った富を全てお返しいたします!どうかお許しくだされ!」 

  

 傷が癒えたオーラシアは、満身創痍でたどり着いた青年の勇気に心を打たれ、怒りを沈めた。

 そして、災いの元である赤い宝石を、雷で焼き溶かすと、海へ投げ捨てた。

 それは完全に冷え固まると、ただの石ころとなった。

 石ころはそのまま海で朽ち、青年は無事に故郷へ帰った。


 それ以降、人々は女神を二度と傷つけぬとの誓いを立て、彼女の住処に近い島々から、南にあった大陸に移り住み、新たな国を作ったという。

 その国は後に、オーラシア王国となった』


***** 

帝国歴3140年5月5日 午前6時15分

イーディット大陸 南西部大海洋(グレート・ブルー) ヴェスヴィオス自治州

ネーポル市南東部 旧市街区のとある河川敷


「……てな訳で、こいつは売りもんいできねぇよ。悪いな、タキト」

「そりゃねぇよ、師匠ぉ!こんな良い素材、滅多に見つかんねぇのに!」


 タキトと呼ばれた少年は、突き返されたペンダントをもう一度見せつけながら、目の前の小汚(こぎたな)い老人に抗議する。

 だが、彼に宝飾のイロハを教えた師匠は、同情しつつも、再び首を横に振る。

 すると、師匠の後ろから別人の手が伸び、タキトのペンダントを横どりした。


「確かに良い出来だ。お前さんの研磨の腕もあるだろうが、こんな美しい石は見たことねぇ」


 その手の主、師匠と同じくこの集落の居住者である中年男は、真鍮製の台座の中央に埋め込まれた赤い飾り石を、昇ったばかりの太陽にかざすと、驚きの声を上げる。


「ほぉ、向こうが透けて見えるとなりゃ、かなりの上モノだ。……だが、かなり色が濃いな。こりゃエメリーか?」

「ああ。クロームの量が多すぎるんだろうね。それじゃあ研磨剤程度の価値しかない。()()()()()()()()()()は、なっ!」


 だから材料にしたんだ、とタキトはズボンの砂利を払いながら立ち上がると、中年男から己の作品を取り返す。

 街の(はずれ)を流れる川の岸辺に打ち上がった鉄くずとガラスで作った代物でも、この16歳の少年にとっては、大事な生活の(かて)なのだ。

 それを知っている中年男はすんなりと渡すが、同情に満ちた声で、その場を離れようとするタキトに語り掛ける。


「でもなぁ、『赤い石』だからなぁ」

「アルさんまで……。はぁ、『オーラシアの血涙伝説』は、俺だって知ってるさ。それで赤い宝石をなるべく扱わない風習があるってのもな。でもここはヴェスv、もとい()()()()()()()()だぜ?気にする輩なんかいねぇよ」

「じゃあ聞くが、これまでソレみたく『赤』しか使って無いネックレスや指輪を見たことあるのか?そういう品が店の棚に並んでいるのは?」

「……行ったことないから解らん」


 大人たちの忠告に耳を貸さず、タキトはその場を離れ、自分の『家』に戻る。

 市街地を遠くに臨む河川敷の、電車が通るたびにひどい騒音がする橋の下に広がるキャンプ場。戦火によって故郷を追われた者たちが集まるその場所で、粗大ごみとして捨てられていたテントを改造してこしらえた空間が、タキト少年が10年暮らしてきた安全領域だった。

 親代わりの老人たちにダメ出しされたペンダントの他、作業台の上に並ぶ腕輪や髪飾りを、丁寧に鞄へと入れたタキトは、テント内で唯一の電化製品である時計に目をやり、途端に慌てる。


