7.準貴族
いきなり、3年の月日が飛びます。
(この3年間のことは、いつか番外編でもつくろうと思っています。)
孤児院で生活して、さらに3年の月日が経った。マリスは7歳になった。ミーザは2年前に孤児院から卒業し、今は、違う孤児院の職員になっている。そして、3年前リーダーで、今は副リーダーのディークが孤児院を出るときがやって来た。それと、同時にディークは通っていた学院も卒業する。
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マリスやディークをはじめ、孤児院の子どもには姓がない。そのため、今までは共通して、学校などでは、子どもたちはエレルッサ(初代院長クリスチャール侯爵のセカンドネーム)の姓を名乗っている。
これには、大きな理由がある。
孤児院を出て、学業を修め立派になった若者たちを利用しようとする輩が現れた。
自称母親、自称父親、自称親戚などである。実際に血のつながりがあったとしても、孤児院に預けておいて、都合の良い時だけ出てくる連中がいた。あるいは、親と思われる人間の負債や責任を背負わされる若者もいた。
この事態をうけて、孤児院に入った子どもには、親や親戚は一切の権利の主張をできなくした。苗字を一時的になくすのはその一環である。孤児院から出るとき、院長から新しい苗字がもらえることになっている。
通常なら、ディークも院長に苗字をもらうのだが……彼には、貴族の後見がつくことになった。
貴族の後見がつくと、準貴族になる。準貴族とは貴族の姓が名乗ることができ、その貴族の支援を受けることができる。反対に、被後見者が功績を残せば、その貴族の名声は飛躍する。学院で優秀な成績を修めたものには、後見につきたい貴族が殺到するのである。
ディークは、オランジュ家からの後見がついた。
オランジュ家の当主から、新しいセカンドネームも贈られた。(セカンドネームは、準貴族以上の証である)
ディークは、ディーク・フレデリック・オランジュという名前になり孤児院から卒業していった。
ちなみに、後見が着いた理由は、学院で行った『小さい力で、大きなものを動かす』という研究が評価されたからである。彼が、この題材に着目した原因は、マリスである。小さなマリスが大きなものを動かしているのを見て、自分なりの解釈をまとめたものだったりする。
ディークが孤児院を出た次の日、マリスは突然院長室に呼ばれた。
院長室のソファーには、初老の女性が、品良く座っていた。
このおばあさん、いったい何者!?
11月23日 改訂しました。