閑話3 クリニエル王国の出来事
一方その頃、クリニエル王国では、犯罪者の集団を捕まえるために騎士団がランダーで探索を行っていた。彼らはクリニエル王国側から半日くらい進んだ位置で休憩をとっていると、ひとりの騎士が走ってきた。
「団長、明らかに商隊とは異なる怪しい数名が、クリニエル王国側へ向かって移動しています。今なら捕らえられますが如何しますか」
鍛えられているのか、息を切らした様子もなく話しかけていた。
「犯罪者の関連者かも知れないな。まずはどのような人物なのかを聞いて、怪しい行動を取ったら捕まえろ。情報を聞き出したいから、くれぐれも殺すな」
団長の言葉に騎士は頷いて、再び駆けだしていく。
「ほかの者たちは出発の準備をしながら、周囲を警戒しろ。ほかに怪しい人物がいたらすぐに知らせろ」
命令を出してから、団長は騎士が駆けだした方向へ目を移した。まだ日は高くて遠くまで見通せるために、怪しい人物たちを確認できた。
騎士たちが怪しい人物たちを取り囲むと、実力差を感じ取ったのか怪しい人物たちは抵抗することもなく騎士たちに捕まっている。
「この周辺の者たちなら、俺たちがクリニエル王国の騎士団と分かるはずだ。抵抗することなく捕まるとは、犯罪者たちとは無関係なのか。それとも意図的に捕まって情報を聞き出そうとしているのか。だが捕まる理由がわからない」
団長は呟きながら出発の準備を完了させた。
いつでも出発ができる状態になって、団長の前には怪しい人物たちが騎士に押さえられて座っていた。全員が男で身なりからは商人や冒険者ではなさそうにみえる。引き締まった体と武器を持っていたようで、戦いには慣れているようだ。
「俺たちはクリニエル王国の騎士団で、王国の治安維持を目的にランダーに怪しい人物がいないかを監視している。お前たちは冒険者にも商人にも見えないが、何をするためにランダーを彷徨いていた? 身分を証明するものがあれば見せろ」
団長が捕まえた男たちに向かって質問する。自分たちの立場を優位にするためなのか元々の性格なのか、明らかに男たちを見下した話し方だった。
だが団長の言葉に捕らえられた男たちが無言のままでいると、団長が横にいる騎士へ指示を出す。騎士は男たちの中でも1番強そうな男を引き連れて、離れた位置へ移動した。その騎士と一緒にふたりの騎士があとを続いた。
「何分まで耐えられるのか楽しみだ。今のうちに正体を明かしたほうが楽だぞ」
団長は獲物を追いかけるような目つきで、捕まえた男たちを見渡した。
5分もしないうちに、男を連れて行った騎士が戻ってきた。
「団長、骨がなさ過ぎます。すぐに吐いてしまって、今は倒れていますが、すぐに起き上がってくると思います」
残念そうな表情をしながら騎士が報告した。
「もう少し情報を引き出すために、もうひとり試してみるか」
団長の言葉から、この騎士団では当たり前の行動で、本来の騎士とは反する行動のように見受けられる。だが彼らは、ご褒美を手に入れたような感覚で話していた。
「そうしたいのでが、あまりにも有力な情報は吐いたので、本当かを確認したほうがよいかと思います。それで嘘をついていたと分かれば――」
「全てを言わなくても分かる。どちらの結果に転んでも、この騎士団にはうれしい知らせのようだが、その有力な情報とはどのような内容だ?」
団長が騎士の言葉を遮って、騎士へ聞き返した。
騎士の発言によっては、捕まった男たちの運命が終わる可能性もある。男たちは聞き耳を立てて、騎士の言葉を逃さないようにしていた。
「彼らは盗賊団の残党らしいです。それ自体はたいした内容ではありませんが、彼らはランダーに存在している拠点から逃げてきました。どうやら、その拠点を占領しようとして、返り討ちにあったようです」
「その拠点にいたのが犯罪者たちだったのか」
団長が急かすように聞き返した。
「残念ながら違うようですが、若い男女のふたりでした。吐かせた感じでは例のふたりを思わせる容姿で、拠点もつい最近に作られたようです」
例のふたりで団長は分かったのか、手を上げて騎士の話を終わりにさせた。騎士はその場に立った状態で、団長の判断を仰いでいるようだ。
「もしその話しが本当なら、俺たちを拾い上げてくれた陛下に、うれしい知らせを届けられる。全体で動くと相手に気づかれる可能性があるから、10名ほどで確認へ行け。その人数がいれば、中位魔物も回避できるだろう」
命令された騎士が仲間の騎士たちへ声をかけて、ランダーを北上していった。




