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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
3_ルシェロ王国の街

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第19話 ギルド証と新しい技

 体格のよい男性の声で、訓練場の動きが止まって静けさが訪れた。最初に動き出して口を開いたのはイリスさんだった。


「ギルドマスター、訓練場に何か用事があるのですか」


 体格のよい男性の正体が分かったが、まさかギルドマスターとは思わなかった。40代にみえるが現役冒険者と言われても納得できる雰囲気があった。


「何やらお節介好きが試合と聞いて建物内から眺めていたが、予想の斜め上をいく面白い結果で、思わず来てしまった」


 イリスさんは困った表情をみせていた。


「ギルドマスター、こちらのふたりはこれから試験になります」


「そうか。試験だが、自分の権限で試合をせずに合格だ。これだけの力量を見せつければ、誰も文句は言わないだろう」


「分かりました。そのように処理します」


 イリスさんが答えて、俺たちはギルドマスターの横を通り過ぎて建物へ入る。途中でギルドマスターの名前が、オルソンさんと教えてもらった。


 受付カウンターで疾風の牙の彼らと別れて、カウンター越しにイリスさんから説明を受ける。説明を受ける前に、大柄な男が登録試験の費用を出してくれた。何度も断ったが、譲れないと銀貨2枚をカウンターに置いていった。


「試験は合格ですので、登録手続きに入ります。ギルド証には表側に名前と性別、それに冒険者ランクが記入されます。裏側は登録ギルド名、今回はルーペン冒険者ギルドで、その他に得意な武器か魔法が書かれます」


 渡された紙に俺とレネは、それぞれの得意武器として槍と短剣を記入した。日本語で書いたつもりでもイリスさんには伝わったので、言葉と同様に謎の処理がされているのだろう。


「登録が終わったあとで構わないが、魔石の換金は可能だろうか」


「大丈夫ですよ。まずはギルド証を作りますので、少しお待ちください」


 イリスさんが奥の扉へ消えて、しばらくすると戻ってきた。手には魔道具と思われる品物を持っている。品物をカウンターの上へ置いて、俺とレネには長さ5センチで幅2センチくらいのプレートを渡した。


 鉱物鑑定で確認すると銅板だと判明した。


「このプレートがギルド証なのか」


「その通りです。このあと登録してもらいますが、ギルド証をなくすと有料での再発行となりますので、大切に保管してください。ちなみにギルド証の材質が冒険者ランクも表していますよ」


 銅板だから1番下の冒険者ランクは銅関連の名前だろう。材質で冒険者ランクが分かるのなら、ランク名称は鉱物を使うようだ。


「なくさないように気をつける。それで何をすればよいのか?」


「こちらの魔道具にギルド証を乗せて、その上に手をかざしてください。本人とギルド証を関連づける魔法具で、魔力恩恵が1でも作れますので安心してください」


 魔力なしと判断されても平気なようだ。言われたとおりに、ギルド証を置いてから手をかざした。俺の準備が整ったのを確認するとイリスさんが操作を始める。


 すぐに終わったらしくて、レネが続けて登録をおこなった。


「これで私たちは冒険者になれましたわ」


「キュウヤさんとレネさんの活躍を楽しみにしています。続いて、冒険者ギルドについて簡単に説明させて頂きます」


 最初に規則の説明があって、一般常識範囲で行動するような注意事項だった。次の説明は冒険者ギルドでの活動で、依頼を受けて仕事する方式で、冒険者ランクで選べる依頼が分かれていた。


「どのような冒険者ランクがあるのか教えてほしい」


「登録時はカッパーランクで、今のキュウヤさんとレネさんが該当します。それ以降はシルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトと続きます。ゴールドランクが一人前と認められますので、最初に目指してください」


 ミスリルなどの元の世界にはなかった鉱物名が出てきてうれしくなった。早めに鉱物を入手して、拠点や武器を充実していきたい。


「依頼を達成させながら、気長にランクアップを目指したい」


「無理せずに依頼を進めればゴールドになれます。キュウヤさんとレネさんの実力なら、一流と言われるミスリルも夢ではないと思いますよ」


 冒険者ギルドへ来た目的は身分証明書だったが、ランク上げも面白そうだ。


「依頼ですが、ルーペンはランダーの荒野に隣接しているため、討伐依頼が多くあります。荒野の魔物を倒したと聞きましたが、魔物は倒されると魔石と、ごく希に素材を落としますので、冒険者ギルドへ持ってきてくれれば換金します」


