閑話2 クリニエル王国の出来事
一方その頃、クリニエル王国では、トルンチュ国王がひとりの男性と対面しているところだった。部屋の中には護衛と思われる騎士や、明らかに事務方と思われる男性たちもいる。
「犯罪者の集団がランダーの荒野へ逃げ込んだという噂がある。中位魔物もいる危険な無法地帯だが、お前の部隊ならきっと犯罪者を見つけてくれるだろう」
国王は、前方でひざまずいている男性へ向かって命令を出した。
「お任せください。荒くれ者の多い部下たちですが、中位魔物を倒せる実力者ばかりです。陛下の期待に応えて見せます」
男性は騎士団の団長のようで、自信に満ちた声で国王の指示に応えていた。男性は体格もよくて、いかにも歴戦の戦士を思わせる風格があった。だが騎士と言うよりも冒険者に近いイメージでもある。
「報告を楽しみにしている。もし勇者まがいな者たちがいれば、好きなように始末して構わない」
「陛下の偉大なる召喚スキルでは本来ならありえない、魔力なしの外れスキルであった、あのふたりですか」
「その通りだ。今考えても非常に不快だが、そのふたりだ」
国王のいらだちが周囲にも伝わってきたのか、事務方の男性たちはきびしい表情をみせた。だが団長は国王のいらだちにも臆することなく話し出す。
「すでにランダーで骨になっていると思いますが、もし見かけたら陛下の気持ちに応えて見せます」
「頼んだぞ」
国王の言葉に、団長は深々と頭を下げてから部屋をあとにした。
「我は少し考え事がしたい。呼ぶまでは入ってくるな」
国王が護衛や事務方に向かって命令すると、周囲の者が部屋を出て行く。ひとりだけになった国王はため息をもらす。
「我が国王になって、勇者も7名まで増えた。さらにあの方のおかげで、このままいけば最初の足掛かりとして周辺国が我の土地になる。だが使えない部下も多くて困ったものだ。未だに暗殺者が始末されたか分からないとはどうしてだ」
怒りの矛先を机に向けて右手で叩いた。どうやらキュウヤとレネを倒そうとした暗殺者の足取りが不明のようだ。
「国王になるまでは上手く事が運んだのに、このままでは我の願望を達成できないどころか手駒も減っていく。召喚スキルを使えるように準備するとともに、7名の勇者を早期に実戦投入するしかないか」
国王は何かを思いついたのか、いらだちは少しだけ収まってきたようだ。外にいる護衛を呼んで勇者コウキを連れて来させた。
勇者コウキが部屋に入って、国王とふたりだけとなった。
「残り6名の勇者は、すぐにでも実践へ投入できるか」
勇者コウキは少し考えているようで、話す内容が決まったのか口を開く。
「新しい勇者のアオトとコハルはさすがにまだ駄目で、使い物になるには時間がかかるぜ。残りの4人はもう少しだ。鍛え終わったあとは俺様ひとりに対して、4人同時なら互角の勝負ができそうだ」
やはり勇者コウキは頭ひとつ飛び出して強いようだ。勇者コウキを基準とした強さで、国王はおおまかな実力を把握できたようだ。
「それは頼もしい。ランダーや周辺国との状況は刻一刻と変化するから、いつでも対応できるように鍛えてくれ。新しいふたりは、間に合わなければ情報収集などをさせるつもりだ。勇者なのだから、騎士団を動かすよりはよいだろう」
国王の頭の中では勇者であっても、手駒と考えているのかも知れない。だが勇者コウキも自分以外の勇者については、仲間と思っていない節があった。
「俺様ひとりがいれば充分だが、陛下の言うとおりに鍛えておく。使える駒は増えるのに越したことはない。俺様以外の勇者でも騎士団には負けないが、最初に行動を起こすときは俺様に行かせてくれ」
「もちろん、そのつもりだ。勇者コウキには期待している」
勇者コウキは任せてくれと言って、部屋を出て行った。部屋に残った国王は勇者コウキの自信に満ちた言葉を聞いたあとだからか、いらだちはなくなっていた。




