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21.勧誘

マリスは、イピサに言われたとおりに貴族の系譜などに目を通し始めた。

各家の力関係や得意分野などを重点的に調べた。


貴族には、各家ごとに『管理義務』がある。管理義務とは、決められた分野においてその貴族が責任を持つということである。その分野の元締めである。

シュタイン家には、品種改良と王都用作物の栽培に管理義務がある。

そのほかにも、ヴェルトシュタイン家の作物流通、オランジュ家のカラクリ(部品)、ローズ家の薬物(植物に限る)といった感じだ。カラクリの場合、細かく管理義務が分かれている。

貴族に任せられない分野や、貴族が管理している分野を束ねているのが、王都の役所である。


農業器具に管理義務を持つ貴族ももちろんいる。この国では早くから農作業にカラクリが取り入れられ、作業の軽減が図られている。畑を耕すトラクターから収穫のためのものまである。


マリスは、これから入るレアンデールでコメ栽培に必要な器具をつくってくれる技術者につなぎを取りたいのだ。


今までは、屋敷の畑でマリスが細々と続けていた稲作だが、特許を取った以上大々的に売り出したい。そのためには、農作業の機械化により効率を上げたいのである。



打算的な理由でマリスは、貴族の名前をついでに覚えていたのだが、何しろ数が多すぎる。専門用語がありすぎて、マリスにはかなり難しかった。



貴族の名前を調べているうちに、かなり時間が経ってしまった。


(明日は、大事なレアンデールの入学式だからもう寝ないと・・・)


マリスは明日寮に持っていく荷物の中に、今読んでいた貴族録をしまった。



*******************


持ってきた荷物を新入生用のクロークに預け、マリスは入学式に臨んだ。

レアンデールには寮が3つあり、入る寮は入学式後に決まるため寮に荷物を預けることはできない。

どの寮に入るかは希望制だが、定員オーバーの場合は試験のときの成績順である。


一番人気は、共通棟(必須分野を行う教室)と正門が近いアーノル寮

2番人気は、同じく共通棟と専門棟が近いベーゼ寮

一番人気が無いのが、専門棟と研究棟には近いシィーラ寮である。


1年目はほとんど皆同じ科目をとり、その講義は共通棟で行われる。そのため、1日の大半をすごす共通棟に近い方が人気がある。


ちなみに、マリスの希望はシィーラ寮である。理由は、シュタイン家に一番近いからである。

畑の方は、門番のジョンソンや庭師兼警備員のおじいさんにお願いしている。しかし、最近栽培を始めたビート(砂糖大根)の生育が気になるのでなるべく見に行きたいのである。




********************


「ウチの寮の隣にある食堂はホントおいしいよ~」

「我が、ベーゼ寮では共通棟にも専門棟にもちかいぞ」

「いや、ウチのアーノル寮は正門に近いから、いろいろと便利がいいよ~」

きいいいいいいいいんと響き渡るスピーカーの音とともに、各寮の代表者たちが新入生の勧誘を行っている。


マリスは、いち早くシィーラ寮のブースに着いたからなのか、あまり人が集まっていない。

その原因は、きっとマリスの前にいるシィーラ寮代表のせいであろう。


「……研究棟にも近いため・・・研究に没頭できます・・・」

代表の声に合わせて薄気味悪い音楽が鳴っている。


(なんだか、不安になってきた。)


「先輩、この音楽はなんですか?」

我慢ができなくなって、マリスは聞いてみた。

「よくぞ、きいてくれた!この音楽は自分が開発した不安をあおる音なんだよ。不安を抱いた人たちは、自分の勧誘を聞いて救いを求めにこの寮に入るようになるのさ!」

自慢げに右手でグッとスピーカーを握り締め、左手で気色悪い音楽を流している機械をなでている彼には、周りの様子は見えていないようだった。


逆効果になっていると思うのだが……かえって不安に陥った新入生たちは他の寮に行っている。


マリスは、適当に相槌を打った後、見知った人物を見つけた。


「ロゼ!ひさしぶり。」


シィーラ寮の塊の中にロゼがいた。

すぐにロゼの姿が目に入ったのは、シィーラ寮を希望している女性が、現在マリス以外では彼女しかいなかったからだ。


「ひさしぶり。」

「シィーラ寮は人が少ないね。」

「静かでいい。」

「女性がいないね。」

「ちょっと困る。……被験者がいなくなる。」


(被験者って何~?)


マリスもそうだが、ロゼも口数が少ない。そのため、会話が発展しない。

会話相手が少ないのも寂しいが、とある理由で女性がいないと困るのだ。


今後ビートで砂糖を作り、スイーツをつくって試食してもらうのだ。

この国では、クッキーやスコーン、マドレーヌといったお菓子はある。しかし、お菓子とはいっても砂糖が入っていないためあまり甘くない。中に入った果物の甘みがあるだけである。

砂糖はあるが、この国では取れないため高価である。

そこで、マリスが目をつけたのがビートだ。

この国では、もともと葉を食べる野菜だった。初代シュタイン子爵の『我の冒険記』によれば、この植物の根は甘くておいしかったらしい(食物繊維が硬く、土も一緒に口に入ったため、食用にするには気が向かなかったらしい。)

そこで、このビートのなかで特に甘みが強いものを栽培しているところなのだ。これが成功すれば、砂糖を抽出してあま~いスイーツがつくれるのだ。

初めての試みのため、甘いものが大好きな女の子たちに試食してもらい、まずは口コミなどで広めるつもりだ。



そのためには、身近でモニターがほしいのだ。



「ロゼ!ちょっと、あの先輩からスピーカーを借りて(奪って)この寮の宣伝して、女の子を集めるわ。」

「被験者がほしい。私も協力する。」


一致団結して、再び宣伝している先輩のもとに向かおうとしたとき、派手な巻き髪の女の子がスピーカーを奪った。


「何ですの?このスピーカーと音楽は!」

「この音楽は人間の持つ不安を増幅させるために・・・・」

「不安あおってどうするんですの!みんな離れていってますよ!」

「うぐっ」


今、この寮の希望者は、オタク風な男性が3人と、マリス・ロゼ・なぞの女性の6人だけだった。

ちなみに寮の定員は25人である。


「このスピーカーを貸して下さい。私が宣伝しますからその音楽を止めてくださいな。」


あわてて、先輩が音楽を止めた後、彼女は演説を始めた。

その甲斐があって、入寮希望者は倍以上の15人にまで増えた。


結局、他の寮から3人流れてきて、シィーラ寮の今年の入寮者は18人になった。


新キャラの名前を募集します。


巻き巻きクルクル髪の彼女です。


ミゼル・〇〇〇〇・ロランジュ


この〇〇の中に名前を入れたいのですが、何かいい名前は無いでしょうか?

文字数は決まっていません。


よろしくお願いします。

※名前の募集を締め切ります。ありがとうございました。


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