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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
1_国外追放

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第1話 巻き込まれ召喚

 アコトカ神殿の伝承より


 ――神アコトカと女神アコトマの2大神が、世界と3柱神と精霊を生み出すと世界に魔力が溢れ出す。神々は神獣と幻獣を造ったのちに人族と獣族を育てた。特異点の魔族と魔物は魔力を吸収するが、神々は人族と獣族にスキルを与えて、神殿に勇者召喚を啓示する。勇者が魔族の王を討伐すると世界に再び魔力が満たされた――


     ◇     ◇     ◇


「お前たちふたりは国外追放だ!」


 理由は不明だがこの国の言葉を理解できた。俺たちに怒鳴りつけている、かっぷくのよい青年が国王トルンチュで、金髪の上に乗っている豪華な王冠が目を引いた。


「魔力もなく役立たないスキルばかりで、戦いでの魔法よけにもならない。今まで何度か召喚スキルを使ったが、ここまでの外れは初めてだ。明日になれば荒野へ送ってやるが、それまでは地下牢で最後の夜を過ごせ」


 俺――キュウヤと横にいる元女神のレネは異世界召喚に巻き込まれて、本来の勇者は一緒に日本からきた高校生のふたりだった。神力の体とレネがいるおかげで余裕ができて、もし神力がなければ武装した者たちに囲まれて怯えていただろう。


 俺たちの足元には魔方陣と思われる模様があって、周囲には何かが壊れていた。さらに耳としっぽのある薄汚れた服を着ている人間が、何人も倒れている。異様な光景を目にしながら、俺は言葉を発した。


「俺とレネは召喚魔法に巻き込まれただけだ。元の世界へ帰せとはいわないが、少なくとも俺とレネが安心して暮らせる環境がほしい」


 まだ状況が把握できていないので、なるべく話し合いで解決できないか試みる。レネは神の資格を失っているが神以外には負けないと聞いたし、俺の体も神力でできているから充分に強いはず。


「我に指図するとは本来なら処刑だが、国外追放で済んだのをありがたく思え」


「しかし――」


 俺の声をかき消すように、国王トルンチュが言葉を重ねる。


「神殿の勇者召喚よりも優秀な、我の偉大な召喚スキルで外れを呼んだ我の気持ちも考えよ。奴隷たちはいくらでも補充できるが、もうひとつの秘宝はもう手持ちがなくて、次の召喚スキル利用の目処が立っていないのだぞ」


 まるで俺たちが悪いように国王トルンチュが話して、周囲の者たちも同意している表情だった。国王トルンチュの横にいる、いかにも日本人らしい大学生くらいの青年はきつい目つきに派手な衣装をまといながら、まるで自分事のように頷いていた。


『日本で多発している異世界召喚は、この男が原因かもしれませんわ』


 レネからの念話だった。たしかレネは異世界召喚の調査をしていたと聞いた。


『何か対処するのか』


『この世界にいる神の考えを聞くのが先でしょう』


『わかった。俺に出来ることがあれば協力する』


 俺とレネが念話をしていると横から声が聞こえた。


「彼らは巻き込まれただけで何も悪くないじゃん。何ならおれとコハルが面倒をみるから、国外追放までは必要ないと思う」


「わたしもアオトの考えに賛成かな。わたしたちと同じ高校生みたいだし、きっと上手くやっていけると思うよ」


 本来の勇者であるふたりが、軽いノリで話しながらも俺たちをかばってくれた。


 男性のアオトは長身で短めな黒髪に青色がまざっていて、きざっぽい表情が似合いそうだ。女性のコハルは長い茶髪に緑色のメッシュが入っていて、きっと笑顔がすてきだろう。ふたりは自由気ままな高校生にみえる。


 言葉や見た目と異なって、思いやりのある高校生かもしれない。


「我の考えに間違いはない」


「陛下、勇者である俺様のスキルとの違いを把握すれば納得すると思うぜ」


 国王トルンチュの横にいる青年だった。


「勇者コウキの考えはもっともだ。おい、お前たちふたり、先ほどと同様にステータスボードを使って、5つの項目を答えてみろ」


 国王トルンチュがコウキと呼ばれた青年に話した後、俺たちへ視線を向けた。ここで争ってもしかたがないので、指示されたとおりに魔道具と呼ばれていたステータスボードへ手をかざすと、目の前の空中へ文字が浮かんだ。


「魔力恩恵と魔法能力は1で、魔法種類と魔法契約はなしだ。スキルはユニークで鉱物スキルだ」


 文字も普通に読めたので、一般公開される項目の中身を読み上げる。魔力恩恵は魔力量を1から10で表していて、俺もレネも魔力が皆無の状態だ。事実、俺もレネも神力のみで体を構成しているから、ある意味では納得できる。


 魔法種類は言葉通りに使える魔法の種類で、魔法能力は1番得意な魔法の能力を1から10で示している。魔法契約はテイマーした動物名などが書かれるらしい。


 これ以外に本人しか見られない詳細項目があって、魔法恩恵に女神レステアネの加護が書かれているが、これはレネからもらった加護なので、当然ながらこの場で話すつもりはない。ほかには鉱物スキルの詳細も記載されていた。


 俺に続いてレネもステータスボードへ手をかざした。


「スキル以外はキュウヤと同じで、スキルはユニークの植物スキルですわ」


 さすが元女神で堂々とした態度で答えていた。


「陛下が言うように魔力なしの外れスキルだ。俺様のステータスを教えてやろう」


 コウキが俺たちの近くに歩いて来て、余裕の笑みをみせながらステータスボードへ手を乗せる。俺にも一般公開の情報が目に入ってきた。


「俺様のステータスは魔力恩恵が8で、強化魔法の魔法能力が8だ。スキルはレアの剣聖スキルで聖剣シャルルーンも俺様の手元にある。隣国の兵士だろうが俺様の前では敵ではない」


 コウキは演説のような声を響き渡らせながら、腰に下げた剣を取り出して頭上に高く突き出す。


 周囲からは魔法能力に賛美を唱える者や、スキルと聖剣をうらやむ者があとを立たなかった。周囲の反応から8は相当すごいみたいで、剣聖スキルも名前からして強そうだ。勝ち誇った顔を見せながら国王トルンチュの元へコウキが戻っていく。


「これでわかっただろう。お前たちふたりは無能だが、国内で命までは奪おうとしない慈悲深い我に感謝することだ。それが分かったらすぐに地下牢へ行け」


 国王トルンチュの言葉に5人の騎士たちが俺たちに近寄ってくる。高校生のアオトとコハルがまた何か言おうとしたが、俺が手を横に出して制した。神力の体がある俺とレネなら何とかなるから、アオトとコハルの立場をこれ以上悪くはしたくない。


「俺たちなら大丈夫だ。何か困りごとが発生すれば助けに来る」


 アオトたちにのみ聞こえる小声で話す。


「私とキュウヤなら荒野くらいは問題ありませんわ」


 俺の発言にあわせてレネも自信満々に小声で答えると、アオトとコハルはわかったと頷いてくれた。


 5人の騎士が俺とレネを連れて召喚された部屋から出た。不要品を扱うような雑な態度を受けながら通路を歩き、異世界へ召喚される直前の出来事を思い出す。

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