26.最初の課題
微妙なところで切れて短いですが、投稿します。
入学式の次の日、つまり今日から授業が始まる。入学して初めのうちは共通棟での授業である。
マリスのいるシィーラ寮は共通棟から遠いので早めに移動しなければいけない。
寮を出て、すぐにある食堂でマギパンとスープと果物を食べた。朝のメニューは全員共通になっている。
シュタイン家での米粉入りモチモチパンに慣れてしまったせいか、少々パンがボソボソに感じられた。
スープは、コンソメ風味だが塩が足りない気がする。
果物は、サラダがわりになっている。前の世界の瓜のようなものが大量に切っておいてあった。
この技術院では、食費も含め、学費はすべて無料である。ただし、貴族や規定以上の所得を持つ準貴族は、一定以上の寄付金を払わなければいけない。シュタイン家の場合は、寄付金の代わりに野菜を納入している。
マリスは、食事を終えた後、自分の部屋に戻った。
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部屋に戻っても特にやることはない。
着ている服の上から、学校指定のローブを羽織り最低限の筆記用具とノート(まだ何がいるかよく分からないので)を持ち、マリスは部屋を出た。
ちょうど、部屋からミゼルとロゼも出てきていた。
「おはよう。ミゼル、ロゼ。」
談話室へでる一歩手前だったミゼルを呼び止める。
「おはよう、マリス!ロゼ!」
ミゼルがクルンと振り返ると、今日はポニーテール(やっぱりクルクル巻き毛)のしっぽもクルンとなり、扉にビシッと当たった。――あれは、立派な凶器だと思う。
「……おはよう。」
ロゼは眠たげに目をこすりながらドアを閉める。朝がつらいようだ。
こうして、三人は一緒に、共通棟に行くことにした。
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「人間にとって、生きていくためにないと困るものは何か!」
教壇には、先端の曲がった杖を持った、立派な白いひげを生やした教授が熱弁している。
「そこのおぬし!何じゃと思う?」
一番前に座っていた生徒にいきなり話を振った。
「地位と名誉です!」
「バカモン!!!」
“ベシッ!”
答えた生徒は、軽く杖ではたかれた。
「そんなことを言っておると、すぐに足元をすくわれるぞい!そこのおぬしはどうじゃ?」
また、近くの生徒が当てられた。
「お金と人脈です。」
恐る恐る答えた割には、内容がアレだ。
「半分正解じゃ。金や地位や名誉は簡単になくなる。しかし、人脈はすぐには無くならん。まあ、金の切れ目は縁の切れ目という言葉もあるが、金でつながっているとそうなるのじゃ。人間のつながりは大切じゃ。ほれ、今、おぬしたちが着ておるそのローブの背にあるレアンデールの印章も沢山の人によって考えられ作られたものじゃ。」
学院指定のローブの背には、大きな印章がある。この印章は技術院のマークである。
皆、それぞれ背中を確認する。
「そこでじゃ、印章を傷つけぬように、そのローブを改造してくるのじゃ!印章を傷つけなければどんなデザインでもかまわん。ただし、レアンデールの学院街に住む、自分以外のだれかにやってもらうのじゃ。間違っても、自分の家のお針子にやってもらった奴は、この講義は落第じゃ!期限は5日後まで、できたものから、ワシの研究室に持ってくること。では、少々早いがこれで今日の授業はおわりじゃ。」
皆、顔を引きつらせて、荷物を片付ける。
技術院の付近はレアンデール学院街と呼ばれ、書物やカラクリを扱う店が多くあり、税金が安い。とはいっても、税金が安いのは、30歳までである。若い職人たちが店を立ち上げるのを助けるための措置である。当然、熟練した職人――つまり、貴族御用達の者はほとんどいない。
ローブは、年に2枚しか支給されない。布地自体に特殊な加工がしてあり、貴族でもなかなか手にはいらない。
失敗したら、そのデザインで半年過ごすことになる。
無名の職人たちの中から、服飾関係の良い職人を探すのは、至難の業である。
地震の被害が悪化していますが、皆様大丈夫でしょうか?
また、地震被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
私のいる地域では、確かプレートが違うので最初の地震だけ揺れましたが、無事です。電力が足りないと言うことなので、節電に心がけています。(ご飯時は電気を極力使わないようにしています。)
皆様十分にお気をつけてください。