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シルバーウィークが関係しているのか、5分ほど遅延した電車には、いつもより乗客が多く、停車するたびに流れ込む人々に押され続け、気づけば目の前には猪瀬春太がいた。


さすがに、遅刻が確定した電車だけあって、彼以外に同じ制服の人間は見当たらない。


猪瀬春太は綾斗に気づいていないようなので、不安や緊張を感じることはないが、単純に、特に親しくもない同級生の目の前に立つというのが気まずい。


両手でつかんだ吊革に体重をかけて脱力し、綾斗は何の気なしに猪瀬春太に視線を向けた。


先に断っておくと、猪瀬春太を見たのは、立った状態の綾斗が軽く俯いたとき、ちょうど視界に入るのが目の前の座席に腰を下ろした猪瀬春太だったせいだ。


だから、覗いてやろうなんて意図はまったくなかったのだ。





『俺だって勇樹のこと好きなのに、なんで他の人の恋人になっちゃうの?』





……は?





彼が熱心に見つめるスマホには、メッセージアプリのトーク画面が開かれている。


そしてそこには、短いメッセージが打ち込まれたまま、大人しく送信されることを待っていた。



その意味を認識した瞬間、綾斗の思考回路は強制的にシャットダウンしてしまった。



思考停止中の綾斗を置いてきぼりにして、見開いた目からは処理の追い付かない情報だけが次々と飛び込んでくる。


トーク相手、『ゆうき』。


アイコンはフェスのタオルを両手で掲げた後ろ姿。


クラスのグループラインによく登場する忌々しい名前とアイコンだ。



『前話した塾の女子に告られたから付き合うことにした』



会話終了用と思しきスタンプの下。

昨日の21時過ぎに西脇から送られたメッセージは、恋人ができたという報告だった。



もう一度、打ち込まれたままのメッセージを見る。




『俺だって勇樹のこと好きなのに、なんで他の人の恋人になっちゃうの?』




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