「忘れずに持ち帰る」


 ほかには銀行のような機能もあるらしい。不明点があれば受付に聞けばいつでも教えるので、遠慮なく聞いてほしいと言われた。一通りの説明が終わって、イリスさんが俺とレネを交互にみた。


「本当に荒野の魔物を倒したのですか。荒野や神獣ドラゴンが住んでいるバルカノ山にいる中位魔物は、中位魔物の中でも強くて危険な魔物ですよ」


「俺とレネなら問題なかった」


「くれぐれも無理はしないでください。以上で冒険者ギルドの説明は終わりになりますので、ほかになければ魔石の換金を始めます」


 信じられないような表情を見せているが、受付としての仕事を進めてくれた。


「俺は平気だが、レネは何か聞きたい内容はあるか」


「私も大丈夫ですわ」


「それでは換金しますので魔石を出してください」


 手持ちの魔石のうち、半分くらいを袋から取り出してカウンターへ置いた。半分の量だが、下位魔物の魔石は100個以上で、中位魔物の魔石は10個以上もある。


「手持ちの資金がほしいから、これだけを換金してほしい」


 イリスさんは置いた魔石を凝視してから、ゆっくりと俺に顔を向ける。


「魔石の量もすごいですが、中位魔物の魔石が複数個あります。誰かと一緒に魔物を討伐したのですか」


「俺とレネのふたりだけで荒野の魔物を討伐した」


 今後、俺たちの強さが知れ渡るだろうから、嘘を言わずに正直に答えた。


「信じられませんが、先ほどの試合を見れば本当にも思えます。おふたりとも早くランクを上げてください。荒野の中位魔物をふたりで討伐する冒険者が、カッパークラスでは問題です。本来ならミスリルクラスの案件ですよ」


 興奮しながらイリスさんが説明する。


「ランクが上がるように頑張る」


「本当にお願いしますよ。それでは数を確認させて頂きます」


 イリスさんはカウンターの下から、はかりのような道具を取り出して、平たい皿の上にひとつずつ魔石を置いて何かを確認していた。下位魔物と中位魔物の魔石に分けているようで、少し時間はかかったがすべての魔石で確認が終わった。


「すべて本物で、数も確認できました」


 下位魔物の魔石は147個、中位魔物の魔石は12個で、合計で134万7千ミネラになった。イリスさんから冒険者ギルドへお金を預けたほうがよいと強く勧められたので、130万ミネラを預けて、残りは銀貨4枚と小銀貨7枚を手元に置いた。


 冒険者ギルドを出たあとは、南門へ行って冒険者ギルド証を見せた。仮証明書と位置情報リングを引き取ってもらって、これで簡単に街へ出入りができる。最後に日用品や食材を購入して日が高いうちに街をあとにした。


 拠点へ行く途中にある沼よりも、ずっと街寄りの場所で休憩を入れた。休むと言うよりも、新たに追加された鉱物収納を早く試したかった。


 周囲には鉱物やまばらではあるが植物もあって、槍と剣に植物の食材もある。


「俺から試してみる。鉱物収納」


 鉱物鑑定と同じような感覚で、対象となる鉱物を念じながら唱えた。最初は小さな石英のかたまりを、つづけて槍と短剣を鉱物収納で収納させた。鉱物鑑定と同様に見える範囲で念じても収納できた。


「槍や短剣がなくなりましたわ。無事に技が使えたのかしら」


「やり方は鉱物鑑定と同じで、問題なく鉱物が収納できた。今度は収納した鉱物を取り出してみる」


「楽しみですわ」


 レネが見守る中、収納空間の中身を考えると、理由は不明だが自然と頭の中に鉱物の一覧が浮かんだ。一覧にある槍を思い浮かべて、地面を見ながら技を唱えた。


「鉱物収納」


 ものの見事に槍が出現した。何度か試すと、思うように取り出しができた。収納した鉱物は頭の中でイメージするとくわしい状態が立体で表示される。


「使い心地はどうかしら」


「鉱物専用だが持ち運びに便利な技で、今のところ容量も平気だった」


「私も試してみますわ」


 レネは植物や食材を出し入れさせた。俺の行動をみていたからか、慣れるまで時間はかからなかった。


 技の確認も終わって、拠点へ向かって移動を始めた。途中にある鉱物や植物を収納しながら夕方前に拠点へ着くと、入口付近に人だかりができていた。

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