17.白いごはん
やっと念願の・・・
マリスが、シュタイン家の一員となってから、五年の月日が経ち、中等院に通うような年齢になった。
10歳のときに、屋敷の畑の一部を与えられてから、いろいろな作物を少しずつ育ててきた。
それから3年、こっそり育てていたコメも食べられるレベルまで増やすことに成功した。
そして、ついにご飯の試食の日がやってきた。
マリスは、調理場に人がいないことを確認する。なんだか、コッソリしたい気分だからだ。
来年用の種籾はきちんと別に管理しておき、食べても良い分だけ、なべに入れて炊いていく。
(水は、それなりに入れて、最初強火で噴出したら中火、水が無くなってきたようだったら弱火にする。最後は火を消してしばらく置いておく……だったかな?)
うろ覚えであるが、うまくご飯を炊くことができた。
器にスプーンでよそって、一口食べてみる。
「おいしい!――でも、何か足りない。」
二口食べても、三口食べても原因は分からなかった。
そこへ、料理係のメイドさんが通りかかった。
こっそり、つくっていたマリスだったがなぜか、ごはんの試食を持ちかけた。
「まあ!ありがとうございますお嬢様。それでは、いただきます。」
マリスは、メイドさんが食べている姿を見て、なぜか満たされた気分になった。
足りないもの――それは、一緒に食べる人だったのだ。
「屋敷内にいる人に連絡します。ぜひ、調理場にきてください!」
マリスは、『呼びかけ鈴』(『11話.精神力』参照)をつかって、屋敷全体の人にご飯の試食を呼びかけた。
その後、調理場には、イピサを初め使用人たちが全員集合し、ご飯の試食をした。
「なんだか、しっとりしておいしいですわ。」
「なべで煮るだけというのがいいですな。」
「新食感です。」
「来年からもう少し沢山つくりなさい。」
試食結果が好評だったので、マリスは、もう少し来年から大きな田んぼにすることにしたのだった。
少し年数が飛びました。
ちょっと展開を進めていきます。