「やべ、あと20分しかねぇ!!……くそう、オジン共がごねた(・・・)せいだ!!」


 鞄をひったくるように持つと、タキトは慌ててテントを出る。

 しかしその際、入り口に置いた写真立てに声をかける事は忘れなかった。


父さん(トト)母さん(カカ)、行ってきます」


 写真にはこじんまりとした服飾店の前で、彼の父と母が6歳の息子を挟んで映っており、朝日に向かって駆ける成長した彼の背を見送るように、幸せそうな笑みを浮かべていた。


*****

午前6時20分

ネーポル市南東部 新市街地 マルフィ駅前


 市の南東部にある住宅街から中心部のオフィス街へと向かう通勤の大動脈、マルフィ駅。

 始発すら動いていない時間帯ゆえ、駅の周辺に居るのは3種類の人間達だけ。


 ジョギングや散歩を日課とする者。

 降りる駅を間違えた上に終電を逃したか、あるいは家出して野宿する者。

 そして、そんな彼ら相手に小物を売る、露天商たち(あるいは置き引き)。タキトもその1人だ。


 だが今日は、先ほどの河原での問答の所為でかなり出遅れた。品物を広げられたのは、駅からかなり離れたほの暗い場所。露天商仲間の間では、『ハズレ』と呼ばれている場所だった。

 しかも、営業許可は始発が動き始める午前6時30分まで。タキトが商品を並べた頃には、帝国人の警官がスタンバトンを手に追い出しに来るまで、残り10分ほどしかなかった。

 周りを見回しても、どこぞで拾って来た小汚い雑貨を前に、虚空を見つめ変な笑みを浮かべる顔なじみの商売仲間か、新聞紙に包まり寝ているサラリーマン、そしてその傍らに置かれた鞄から財布をすり取ろうとしている小汚い少女だけ。客になりそうな人間の姿は見当たらない。

 今日は朝食抜きか、と絶望をかみしめながら、少年は足を崩し、薄明るい空を見上げ呟く。


「はぁ……今日は厄日だ。せっかく最高傑作が出来上がったのに」

「ほう、それってこのペンダントの事かい?」

「!?」


 突然聞こえた声に驚き、タキトは思わず、崩した足を整える。

 目の前で商品を眺める、若い男の姿を捉えた。視線の先にあるのは、銅製の枠に赤い石が()められた小さなペンダント。今朝早くにタキトが作った『最高傑作』だ。


「え、だれ!?どこから!?」

「たはは。通りすがりの『客になろうかな?』って考えてるお兄さんで、すぐそこの小路(こうじ)を抜けてきたんだけど」


 苦笑いを浮かべる若者が指した先を追うと、……なるほど、タキトが陣取った場所(『ハズレ』)から1mほど右に行くと、ビルとビルの間に細い路地がある。彼はそこから出てきたらしい。

 納得したタキトは、ペンダントを見つめ続けている若者に謝罪する。


「これは、大変失礼しました」

「いや、こちらこそ。変なタイミングで声かけちゃったから」


 タキトは、片手で制する『お客』の姿、特に首から上をこっそりと観察する。

 まず、彼は地元の人間ではなかった。毎日この辺りに店を出すタキトが知らない顔だったし、春の終わりというこの時期に、既に肌が程よく日に焼けている。おそらく余所、それも南方から来た旅行者だろう。

 そして、タキトが一番注意を払ったのが、“耳”。


「(ああ、シャーナ耳……()()()か)」


 目の前の若者は、両耳とも横に長く直角三角形のようになっている。これは『シャーナ耳』と呼ばれ、帝国の人口の9割を占める『イーディア人』の遺伝的特徴だ。

 それに対し残りの1割のうちのさらに少数派、ヴェスヴィオス地域の原住民族であるタキトたち『ヴェスヴィ人』は、ハートを半分に割ったような形、『ヴェスヴ耳』である。

 生物学的には、シャーナ耳が優勢形質、ヴェスヴ耳が劣性形質の関係にあり、二つの遺伝子が混在している、つまりはイーディア人とヴェスヴィ人のハーフの場合は、ほぼ確実にシャーナ耳として生まれてくるという。

