30.おにぎり
なかなか、思ったとおりの展開までたどり着かないですね。
今は、準備期間ということですね……。
――ローブを預けた次の日
ローブが出来上がるのは明日のため、マリスは一日暇を持て余している……わけではない。
今日は、田植えの日である。
コメの特許が出たので、屋敷の田を縮小し、領地の方にコメを栽培したいとマリスは思っていた。とはいっても、田んぼに適した土地への改良や人員の問題があるので、大々的にはできない。
そこで考えたのが、『荒地になりかけている土地』を利用することである。
『荒地になりかけている土地』とは跡継ぎが無い、または畑を継ぐ人間がいなくなって荒地になりかけている土地である。そういった土地はシュタイン家で管理し、別の農家で畑を継ぐことができなかった次男・三男などに渡されることが多い。このような荒地になりかけている土地の一部を田んぼにすることにしたのだ。
しかし、まだ問題があった……見た目は雑草の未知の作物を、しかも水溜りのなかに栽培することである。いくら、領主の身内の命令とはいっても難しいものがある。そこで、栽培が軌道に乗るまで領主に納める税の軽くし、支援をすることにした。すると、若い夫婦がコメをつくってくれることになった。
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「お嬢様!わしらがやりますんで、大丈夫ですんで。」
マリスは、コメを作る夫婦や手伝いに来た近所の人に交じって田んぼに入っていた。もちろん、田植えをするためだ。荒地を整備したり、田をおこすことは既存の農機具カラクリでできるが、田植えはまだ手作業である。
「毎年やっているから大丈夫ですよ。……苗は数本を一気に植えてください。」
マリスは、手に苗を持って答えた。貴族がいることでやりづらいことはマリスにも分かっていたが、最初なのでやりたいのだ。
アイガモもどきを入れることも考えて、一定の間隔をあけて田植えをしていった。
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「これがコメなんですな。(見た目が雑草だけど)うまくてびっくりですわ。」
半日後、田植えが終わり、作業を行った人たちにマリスはおにぎり(馬車の保冷庫にいれておいた)を配った。具には、アイガモもどきの肉を刻んだものが入っている。
本当に食べられるのかと半信半疑で、雑草らしき謎の作物の植え替えを手伝った人たちも、おにぎりに満足しているようだ。
「ですが……。」
「何か問題でもありますか?」
何か問題があるようだが、言いづらいようだ。
「後で問題になるよりいいですから、言ってください。」
「すみません。この鳥なんですがね……ワシらが普通に焼いただけでは、硬い肉なんです。カラクリで全体を一気に焼かないとやわらかくならないんです。」
マリスの屋敷では、料理兼掃除係のオメガがカラクリオーブン(〇〇の宅急便にでてくるようなもの)で、アイガモもどきを調理していた。一般的に、貴族や金持ちの屋敷には置いてあるオーブンだが、庶民には普及していない。そのまま生で売り出しても、庶民には買い手がつかない。かといって、食肉のところに委託して燻製にしてもらっても硬いままだろう。
「ありがとう、参考になったわ。」
(これは、一度売り出し方を考えないといけないわ。)
――検討事項が増えたのだった。
ローブを受け取ったら、さくさくと生きたいと思っています。