 しかし目の前にいる、20代中頃に見える青年がハーフという可能性は考えられない。

 そしてその理由は、タキトが内心で動揺している原因でもある。


「いえいえ、品物並べていながら、不注意だったこちらが悪いんですよ。(気を付けないと、因縁付けられたら即座に留置場(ブタ箱)、だもんなぁ)」


 しかし、心中でそう警戒されているとは知らずに、若者は再びタキトに問いかける。


「それで、このペンダントは君が作ったのかい?かなり良い細工だし。真ん中の宝石もなかなか良質だね」

「あっ!いいえ、お客様。それは宝石ではなく、川原で拾い集めたガラス片を加工した物です」


 とっさに、そんな言葉が出てしまう。ここであのペンダントを宝石だと勘違いされたまま買われると、最悪の場合『詐欺罪』で捕まり、そのままろくな裁判も受けられずに『刑務所行き』となる、そう考えてしまったからだ。

 だが、若者はタキトの言葉に一瞬目を丸くするが、相変わらずペンダントを丁寧に扱い、尋ねてくる。


「……この真ん中の石、ルビーじゃなくてガラスなのかい?」

「ええ。ただ、ほんとにガラスなのかは解りません。元々はこれより二回りほど大きい、細長い破片で。宝石に詳しい師匠によると、上流にある工場から流れてきたエメリーじゃないかって」


 ルビーとエメリーは、どちらも鋼玉(コランダム)と呼ばれる、酸化アルミニウムの結晶にクロームが混ざった天然の鉱物。だが、その価値は大きく異なる。

 ルビーと呼ばれる高価な鋼玉は、混ざったクロームの割合が1%以内でなければならず、それより多ければ価値は下がってしまう上、5%を超えるとエメリーと呼び名が変わり、良くて工場での研磨剤程度にしか使われなくなる。


「へぇ、同じ石なのに、混ざり物の量で価値が変ってしまうのか」

「ええ。ちなみに、混ざり物がクロームから鉄やチタニウムに変わると、青い石、サファイアになるんです」


 師匠直伝の知識を披露し、ついドヤ顔になるタキト。

 若いお客は、そんな彼に興味を示す。


「博識なんだね、君。どこか名門の学校に通っているのかい?」

「あ……いえ。学校には、行っていません」


 一転して、タキトの顔に陰りが浮かぶ。

 そして、悔し気に自分の耳を触りながら、彼は若者に語る。


「お客様、この耳でわかりますよね?俺、『ヴェスヴィ』なんです。両親は10年前の戦争で死んで、最初はイーディア人の孤児院に引き取られて学校にも行ってたんですが、そこで……」

「ああ、すまない。皆まで言わなくていい。……よし、このペンダントを買わせてもらおう。代金はこれで」

「あ、はい。30コドラクで、ってええ!?」


 ペンダントの値を告げる前に、若者の方から渡された紙幣を見て、タキトは思わずのけ反る。

 額面は1ドラク。1000コドラクに相当する。

 

「あの、すいません。970コドラクも釣銭が用意できなくて、ですね……」


 タキトは、触るのも恐れ多いという感じで、1ドラク札を返そうとする。

 これは無理もない事で、彼だけでなく、現在の(・・・)ヴェスヴィ人の多くが、1日に500コドラク、渡された紙幣の半額を稼げれば上等という生活を強いられているのだ。

 しかし若者は、揶揄(からか)いや噓が感じられない、純粋な笑みをタキトへ向けたまま、返された紙幣を小さくたたみ、それを少年が羽織っている、古いが小奇麗なジャケットの胸ポケットへねじ込む。

 そして、肩をポンッと叩くと、タキトに目線を合わせて、静かに告げる。


「これには、君の考えている以上の価値があるんだ」

「え?」


 その言葉と若者の顔に、タキトは一瞬ドキリとする。

 顔は確かに笑んでいるのに、歯向かえば殺される、なぜかそう錯覚してしまうほどの、真剣な声と眼だった。

 だが、それも本当に一瞬の事。すぐにまた普通の笑みに戻ると、若者はペンダントを腰のポーチに入れて立ち上がる。


「俺も昔からこういう細工が得意でね。君みたいにガラクタで色々作っていたんだよ。だから、こいつがどれだけ凄いのかが解る。ガチで、そこいらのブランドショップに置けるレベルだ」

「そんな事……」

「世辞でも|揶揄<からか>いでもないぞ。あと、同郷の人間(・・・・・)として、純粋に君を応援したいんだよ」


 同郷、その意味を聞こうとするタキトだが、その前に、足元においていた腕時計のアラームが鳴りだす。

 時刻は、6時28分。そして同時に、電車が駅に停車しようと減速する騒音が、左手の方から聞こえる。 

 すると、通りに点々と並ぶ露天商たちの下からも、同じようなアラーム音がコーラスを始め、まるで何かから逃げるように、店を片付けた者から次々に去っていく。 


「やべ!……すいません、今日はこれで店じまいです。早くどかねぇと『追い出し』が来る!」


 タキトも周りに倣い、慌てて露店を片付けだす。

 手慣れた様子で撤収準備をする彼に、今度は若者の方が目を丸くする。残った商品を片付け、敷物を畳むまで、10秒と掛からなかった。


「もしかして、ここで売ってちゃダメだったり?」

「あ、いえ。『今の時間』は、ちゃんと合法です。ただ、許可は通勤ラッシュが始まる6時半以前までで。ラッシュが始まる30分丁度に、警官が『追い出し』に来るんです」


 事情を呑み込めていないお客に、タキトはリュックを背負った状態で説明した。

 するとその時、通りの向こう、角を曲がった先から怒声が聞こえた。


「おらダニどもぉ、いつまでごみを散らかしてやがる!!」


 それから、何かが蹴散らされたような雑音と共に、売り物であったであろう野菜の欠片が道を転がってくる。

 寝ていたサラリーマンはそれで飛び起き、財布が抜かれた自分の鞄を抱きかかえ、スリの少女は戦利品を片手に、タキトたちの傍を走り去った。


「な!?まだ1分前だぞ!……お客さん、すいませんがこっちに!!」

「お、おい、あれが警官のすることか!?」


 『追い出し』が何なのか察した若者の手を引いたタキトは、彼が出てきたという小路に2人で逃げ込み、陰から様子を見る。

 

「すいません、お客さん。多分、あなたは大丈夫だと思いますけど、念の為……」

「いや、助かった。あの様子じゃこっちも巻き添えになりそうだった。……これがこの街の流儀ってわけか」


 2人の視線の先、駅前の方から、2人組の警官が現れる。

 一人は細身で長身、もう一人は太った4頭身。どちらも警棒を手に、警官とは思えぬ下品な表情を浮かべていた。


「オラオラオラ!“人間様”の時間が始まったぞ!寄生虫はさっさとドブに戻りやがれ!」

「『退去勧告』に従わぬ場合は、反社会的思想ありと見なして拘束する!」  

 

 怒鳴りながら歩く2人に、サラリーマンは四つん這いになり、野菜くずを蹴散らしながら駅の方へ消えた。 

 それをちらりと見送った警官たちは、すぐさま自分たちの職務へと戻り、片付けが遅れた露店に目を付ける。

 そして……


 ガシャーーン


 それから先をタキトは見ていられず、小路の奥へと耳を塞ぎながら逃げる。

 若者は、その後ろ姿を無言で見送り、彼から買ったペンダントを手に取り、ぼそりと呟く。


「どっちが寄生虫だよ。あの少年の方が、お前達よりよっぽど人間らしいよ」


 紅い石を眺めるその眼には、強い憎しみの色が浮かんでいた。

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